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幸せになりましょう
決意しました
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パチパチと瞬きをする私。
正直、瞳の色を変えていただけで元の金色の瞳を晒したしところで、私には違和感も何も感じないのだけど。
会議室の面々の反応は真っ二つに分かれました。
まずは、あれ? 瞳の色が変わったね・・・と不思議そうに私の顔を見る方々。
あとは、ギョッ! と驚いたあと、微かに頭を下げ目礼をしてくれる人。
なんでや?
私が首を傾げていると、アルベールが私の耳にコッソリと囁く。
「ヴィー。貴方の瞳の色に驚いた者は、ハイエルフの特徴を知っている者ですよ」
ハイエルフが金色の瞳をしている。
ほとんどの人が知らない情報らしいけど、紛らわしい色味の琥珀色とかちょっと明るい茶色の瞳の人は結構いるしね。
そんなに珍しくもない色と思っていたが、ハイエルフの金色の瞳は中に星が瞬くような輝きがあるとか。
金色の瞳に強く反応したのは、元教皇猊下だという神官のおじいちゃんと、クリストフ殿下と、薬師ギルドのおばあちゃん、魔道ギルドの代表のエルフさん。
商業ギルドの代表でレルカン商会の情報部の人も目を見張っていたから、ハイエルフのことは知っているのだろう。
あとは、ノアイユ公爵のお付きのエルフ族の一人。
ミュールズ国の人と鍛冶ギルドの代表者、我が国のポンコツ貴族、ヴィクトル兄様とノアイユ公爵、モルガン様は知らない派だな。
微妙なのはレイモン氏。
興味深そうに私の顔をマジマジと覗き込んでいる。
「・・・魔道ギルドと私が所属しているエルフの里はシルヴィー女王の誕生をお祝い申し上げる」
「ふえっ?」
「アンティーブ国はもちろん賛成だったし、助力するつもりだったが・・・。アンティーブ国もお祝い申し上げる」
「へえぇぇぇ?」
「ふおほぉぉ。私も昔馴染みに声をかけておくから、安心なされよ」
「いえええっ?」
なんで、教会までもが私の女王即位を賛成するのだよ?
「アルベールの話ではまだ半信半疑だったが、金色の瞳を持つ者とは、すごい影響力だな」
レイモン氏が感心して呟くと、アルベールが鼻で笑った。
「それなりの権力がある者にしか通じない奥の手ですがね。ここトゥーロン王国のように閉ざされていた国では意味がなかったですし」
そうよね、金色の瞳だけで権力者を思うままに操れたら、お母様はトゥーロン王国に連れ去られたりしてないもの。
「よくわからないが、シルヴィーが守られるなら安心だよ」
ヴィクトル兄様が何もかもを飲み込んだ複雑な顔に無理やり笑みを浮かべ、私の手を優しく包んだ。
その手が少し震えている。
聞けば、ここにいるポンコツ貴族以外の賛同は得ているらしいし、残りの文官たちの承諾もあるし、私が女王になるのに障害はないらしい。
「・・・アルベールは賛成ね。リュシアンたちは?」
私は、私の後ろにいる私の家族に気持ちを確かめる。
「俺は・・・お嬢の護衛だからなぁ。お嬢がいいならいいぜ。でも騎士団の手伝いって・・・俺の剣は我流なんだが?」
リュシアンはやや耳をへしょりとさせてモルガン様を窺うように見るが、モルガン様は破顔一笑。
「ふわははは。かまわんかまわん。軟弱者たちをとにかくぶっ飛ばせばいい」
そんな指導法があるものかっ!
「私も商売について学べるなら構いませんが・・・。ヴィーさんはまだ子供です。国王などの重荷を背負わせるのは、いささか・・・」
セヴランももふもふ尻尾を心持ちしょんぼりとさせて、心配そうに私の頭を撫でる。
うん、普段は糸目のヘタレ狐だけど、とっても優しい心配性な人だって知ってた。
「大丈夫です!商業ギルドが全力で支えます。シルヴィー殿下のことも表も裏も支えますので大丈夫ですっ」
・・・裏も?
その商業ギルドの代表の言葉に私は背中がヒヤリとしたが、レイモン氏はニタリと笑った。
「ルネとリオネルは? 十年も冒険できないよ?」
ルネとリオネルは同じ方向に首を傾げたあと、プルルと頭を振る。
「ルネ、ヴィー様と一緒ならいいです! メイドの仕事頑張ります!」
ふんすっと両手を握ってアピールする、かわいい黒猫ルネ。
「んー、ごはんいっぱいならいい。あいつは・・・がまんする」
リオネルは、相変わらず眠たい顔で本能そのままの要求をしてくる。
いや、ご飯はいっぱい食べさせてあげるけど・・・カミーユさんの存在を我慢してくれるのはありがたい。
「ピエーニュの森の調査には着いて行っていいから。そのときに暴れてね?」
リオネルはコクンと頷く。
この子は、定期的に発散させないと、どんなトラブルを起こすかわからないからな・・・。
私は、一つ深呼吸すると背筋を伸ばし顎を少し上げて、真っ直ぐにヴィクトル兄様とレイモン氏を見つめた。
「シルヴィー・トゥーロン。十年間の女王、やります」
やりますよ、やるったらやるよ! その代わり文句を言うなよ?
決めたらすぐに行動となります。
ええーっ! と思ったけど、スパルタ教育者のレイモン氏は、当然私に対してもスパルタでした。
そこにアルベールも加わるから、大変、大変。
どうでもいいことでは、まず住まいをお城へ移すこと。
案内された王の間の趣味が激悪だったから、半眼の引き攣った口元のままで無言でリフォームと模様替えをしました。
チート能力で。
え? どかした調度品をどうするのか? そんなもの国宝以外は売り飛ばせ!
隣の使用人部屋とかアルベールの部屋、護衛のリュシアンの部屋、セヴランの部屋、控えの間も一気にリフォームと模様替え。
だ・か・ら、いらないから売り飛ばせ!
王族スッキーの文官と使用人たちが、重い家具やらヒラヒラの服やら刺繍ビッチリのカーテンを持って右往左往している。
そして、私たちの服の仕立てです。
アンティーブ国の仕立て屋さんを、商業ギルドの代表だったオレールさんが呼んでくれた。
そのせいか、女王になる私の衣装よりもセヴランの衣装の相談が長かったけど、なんで?
レイモン氏が選別した貴族の当主との挨拶やら、ギルドから派遣された職員との面談やら、側付きの選択やら面倒なことも多かった。
私が女王に化けるためにお城の中で四苦八苦している間に、レイモン氏とレルカン商会の情報部は別のお仕事をしっかりしていました。
そう、私の美談を国中に、いや世界中にばら撒くという。
気が付いたときには、「健気でかわいそうな王女が、国のため民のため亜人のために立ち上がり女王となる」という夢物語ができていた。
「・・・・・・」
いや、何も言わんけども。
これって、私が猫を何匹、いやいや何百匹被ればいいのかな?
正体が早々にバレないように、オルタンス様の淑女教育を真面目に受けようと思いました。
正直、瞳の色を変えていただけで元の金色の瞳を晒したしところで、私には違和感も何も感じないのだけど。
会議室の面々の反応は真っ二つに分かれました。
まずは、あれ? 瞳の色が変わったね・・・と不思議そうに私の顔を見る方々。
あとは、ギョッ! と驚いたあと、微かに頭を下げ目礼をしてくれる人。
なんでや?
私が首を傾げていると、アルベールが私の耳にコッソリと囁く。
「ヴィー。貴方の瞳の色に驚いた者は、ハイエルフの特徴を知っている者ですよ」
ハイエルフが金色の瞳をしている。
ほとんどの人が知らない情報らしいけど、紛らわしい色味の琥珀色とかちょっと明るい茶色の瞳の人は結構いるしね。
そんなに珍しくもない色と思っていたが、ハイエルフの金色の瞳は中に星が瞬くような輝きがあるとか。
金色の瞳に強く反応したのは、元教皇猊下だという神官のおじいちゃんと、クリストフ殿下と、薬師ギルドのおばあちゃん、魔道ギルドの代表のエルフさん。
商業ギルドの代表でレルカン商会の情報部の人も目を見張っていたから、ハイエルフのことは知っているのだろう。
あとは、ノアイユ公爵のお付きのエルフ族の一人。
ミュールズ国の人と鍛冶ギルドの代表者、我が国のポンコツ貴族、ヴィクトル兄様とノアイユ公爵、モルガン様は知らない派だな。
微妙なのはレイモン氏。
興味深そうに私の顔をマジマジと覗き込んでいる。
「・・・魔道ギルドと私が所属しているエルフの里はシルヴィー女王の誕生をお祝い申し上げる」
「ふえっ?」
「アンティーブ国はもちろん賛成だったし、助力するつもりだったが・・・。アンティーブ国もお祝い申し上げる」
「へえぇぇぇ?」
「ふおほぉぉ。私も昔馴染みに声をかけておくから、安心なされよ」
「いえええっ?」
なんで、教会までもが私の女王即位を賛成するのだよ?
「アルベールの話ではまだ半信半疑だったが、金色の瞳を持つ者とは、すごい影響力だな」
レイモン氏が感心して呟くと、アルベールが鼻で笑った。
「それなりの権力がある者にしか通じない奥の手ですがね。ここトゥーロン王国のように閉ざされていた国では意味がなかったですし」
そうよね、金色の瞳だけで権力者を思うままに操れたら、お母様はトゥーロン王国に連れ去られたりしてないもの。
「よくわからないが、シルヴィーが守られるなら安心だよ」
ヴィクトル兄様が何もかもを飲み込んだ複雑な顔に無理やり笑みを浮かべ、私の手を優しく包んだ。
その手が少し震えている。
聞けば、ここにいるポンコツ貴族以外の賛同は得ているらしいし、残りの文官たちの承諾もあるし、私が女王になるのに障害はないらしい。
「・・・アルベールは賛成ね。リュシアンたちは?」
私は、私の後ろにいる私の家族に気持ちを確かめる。
「俺は・・・お嬢の護衛だからなぁ。お嬢がいいならいいぜ。でも騎士団の手伝いって・・・俺の剣は我流なんだが?」
リュシアンはやや耳をへしょりとさせてモルガン様を窺うように見るが、モルガン様は破顔一笑。
「ふわははは。かまわんかまわん。軟弱者たちをとにかくぶっ飛ばせばいい」
そんな指導法があるものかっ!
「私も商売について学べるなら構いませんが・・・。ヴィーさんはまだ子供です。国王などの重荷を背負わせるのは、いささか・・・」
セヴランももふもふ尻尾を心持ちしょんぼりとさせて、心配そうに私の頭を撫でる。
うん、普段は糸目のヘタレ狐だけど、とっても優しい心配性な人だって知ってた。
「大丈夫です!商業ギルドが全力で支えます。シルヴィー殿下のことも表も裏も支えますので大丈夫ですっ」
・・・裏も?
その商業ギルドの代表の言葉に私は背中がヒヤリとしたが、レイモン氏はニタリと笑った。
「ルネとリオネルは? 十年も冒険できないよ?」
ルネとリオネルは同じ方向に首を傾げたあと、プルルと頭を振る。
「ルネ、ヴィー様と一緒ならいいです! メイドの仕事頑張ります!」
ふんすっと両手を握ってアピールする、かわいい黒猫ルネ。
「んー、ごはんいっぱいならいい。あいつは・・・がまんする」
リオネルは、相変わらず眠たい顔で本能そのままの要求をしてくる。
いや、ご飯はいっぱい食べさせてあげるけど・・・カミーユさんの存在を我慢してくれるのはありがたい。
「ピエーニュの森の調査には着いて行っていいから。そのときに暴れてね?」
リオネルはコクンと頷く。
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「シルヴィー・トゥーロン。十年間の女王、やります」
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ええーっ! と思ったけど、スパルタ教育者のレイモン氏は、当然私に対してもスパルタでした。
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隣の使用人部屋とかアルベールの部屋、護衛のリュシアンの部屋、セヴランの部屋、控えの間も一気にリフォームと模様替え。
だ・か・ら、いらないから売り飛ばせ!
王族スッキーの文官と使用人たちが、重い家具やらヒラヒラの服やら刺繍ビッチリのカーテンを持って右往左往している。
そして、私たちの服の仕立てです。
アンティーブ国の仕立て屋さんを、商業ギルドの代表だったオレールさんが呼んでくれた。
そのせいか、女王になる私の衣装よりもセヴランの衣装の相談が長かったけど、なんで?
レイモン氏が選別した貴族の当主との挨拶やら、ギルドから派遣された職員との面談やら、側付きの選択やら面倒なことも多かった。
私が女王に化けるためにお城の中で四苦八苦している間に、レイモン氏とレルカン商会の情報部は別のお仕事をしっかりしていました。
そう、私の美談を国中に、いや世界中にばら撒くという。
気が付いたときには、「健気でかわいそうな王女が、国のため民のため亜人のために立ち上がり女王となる」という夢物語ができていた。
「・・・・・・」
いや、何も言わんけども。
これって、私が猫を何匹、いやいや何百匹被ればいいのかな?
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