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悪を倒しましょう
闘いが始まりました
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黒い煙はゆったりとした動きに変わり、リュシアンの幼馴染でもうすぐビーストへと生まれ変わるはずだったガブリエルさんの体を覆った後、どんどん膨れていった。
煙が巻き動いているのに、風は微塵も感じられない。
でも、魔力の圧というのか、体にバシンバシンと打つように力の奔流が叩きつけられているみたいだ。
勿論、私のチート能力の防御魔法と防御の魔道具で全員とこの地下室の崩落を防いでいますけど?
でも、この嫌な感じの魔力、ベタァーとした粘着質なモワッとした腐臭が漂う魔力を浴びているだけで、気が滅入るわ。
パキン!と乾いた音の後にバキッバキ!という音は、どうやら石造りの寝台そのものが砕けている音だろう。
アルベールとリュシアンが私の前に出て庇ってくれているし、クリストフさんとヴァネッサ姉さんはたぶん壁際まで下がって警戒していると思う。
寝台を挟んで反対側にいた二人は、黒い煙に遮られてしまって、ちっとも見えないんですけど。
「ヴィー、なるべく後ろに下がっていてください。できれば自分への防御魔法を最大に」
アルベールはこちらを振り向きもせずに、右手だけをヒラヒラと振って私の体を後ろへと誘う。
「でも・・・。何があるかわからないし・・・」
もし、物理攻撃特化型の3人で対抗できない状態だったら、魔法特化型の私とエルフ族のアルベールで対応しないとマズイじゃないの。
「貴方の安全が第一です。いざとなったら貴方だけを連れて逃げます」
「ええーっ」
それって、クリストフさんたちを見捨てるってこと?
「逃げることに躊躇するなよ、お嬢。危なくなったら俺たちや爺のことも放っておいて外に逃げろ!」
リュシアンは今までに見たことのない緊迫した顔で私を睨みつけた。
うぐぐぐっ、言っていることは頭ではわかっているが、感情で納得できないよ!
私一人だけで逃げるなんて・・・、外に出て助けを呼びに行くならまだしも・・・このメンバーで太刀打ちできないなら助けを呼びに行っても被害が増すだけだし。
「おいっ!くるぞ!」
向こう側からクリストフさんの鋭い声が飛んできた。
黒い煙は天井や壁にぶつかりながらもグイングインとうねっていたが、私たちの防御魔法には傷一つ付けられなかったので攻撃を諦めたのか、幾重にも巻き付いていた縄が解けるようにパラパラと霧散していく。
段々と視界がはっきりしていくと、まず見えたのは粉々に壊れた寝台の成れの果てと、拘束具だった真っ二つに割れた鉄の輪っか。
そして、その場にふよふよと浮かぶ・・・一人の亜人の姿。
明るい茶髪の髪が風もないのに上へと吹き上がり、病人が着せられるような白いワンピースの裾もパタパタとはためいている。
目は閉じられたまま、立った姿勢で床から僅か数センチ浮いている・・・ハーフエルフのガブリエル。
「・・・魔力の圧が消えた?」
クリストフさんの呟きにヴァネッサ姉さんもキョロキョロと辺りを見回している。
二人には魔力の流れが見えないのかもしれない。
恐ろしい魔力の量と圧だったものは、全てガブリエルさんの体が掃除機のように吸い込んでしまった。
だから、ガブリエルさんの体の中には膨大な量の魔力が存在しているはず。
リュシアンはガブリエルさんの姿に目が釘付けで、私が見ても隙だらけの状態だ。
アルベールは手に握ったレイピアの柄をさらにギュッと握った。
「くる!」
私が無意識に叫ぶと同時にガブリエルさんの両目がゆっくりと開いた。
「・・・ひいぃぃぃぃっ!」
その姿の異常さに、私は思わず両手で頭を抱えてその場に蹲ってしまった。
だって、だって、その目が・・・目が・・・白目のところが深緑色で血走っていて、瞳孔が・・・白いんですよ?真っ白、不透明な真っ白!
こーわーい!
「・・・エル」
リュシアンのどこか呆然とした声。
瞬間、ガブリエルさんを中心に鎌鼬のような風の刃が無数に飛んできた。
私の上左右にもビュンビュンと風切り音を立てて風の刃が通り過ぎて壁にガキン!とぶつかったり、私の防御魔法に遮られて拳銃の弾の跳弾のようにどこかへと飛ばされたり。
「ひえぇぇぇっ」
不気味な人からの無言の攻撃が、こーわーい!
私がガクガクと蹲ったまま震えていると、アルベールがリュシアンに向かって言う。
「何をしている!あいつを倒すぞ。悪いが・・・手加減はできない」
「ああ・・・。ああ、わかった」
リュシアンは一度きつく唇を噛んだあと、大剣の柄を両手で握り、魔力を流し込んでいった。
恐る恐る私が立ち上がると、クリストフさんも剣を構えて、本来は素手で戦うスタイルのヴァネッサ姉さんはモーニングスターをブンブン振り回していた。
ゴクリ。
邪魔になる。
ちゃんとした戦闘経験のない私は、ここでは邪魔になると理解した。
じりじりと後ろに下がり、自分にしっかりと防御魔法を重ねがけした。
3人が怪我したら治癒魔法で治す!ここから付与魔法をかけてサポートする!
そして・・・もしものときは、私の最大級攻撃魔法をぶつけ、外に逃げる!
キュッと口を引き結んで、目を見開いて、私は3人の死闘を見守ると決意したのだ!
煙が巻き動いているのに、風は微塵も感じられない。
でも、魔力の圧というのか、体にバシンバシンと打つように力の奔流が叩きつけられているみたいだ。
勿論、私のチート能力の防御魔法と防御の魔道具で全員とこの地下室の崩落を防いでいますけど?
でも、この嫌な感じの魔力、ベタァーとした粘着質なモワッとした腐臭が漂う魔力を浴びているだけで、気が滅入るわ。
パキン!と乾いた音の後にバキッバキ!という音は、どうやら石造りの寝台そのものが砕けている音だろう。
アルベールとリュシアンが私の前に出て庇ってくれているし、クリストフさんとヴァネッサ姉さんはたぶん壁際まで下がって警戒していると思う。
寝台を挟んで反対側にいた二人は、黒い煙に遮られてしまって、ちっとも見えないんですけど。
「ヴィー、なるべく後ろに下がっていてください。できれば自分への防御魔法を最大に」
アルベールはこちらを振り向きもせずに、右手だけをヒラヒラと振って私の体を後ろへと誘う。
「でも・・・。何があるかわからないし・・・」
もし、物理攻撃特化型の3人で対抗できない状態だったら、魔法特化型の私とエルフ族のアルベールで対応しないとマズイじゃないの。
「貴方の安全が第一です。いざとなったら貴方だけを連れて逃げます」
「ええーっ」
それって、クリストフさんたちを見捨てるってこと?
「逃げることに躊躇するなよ、お嬢。危なくなったら俺たちや爺のことも放っておいて外に逃げろ!」
リュシアンは今までに見たことのない緊迫した顔で私を睨みつけた。
うぐぐぐっ、言っていることは頭ではわかっているが、感情で納得できないよ!
私一人だけで逃げるなんて・・・、外に出て助けを呼びに行くならまだしも・・・このメンバーで太刀打ちできないなら助けを呼びに行っても被害が増すだけだし。
「おいっ!くるぞ!」
向こう側からクリストフさんの鋭い声が飛んできた。
黒い煙は天井や壁にぶつかりながらもグイングインとうねっていたが、私たちの防御魔法には傷一つ付けられなかったので攻撃を諦めたのか、幾重にも巻き付いていた縄が解けるようにパラパラと霧散していく。
段々と視界がはっきりしていくと、まず見えたのは粉々に壊れた寝台の成れの果てと、拘束具だった真っ二つに割れた鉄の輪っか。
そして、その場にふよふよと浮かぶ・・・一人の亜人の姿。
明るい茶髪の髪が風もないのに上へと吹き上がり、病人が着せられるような白いワンピースの裾もパタパタとはためいている。
目は閉じられたまま、立った姿勢で床から僅か数センチ浮いている・・・ハーフエルフのガブリエル。
「・・・魔力の圧が消えた?」
クリストフさんの呟きにヴァネッサ姉さんもキョロキョロと辺りを見回している。
二人には魔力の流れが見えないのかもしれない。
恐ろしい魔力の量と圧だったものは、全てガブリエルさんの体が掃除機のように吸い込んでしまった。
だから、ガブリエルさんの体の中には膨大な量の魔力が存在しているはず。
リュシアンはガブリエルさんの姿に目が釘付けで、私が見ても隙だらけの状態だ。
アルベールは手に握ったレイピアの柄をさらにギュッと握った。
「くる!」
私が無意識に叫ぶと同時にガブリエルさんの両目がゆっくりと開いた。
「・・・ひいぃぃぃぃっ!」
その姿の異常さに、私は思わず両手で頭を抱えてその場に蹲ってしまった。
だって、だって、その目が・・・目が・・・白目のところが深緑色で血走っていて、瞳孔が・・・白いんですよ?真っ白、不透明な真っ白!
こーわーい!
「・・・エル」
リュシアンのどこか呆然とした声。
瞬間、ガブリエルさんを中心に鎌鼬のような風の刃が無数に飛んできた。
私の上左右にもビュンビュンと風切り音を立てて風の刃が通り過ぎて壁にガキン!とぶつかったり、私の防御魔法に遮られて拳銃の弾の跳弾のようにどこかへと飛ばされたり。
「ひえぇぇぇっ」
不気味な人からの無言の攻撃が、こーわーい!
私がガクガクと蹲ったまま震えていると、アルベールがリュシアンに向かって言う。
「何をしている!あいつを倒すぞ。悪いが・・・手加減はできない」
「ああ・・・。ああ、わかった」
リュシアンは一度きつく唇を噛んだあと、大剣の柄を両手で握り、魔力を流し込んでいった。
恐る恐る私が立ち上がると、クリストフさんも剣を構えて、本来は素手で戦うスタイルのヴァネッサ姉さんはモーニングスターをブンブン振り回していた。
ゴクリ。
邪魔になる。
ちゃんとした戦闘経験のない私は、ここでは邪魔になると理解した。
じりじりと後ろに下がり、自分にしっかりと防御魔法を重ねがけした。
3人が怪我したら治癒魔法で治す!ここから付与魔法をかけてサポートする!
そして・・・もしものときは、私の最大級攻撃魔法をぶつけ、外に逃げる!
キュッと口を引き結んで、目を見開いて、私は3人の死闘を見守ると決意したのだ!
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