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第52話 マンゴローブよ・・・。永遠に・・・
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走り駆けつける大人数の足音が聞こえる。
「ここかっ! アキっ!?」
「うんっ!」
「野郎どもっ! 遠慮はいらねぇっ! やっちまえっ!」
二月会の組員達が雪崩のように流れ込む。
「何ダ? オ前ラッ!」
驚き戸惑う萬度の手下達に次々と二月会の組員達が襲い掛かる。
パンッ! パンッ!
銃声が響き、殴り合う音と怒号が飛び交う。
「しっかりしろっ! おいっ! 救急車だっ!」
如月が、撃たれ暴行を加えられた警察官を抱き起す。
「奴らはっ!」
かろうじて意識を保っていた警察官が震える指で地下室へと延びる階段を指さす。
「あっちか・・・」
行く手を阻もうとする萬度の手下達、だが怒りに満ちた如月の敵ではなかった。
「会長っ! こっちですっ!」
二月会の乱入により萬度はほぼ制圧されている・・・
地下室へと降りていく如月・・・
「お前ら・・・」
如月の目に映ったのは、満身創痍の穂波と渡、五郎・・・
ぐったりと倒れた者を抱き、泣き叫ぶ少女の姿だった。
「如月・・・、さん・・・」
「穂波・・・」
「・・・」
「確か・・・。早瀬・・・、渡だったか・・・」
「五郎っ!」
息せき切って圭が階段を駆け下りて来る。
「圭ちゃん・・・」
圭は周囲を見回す、そして全てを理解したように口を開く。
「よくやったね。やっばり、あたしの五郎だっ! でも・・・。無事で良かった・・・」
五郎の姿を見て安心したのだろう、その目に一杯の涙を浮かべる圭。
五郎がそっと寄り添う・・・
「ごめん・・・。圭ちゃん・・・、守れなかった・・・」
アキと七瀬も階段を下りて地下室へと入って来る。
「渡っ!」
七瀬の目が渡を見る。
「穂波さんっ!」
アキの視線を受けた穂波がハンへと向けられた。
誰かを抱きしめて泣き続けるハンに・・・
「え・・・っ? マンゴーさんっ?」
「えっ!?」
圭と七瀬もハンを見る。
「ハンっ! マンゴーさんっ!」
マンゴローブを抱いたまま泣き続けるハンに駆け寄るアキ。
「矢板サン・・・! ハン・・・、ハンの為二・・・」
ハンの涙がマンゴローブの頬に落ちる。
「馬鹿・・・、泣くんじゃねぇ・・・」
微かに動いたマンゴローブの唇から枯れそうな声が絞り出された。
(生きてるっ!)
その場にいた誰もが一縷の望みを託す。
「救急車だっ! 早くしろっ!」
如月の怒号が飛ぶ。
「マンゴーさん・・・」
「その声・・・。アキちゃん・・・?」
(目が見えていない・・・)
「マンゴーさん、アキです! 七瀬も圭ちゃんも穂波さんも居ますっ!」
「マンゴーローブさんっ!」
七瀬たちも駆け寄る。
「【ムーラン・ルージュ】の結成パーティ・・・。懐かしい・・・」
派手な演出で【ムーラン・ルージュ】結成パーティをしてくれた事・自分と七瀬の事をタロット占いしてくれたあの日・自分達の為に衣装を作ってくれたあの日の事を思い出すアキ達。
「アキちゃん・・・。皆・・・。ハンの友達になってくれてありがとう・・・」
マンゴローブは、声のする方に手を伸ばしアキの頬を弱々しく撫でる。
「矢板・・・サン・・・」
ハンの涙が更に零れる。
「アイドル甲子園・・・、絶対に優勝してね・・・。あなたには・・・その力が・・・」
「マンゴーさんっ!」
アキの頬を撫でていた手が止まりパタリと落ちた。
サイレンの音が鳴り引き、組織対策4課の捜査員達がビルへと入り地下室へと降りて来る。
「や・・・、矢板さんっ!」
ぐったりと横たわり、ハンに抱き締められアキ達に囲まれたマンゴローブの姿を見た隼人が我を忘れて駆け寄る。
マンゴローブは、ピクリとも動かない・・・
慌てて脈を取る陣内。
何度やっても脈は感じられなかった・・・
「陣内警部補っ!」
「矢板捜査官はっ!?」
「巡査部長はっ!?」
組織対策4課の捜査員達も駆け寄って来る。
隼人はゆっくりと立ち上がり、大きく息を吸いこんだ。
「総員っ! 矢板・・・。矢板巡査部・・・っ」
隼人の目からは大粒の涙が止め処なく流れ落ちている。
言葉を一度切り、頭を大きく振り改めて口を開く。
「矢板・・・、警部に敬礼っ!」
その場に居た捜査員達が一斉に挙手敬礼を行った。
通常、警察官は制服で着帽していても、屋外でない場合は挙手敬礼ではなく10度の敬礼を行う。
だが、この場だけは・・・。誰もが挙手敬礼していた。
警察官が2階級特進するのは、殉職した場合のみと分かっているからこそ・・・
「そうか・・・」
マンゴローブの事は隼人から飛鳥井と早乙女に報告された。
そして、急ぎ海上から戻っていた竜馬と武蔵にも・・・
「俺達が・・・、俺達がもう少し早く・・・っ!」
船内の壁を拳で殴り己を悔やむ竜馬。
「竜馬・・・。俺達がするべき事は・・・」
そんな竜馬の肩に手を置き、武蔵が声を掛ける。
「分かって・・・。いるっ!」
竜馬の瞳で炎が燃えていた。
早乙女と飛鳥井が【ぱんさー】で話している。
「やはり、時間が無いな・・・」
「作戦の実行を早める」
「それしか・・・。あるまい」
マンゴローブの遺体が運びだされた後の現場では・・・
「銃刀法違反・凶器準備集合罪並びに結集罪・騒乱罪だが・・・」
「何だとっ!」
隼人と如月のやりとりに周囲がざわめく。
「だが、俺達は何も見ていない・・・」
「フっ・・・」
互いの目線に敵意は無かった。
「いずれ・・・」
「そうだな。おいっ、帰るぞっ!」
「我々も撤収するっ!」
こうしてこの事件は収束した・・・
だが、これが次に起こる事件の引き金になっていたとはまだ誰も気が付いていない。
「ここかっ! アキっ!?」
「うんっ!」
「野郎どもっ! 遠慮はいらねぇっ! やっちまえっ!」
二月会の組員達が雪崩のように流れ込む。
「何ダ? オ前ラッ!」
驚き戸惑う萬度の手下達に次々と二月会の組員達が襲い掛かる。
パンッ! パンッ!
銃声が響き、殴り合う音と怒号が飛び交う。
「しっかりしろっ! おいっ! 救急車だっ!」
如月が、撃たれ暴行を加えられた警察官を抱き起す。
「奴らはっ!」
かろうじて意識を保っていた警察官が震える指で地下室へと延びる階段を指さす。
「あっちか・・・」
行く手を阻もうとする萬度の手下達、だが怒りに満ちた如月の敵ではなかった。
「会長っ! こっちですっ!」
二月会の乱入により萬度はほぼ制圧されている・・・
地下室へと降りていく如月・・・
「お前ら・・・」
如月の目に映ったのは、満身創痍の穂波と渡、五郎・・・
ぐったりと倒れた者を抱き、泣き叫ぶ少女の姿だった。
「如月・・・、さん・・・」
「穂波・・・」
「・・・」
「確か・・・。早瀬・・・、渡だったか・・・」
「五郎っ!」
息せき切って圭が階段を駆け下りて来る。
「圭ちゃん・・・」
圭は周囲を見回す、そして全てを理解したように口を開く。
「よくやったね。やっばり、あたしの五郎だっ! でも・・・。無事で良かった・・・」
五郎の姿を見て安心したのだろう、その目に一杯の涙を浮かべる圭。
五郎がそっと寄り添う・・・
「ごめん・・・。圭ちゃん・・・、守れなかった・・・」
アキと七瀬も階段を下りて地下室へと入って来る。
「渡っ!」
七瀬の目が渡を見る。
「穂波さんっ!」
アキの視線を受けた穂波がハンへと向けられた。
誰かを抱きしめて泣き続けるハンに・・・
「え・・・っ? マンゴーさんっ?」
「えっ!?」
圭と七瀬もハンを見る。
「ハンっ! マンゴーさんっ!」
マンゴローブを抱いたまま泣き続けるハンに駆け寄るアキ。
「矢板サン・・・! ハン・・・、ハンの為二・・・」
ハンの涙がマンゴローブの頬に落ちる。
「馬鹿・・・、泣くんじゃねぇ・・・」
微かに動いたマンゴローブの唇から枯れそうな声が絞り出された。
(生きてるっ!)
その場にいた誰もが一縷の望みを託す。
「救急車だっ! 早くしろっ!」
如月の怒号が飛ぶ。
「マンゴーさん・・・」
「その声・・・。アキちゃん・・・?」
(目が見えていない・・・)
「マンゴーさん、アキです! 七瀬も圭ちゃんも穂波さんも居ますっ!」
「マンゴーローブさんっ!」
七瀬たちも駆け寄る。
「【ムーラン・ルージュ】の結成パーティ・・・。懐かしい・・・」
派手な演出で【ムーラン・ルージュ】結成パーティをしてくれた事・自分と七瀬の事をタロット占いしてくれたあの日・自分達の為に衣装を作ってくれたあの日の事を思い出すアキ達。
「アキちゃん・・・。皆・・・。ハンの友達になってくれてありがとう・・・」
マンゴローブは、声のする方に手を伸ばしアキの頬を弱々しく撫でる。
「矢板・・・サン・・・」
ハンの涙が更に零れる。
「アイドル甲子園・・・、絶対に優勝してね・・・。あなたには・・・その力が・・・」
「マンゴーさんっ!」
アキの頬を撫でていた手が止まりパタリと落ちた。
サイレンの音が鳴り引き、組織対策4課の捜査員達がビルへと入り地下室へと降りて来る。
「や・・・、矢板さんっ!」
ぐったりと横たわり、ハンに抱き締められアキ達に囲まれたマンゴローブの姿を見た隼人が我を忘れて駆け寄る。
マンゴローブは、ピクリとも動かない・・・
慌てて脈を取る陣内。
何度やっても脈は感じられなかった・・・
「陣内警部補っ!」
「矢板捜査官はっ!?」
「巡査部長はっ!?」
組織対策4課の捜査員達も駆け寄って来る。
隼人はゆっくりと立ち上がり、大きく息を吸いこんだ。
「総員っ! 矢板・・・。矢板巡査部・・・っ」
隼人の目からは大粒の涙が止め処なく流れ落ちている。
言葉を一度切り、頭を大きく振り改めて口を開く。
「矢板・・・、警部に敬礼っ!」
その場に居た捜査員達が一斉に挙手敬礼を行った。
通常、警察官は制服で着帽していても、屋外でない場合は挙手敬礼ではなく10度の敬礼を行う。
だが、この場だけは・・・。誰もが挙手敬礼していた。
警察官が2階級特進するのは、殉職した場合のみと分かっているからこそ・・・
「そうか・・・」
マンゴローブの事は隼人から飛鳥井と早乙女に報告された。
そして、急ぎ海上から戻っていた竜馬と武蔵にも・・・
「俺達が・・・、俺達がもう少し早く・・・っ!」
船内の壁を拳で殴り己を悔やむ竜馬。
「竜馬・・・。俺達がするべき事は・・・」
そんな竜馬の肩に手を置き、武蔵が声を掛ける。
「分かって・・・。いるっ!」
竜馬の瞳で炎が燃えていた。
早乙女と飛鳥井が【ぱんさー】で話している。
「やはり、時間が無いな・・・」
「作戦の実行を早める」
「それしか・・・。あるまい」
マンゴローブの遺体が運びだされた後の現場では・・・
「銃刀法違反・凶器準備集合罪並びに結集罪・騒乱罪だが・・・」
「何だとっ!」
隼人と如月のやりとりに周囲がざわめく。
「だが、俺達は何も見ていない・・・」
「フっ・・・」
互いの目線に敵意は無かった。
「いずれ・・・」
「そうだな。おいっ、帰るぞっ!」
「我々も撤収するっ!」
こうしてこの事件は収束した・・・
だが、これが次に起こる事件の引き金になっていたとはまだ誰も気が付いていない。
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