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第82話 シュシュ・ラピーヌのレッスン
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翌朝、まだ陽も上り始める前・・・
アキがふと目を覚ました。
見回すと、舞香達の姿が見当たらない。
部屋の隅には、4人分の布団がキチンと畳まれている。
ハッと気づいたアキが皆を起こして回る。
「皆っ! 起きてっ!」
「どうしたの、アキ?」
七瀬が瞼をこすりながら起き上がる。
「まだ。6時だよ~」
時計を見た優奈が大きくあくびをした。
「どうした? 温水?」
葵もまだ、寝ぼけ眼だ。
「舞香ちゃん達が居ないの!」
「えっ!?」
「なんでっ!?」
「まさかっ!?」
「講堂・・・っ!」
「行くぞ、お前達っ!」
慌てて起き上がったアキ達と葵は講堂へと走った。
息を切らせてアキ達が講堂に着くと、メイクをしてウイッグを付け衣装に着替えた舞香達が舞台稽古をしていた。
「あぁ・・・。ゼウスよ。私には、アルテミス・アテナ・アフロディーテの3人の内誰か一人を選ぶ事など出来はしない・・・」
舞香の台詞に穂加が続く。
「アポロン・・・。太陽の貴男と月の私・・・、私達は常に一つ。選ばれるのは、私」
「幼き頃より共に剣を交えたこのアテナを選ばぬとは言わせぬ」
礼華が詰め寄る。
「美の女神、アフロディーテ。男神の誰もが私の虜となるのは定めなのよ」
澄佳が側面から現れる。
(えっ・・・!?)
【シュシュ・ラピーヌ】の歌劇練習を見てアキ達は首をキョロキョロと左右に振ったり、眼をこすったり凝視したりしている。
(まさか・・・。温水達も)
葵にも同じ事が起きていた。
「あの・・・、わたし・・・」
アキが恐る恐ると言う感じで口を開く。
「舞香ちゃん達、4人しかいないのに・・・」
「アキにも見えた・・・?」
七瀬が同調した。
「まるで・・・」
涼香も立ち竦む。
「7人居るの・・・?」
汐音が優奈を見る。
「それだけ、【シュシュ・ラピーヌ】の演技は神がかっているって事・・・」
そうである。舞香達は4人で演技しているのだが、ここに居ない3名の姿までをも見ている者に感じさせていたのである。
「これが・・・。堀塚の・・・。実力か・・・」
流石の葵も呆気に取られ、言葉が出ない。
「あたしら・・・。よく・・・、勝てたよね・・・」
圭が呟き、穂波も・・・
「あちも・・・。そう思う・・・」
自分達と対戦した時より遥かに成長を遂げている【シュシュ・ラピーヌ】・・・
彼女達が今、目の前で演じているように自分達は出来るのだろうか?
そう自問自答する【ムーラン・ルージュ】だった。
「おはようございますっ! お姉様方っ!」
稽古を終えた、【シュシュ・ラピーヌ】がアキ達に気付いたようだ。
「舞香ちゃん・・・。何時からやってたの・・・?」
「朝ですか? 6時過ぎですけど・・・」
「えっ! それじゃっ!」
「はいっ! 堀塚の起床時刻は、6時と決められていますっ!」
「マジ・・・か・・・」
穂波が思わず口に出す。
「お姉様方も、明日からは同じ時刻にお願いしますね」
舞香達の悪意の無い微笑がかえって不安を煽っていた。
(やっばり、凄いよ。舞香ちゃん達・・・)
一人感激していたのはアキだけである。
「取り敢えず、朝食にしよう」
葵も今回ばかりはバツが悪そうだ。
「はいっ! それじゃあ、私達もメイクを落として着替えてきます」
退席しようとした舞香が振り返る。
「朝食の後に演目をご説明して、配役を決めます。午後からレッスンを開始しますね」
「では・・・」
「後ほど・・・」
「ごきげんよう・・・」
退席していく【シュシュ・ラピーヌ】。
「わたし達・・・。大丈夫・・・かな」
涼香の呟きは皆が感じている事だった。
朝食の後、皆が集まっている。
「それでは、演目となります【パルテノン・ローズ】の大まかなストーリーを説明させて頂きます。穂加、お願いね」
舞香から引き継ぐ形で皆の前に立つ穂加があらすじの説明を始める。
遥か昔、神々と人間が共存していた世界・・・
主神ゼウスはいつもの気まぐれで男神4人(アポロン・ディオニュッソス・アトラス・ヘパイストス)に最も魅力的な女神を選ぶように命じた。
この時に候補となったのが、3人の女神(アルテミス・アテナ・アフロディーテ)である。
3人の女神達は各々をある色の薔薇に例える事にした・・・
アルテミス 青薔薇
アテナ 黄薔薇
アフロディーテ 赤薔薇
3人の女神は自分を選ぶようあの手この手で男神達を誘惑する。
ディオニュッソス・アトラス・ヘパイストスはそれぞれが一人ずつ別々の女神を選び最後のアポロンの一票を残すだけとなった。
果たしてアポロンが投じるのはどの色の薔薇かと誰もが見つめる中、アポロンは青・黄・赤ではなく白の薔薇を投じる。
美しさとは、誰にも平等にあるもの。甲乙を付けるものでは無いと言って・・・
それを聞きただ自分が頂点に立つだけの事しか考えられなかったと女神達は反省し、それを選んだ3人の男神も己の浅はかさを悔やんだ。
これを見ていたゼウスも、自分が面白半分にけしかけた事の愚かさに気付き、行いを改めるようになった・・・
「・・・。これが大まかなあらすじです」
穂加が丁寧にお辞儀をして自分達の列へと戻った。
「神々の話か・・・。難しそうだな・・・」
渡が呟く。
「神さんやったら・・・。衣装のメインカラーは白やな。後は・・・、露出度かぁ」
八郎の頭の中で想像されているものは、今回ばかりは採用されないだろう。
「出来るだけ。艶めかしいのが良いですねぇ、師匠?」
二郎・・・、君の考えはもっと無謀だろう・・・
アキがふと目を覚ました。
見回すと、舞香達の姿が見当たらない。
部屋の隅には、4人分の布団がキチンと畳まれている。
ハッと気づいたアキが皆を起こして回る。
「皆っ! 起きてっ!」
「どうしたの、アキ?」
七瀬が瞼をこすりながら起き上がる。
「まだ。6時だよ~」
時計を見た優奈が大きくあくびをした。
「どうした? 温水?」
葵もまだ、寝ぼけ眼だ。
「舞香ちゃん達が居ないの!」
「えっ!?」
「なんでっ!?」
「まさかっ!?」
「講堂・・・っ!」
「行くぞ、お前達っ!」
慌てて起き上がったアキ達と葵は講堂へと走った。
息を切らせてアキ達が講堂に着くと、メイクをしてウイッグを付け衣装に着替えた舞香達が舞台稽古をしていた。
「あぁ・・・。ゼウスよ。私には、アルテミス・アテナ・アフロディーテの3人の内誰か一人を選ぶ事など出来はしない・・・」
舞香の台詞に穂加が続く。
「アポロン・・・。太陽の貴男と月の私・・・、私達は常に一つ。選ばれるのは、私」
「幼き頃より共に剣を交えたこのアテナを選ばぬとは言わせぬ」
礼華が詰め寄る。
「美の女神、アフロディーテ。男神の誰もが私の虜となるのは定めなのよ」
澄佳が側面から現れる。
(えっ・・・!?)
【シュシュ・ラピーヌ】の歌劇練習を見てアキ達は首をキョロキョロと左右に振ったり、眼をこすったり凝視したりしている。
(まさか・・・。温水達も)
葵にも同じ事が起きていた。
「あの・・・、わたし・・・」
アキが恐る恐ると言う感じで口を開く。
「舞香ちゃん達、4人しかいないのに・・・」
「アキにも見えた・・・?」
七瀬が同調した。
「まるで・・・」
涼香も立ち竦む。
「7人居るの・・・?」
汐音が優奈を見る。
「それだけ、【シュシュ・ラピーヌ】の演技は神がかっているって事・・・」
そうである。舞香達は4人で演技しているのだが、ここに居ない3名の姿までをも見ている者に感じさせていたのである。
「これが・・・。堀塚の・・・。実力か・・・」
流石の葵も呆気に取られ、言葉が出ない。
「あたしら・・・。よく・・・、勝てたよね・・・」
圭が呟き、穂波も・・・
「あちも・・・。そう思う・・・」
自分達と対戦した時より遥かに成長を遂げている【シュシュ・ラピーヌ】・・・
彼女達が今、目の前で演じているように自分達は出来るのだろうか?
そう自問自答する【ムーラン・ルージュ】だった。
「おはようございますっ! お姉様方っ!」
稽古を終えた、【シュシュ・ラピーヌ】がアキ達に気付いたようだ。
「舞香ちゃん・・・。何時からやってたの・・・?」
「朝ですか? 6時過ぎですけど・・・」
「えっ! それじゃっ!」
「はいっ! 堀塚の起床時刻は、6時と決められていますっ!」
「マジ・・・か・・・」
穂波が思わず口に出す。
「お姉様方も、明日からは同じ時刻にお願いしますね」
舞香達の悪意の無い微笑がかえって不安を煽っていた。
(やっばり、凄いよ。舞香ちゃん達・・・)
一人感激していたのはアキだけである。
「取り敢えず、朝食にしよう」
葵も今回ばかりはバツが悪そうだ。
「はいっ! それじゃあ、私達もメイクを落として着替えてきます」
退席しようとした舞香が振り返る。
「朝食の後に演目をご説明して、配役を決めます。午後からレッスンを開始しますね」
「では・・・」
「後ほど・・・」
「ごきげんよう・・・」
退席していく【シュシュ・ラピーヌ】。
「わたし達・・・。大丈夫・・・かな」
涼香の呟きは皆が感じている事だった。
朝食の後、皆が集まっている。
「それでは、演目となります【パルテノン・ローズ】の大まかなストーリーを説明させて頂きます。穂加、お願いね」
舞香から引き継ぐ形で皆の前に立つ穂加があらすじの説明を始める。
遥か昔、神々と人間が共存していた世界・・・
主神ゼウスはいつもの気まぐれで男神4人(アポロン・ディオニュッソス・アトラス・ヘパイストス)に最も魅力的な女神を選ぶように命じた。
この時に候補となったのが、3人の女神(アルテミス・アテナ・アフロディーテ)である。
3人の女神達は各々をある色の薔薇に例える事にした・・・
アルテミス 青薔薇
アテナ 黄薔薇
アフロディーテ 赤薔薇
3人の女神は自分を選ぶようあの手この手で男神達を誘惑する。
ディオニュッソス・アトラス・ヘパイストスはそれぞれが一人ずつ別々の女神を選び最後のアポロンの一票を残すだけとなった。
果たしてアポロンが投じるのはどの色の薔薇かと誰もが見つめる中、アポロンは青・黄・赤ではなく白の薔薇を投じる。
美しさとは、誰にも平等にあるもの。甲乙を付けるものでは無いと言って・・・
それを聞きただ自分が頂点に立つだけの事しか考えられなかったと女神達は反省し、それを選んだ3人の男神も己の浅はかさを悔やんだ。
これを見ていたゼウスも、自分が面白半分にけしかけた事の愚かさに気付き、行いを改めるようになった・・・
「・・・。これが大まかなあらすじです」
穂加が丁寧にお辞儀をして自分達の列へと戻った。
「神々の話か・・・。難しそうだな・・・」
渡が呟く。
「神さんやったら・・・。衣装のメインカラーは白やな。後は・・・、露出度かぁ」
八郎の頭の中で想像されているものは、今回ばかりは採用されないだろう。
「出来るだけ。艶めかしいのが良いですねぇ、師匠?」
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