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幸せになりましょう

しばしのお休みでした

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いくつかの場所でいまだ喧噪が聞こえてくるが、概ねザンマルタン家を主とした輩は捕縛が完了し、続々と王宮の地下牢へと押し込められていった。
私たちは、謁見の間を出てモルガン様たちがいる本陣に顔を出し、そのまま引き留められたが、なんとか無理を言って元々住んでいた離れの屋敷に滞在することを許してもらった。
とにかく疲れたからゆっくり休みたいのに、王城前の広場で意気揚々と敵を追いかけ回しているリオネルとカヌレとブリュレ、おまけにカミーユさんを回収するのに骨が折れたわ。
ま、「ご飯抜き!」「おやつ抜き!」で、慌てて走ってきたけどね。

「お嬢、屋敷の中は空っぽだろう? 俺たちが出るとき根こそぎ持っていったからな」

「そうね。とりあえず馬車を敷地内に止めて、馬車で寝泊まりしましょう」

そのほうが、快適な生活ができるしね。

「そうですね。お風呂もあるし、個室で休めますし。ここまで王城と離れていたら、騒ぎも聞こえてこないでしょう」

王城前の広場では、戦勝祝いとばかりに亜人たちとリシュリュー辺境伯の騎士たちが騒いでいたもの。
お酒を飲みすぎることはないでしょうけど、夜通し騒ぎは続きそうだったしね。

「本当なら、もうこの国を出て行きたいけど、レイモン氏に止められてしまったし」

なんだか、嫌な予感しかしないが、レイモン氏がとっても困った顔で引き留めてきたから、断ったら何をされるかわからん恐怖で了承してしまった。
とにかく、お風呂に入って作り置きのご飯を食べて、太るかもしれないけど疲れたから甘いものを食べて・・・寝たいですよ、私は。
ちゃんと活躍したカヌレとブリュレにもおやつをあげましょう。











日々は目まぐるしく流れ・・・と言いたいが、比較的私たちはゆっくりと過ごせている。
暇・・・かもしれない。
アルベールは毎日、モルガン様がいる本陣に顔を出しているけどね。

「明後日、主要なメンバーで会議が開かれるので、私たちにも出席して欲しいそうですよ」

「やっとか」

あまりにも放置されているから、そろそろ出て行こうかと思ったよ。
アルベールが仕入れてきた情報では、その会議には近隣諸国の代表者と各ギルドの代表者も出席するそうだ。

「へ? そんな重要人物たちが集まるのに王城で会議するんじゃないの?」

「ええ。本陣に使っていた例の建物で行うそうです。なんでも王城の調査が終わっていないみたいですね」

文官たちはそのまま王城に軟禁の状態で仕事をさせていると聞いている。
ザンマルタン家がしていたよりは、融通がきくらしいが、城の敷地から出ることと単独での行動は許されていない。
その他、各部屋への調査がされている。
ザンマルタン侯爵の悪事の証拠と隠し財産探しがメインだが、他にもミュールズ国との取引や帝国から書状などを探している。
盗聴の魔道具が仕込まれているかもしれないから、しばらく王城での重要な会議はできないって。
帝国に情報が筒抜けだと困るもんね。

「え? 俺たちも行くのか?」

リュシアンが不服そうな顔をするが、お前は私の護衛だろうが!

「ええ。セヴランもルネとリオネルも出席です。いいじゃないですか、みんなで参加して後の憂いがなくこの国を出ればいいのですから」

「そうですね。またアンティーブ国まで移動するのかと思うと気落ちしますけど」

アルベールの国出の話にセヴランは苦笑する。

「ああ。モルガン様に飛竜を貸してもらえないか頼もうか? あいつらなら飛んですぐにアンティーブ国に行けるだろう」

「いいわね。お願いしてみましょう」

飛竜ならおやつで釣ってもいいし、上位種族になるリオネルには服従だから操れるし。

「でも、そんな会議に私たちが出席して、何になるのかしらね?」

むしろ、そんな大事な会議に子供の私がいたら、怒られるんじゃないかしら?

「さあ。あのレイモンの策略じゃなければいいですけどね」

アルベールが差し出した会議の出席者リストに目を通す。
リシュリュー辺境伯であるレジス様は、謁見の間で犯した行動にベルナール様へゴツンと一発お見舞いした後、レイモン氏の顔を見て「じゃ、俺は帰るわ」とリシュリュー辺境伯領地へ少数の騎士だけを連れて飛竜で帰って行った。
いいのか? 辺境伯がいなくて? と思ったが、ヴィクトル兄様の後ろ盾は正確には前辺境伯のモルガン様なので、問題はないらしい。
いやいや、絶対レジス様ってばレイモン氏に顎でこき使われるのが嫌で逃げたんでしょ?

リシュリュー辺境伯からは、モルガン様とレイモン氏、亜人騎士団団長と副団長。
ベルナール様はユベールの件で謹慎中なんだって。
あ、ノアイユ公爵のシャルル様も出席されるし、ミゲルさんも亜人奴隷解放軍の代表者として出席ね。
その他、トゥーロン王国の貴族らしい人たちが数名と、文官の代表として宰相と宰相補佐が出席。
王族代表はヴィクトル兄様。
陛下は、ザンマルタン侯爵からの幽閉からは解放されたが、今はモルガン様の監視下にある。

「あ、クリストフさんが来るよ。アンティーブ国の代表で」

見知った名前を見つけてはしゃいだ声をだせば、アルベールの美麗な顔が不快気に歪む。
もう、本当は仲いいくせに。
あとは、連合国の代表者は知らないなー、ミュールズ国の代表者はミシェル陛下じゃないのは仕方ないよね? 今はとっても忙しい時だろうし。

「あれ? ミュールズ国の代表者の名前にアデル王子の名前もあるけど、見つかったの?」

「ああ。そいつ、イザックに聞いたら亜人奴隷解放軍に参加していたらしいぜ」

はて? あのときにそんな人いましたっけ?

「ああ。王城戦には参加してねぇよ。聖女の護衛とかで教会にいたらしい」

「聖女? 教会?」

むむ? 教会は亜人奴隷解放軍となんの関係もなかったはずだけど? なんか引っかかるなぁ。
その他は各ギルドの代表者だったけど、ロドリスさん以外、誰一人として知っている名前はなかった。

「ちぇっ、ヴァネッサ姉さんは来ないんだぁ」

プクッと頬を膨らますと、アルベールがその頬をチョンチョンと突いてくる。

「ヴァネッサに交渉なんてできるわけがないでしょう」

それもそうだね。

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