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運命の鐘を鳴らしましょう

知り合った人は誰ですか?

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お酒を提供するお店で、冒険者たちも多く利用する美味しくて安い店とくれば、千客万来でしょうけど・・・混雑してきたら相席もするでしょうけど・・・。
この御仁はフラフラと酒瓶とコップを持って、店の奥の一角を占有する私たちのテーブルまで来たかと思ったら、どっかりと座ってそのままグイッとお酒を飲みだしたのだ。

ええーっ!と衝撃に固まったのは私だけで、リュシアンたちは変わらず愚痴を言いながらお酒を流し込んでいるし、ルネとリオネルはあぐあぐと肉を食べている。
アルベールだけはチラッとその御仁を見たけど、スルーしてグラスを優雅に傾けているだけ。

え?私だけなの?この不審人物を気にしているの?
しかも、私が恐る恐る伺うように覗き見ると、ニカッと豪快に笑う。
むむむ、お酒強そうですね。
ちなみに、ウチのメンバーはアルベールがザルで、リュシアンがほどほどの強さでお酒を飲むのが好きだけど酔いつぶれるタイプ。
意外なのはセヴランで、ワクとかフチとか言われる底なしのタイプなのに、酔えないからお酒はそんなに好んで飲まない。
たまにお高ーいワインとかをチビチビ飲んでいるぐらい。
だから、今もひとり素面でリュシアンや赤ら顔のカミーユさんの介抱をしている。

さて、目の前の御仁だが、外見年齢はアルベールよりやや上の30代ぐらい。
背はリュシアンと同じぐらいだけど、体の厚みはこの人の方がかなりブ厚いわね。
背中に大剣を背負っているから冒険者かな?
腕や首、胸元に傷痕が見えるし、服に隠れている所にも傷はあるのだろう。
その着ている服は、白いちょっとズルズルと長めの長衣とワイドパンツみたいな幅広なズボン。
足は組紐のサンダル履きで、指も腕も耳も、あちこち金の装飾品で飾られている・・・ホストですか?
しかも、頭には白いターバンが巻かれていて、でも適当に巻きつけたのか所々から黒髪がはみ出ている。
んで、ワイルド系のイケメンです。
やや三白眼な鋭い目付きと高い鼻に厚めの唇・・・ホストですか?

そんな大人の色気ダダ漏れのおじさんが、8歳の美少女に何の用でしょうか?私をどこかに売るつもりなんでしょうか?
何度も目を合わせ笑いかけられているので、口を引き攣らせながらも何回目かに勇気を出して笑い返してみる。

「よぉ、嬢ちゃん。ここのメシは旨いか?」

「・・・はあ」

こくんと頷くと、大きな手をこちらに伸ばしてわしゃわしゃと頭を撫でられた。
え?ただの子供好き?
アンティーブ国の王都で変な人と知り合ちゃったなぁ。








「ベルナール様は獅子の耳と尻尾があったわ」

ヴィーのその言葉に一瞬自分の耳を疑いました。
エルフの自分が聞き違いなどあるわけないのに。

そしてトゥーロン王国のリシュリュー辺境伯に滞在していたときに、取るに足らないと判断しベルナール様と接触しなかったことが悔やまれる。
獅子族だとわかっていれば・・・。
いや、ヴィーと接触させなければよかった・・・。

ヴィーの追求を逃れるために、慌てて宿屋の部屋を出たところでカミーユが宿屋の厩で私を待っていた。
リュシアンにルネとリオネルを任せて、ふたりで厩の裏で密談。

「アルベールさんは、知っていましたか?」

「アンティーブ国の王族が獅子族であることは、秘密でもなんでもないでしょう?」

そう、ここアンティーブ国の王族は獅子族だ。
それは内外問わずに知られてはいるが、興味を持っているものは不思議と少ない。
総じて獣人たちは国の王などに興味がないのと、アンティーブ国のような異種族が混じって暮らしている場所は混血児が多く、種族の境界が曖昧になっているからだ。
それでも知っている者は知っている・・・獅子族の数は少なく、アンティーブ国の王族のみと。

「・・・王族の中で行方のわからない人なんて、僕は聞いたことがないですよ?」

「そんなことは巷に出回らないでしょうよ。しかし、ヴィーの言っていることが本当なら、彼はアンティーブ国の王族の血族となります」

「ええ。でもそんな話をどこに持っていけば・・・」

私たちが親切にそんな情報を然るべき所に届ける必要はないが、ベルナール様の居所を無闇に探せなくなってしまった。

「・・・もし彼を利用しようとしている貴族の元に身を寄せていたら・・・」

「げえっ。僕は嫌ですよ、そんなドロドロした展開に首を突っ込むのは!」

いやいや、私たちも嫌ですよ。
しかもそんなことになったらヴィーの正体が芋づる式にバレるでしょう。

「とにかく、カミーユさんはビーストの調査とリュシアンの手綱を握っていてください。彼のことは私が別口から調べてみます」

カミーユと別れ、ルネとリオネルに適当な依頼を与えて体力を発散させる。
ついでにカヌレとブリュレを草原で思いっきり走らせて、ヴィーお手製のおやつを腹いっぱいに食わせてやる。
午後に宿屋に戻り、風呂から出てきたルネとリオネルにこっそりと睡眠魔法スリープをかけて、ひとりで出掛ける。
ちゃんと宿屋の部屋には施錠魔法ロックもかけておいたので、ルネとリオネルの眠りを妨げる不審な訪問者が入ることはないだろう。

ひとりローブを纏い訪れたのは、「王都東ギルド」のギルマスの部屋。
ここに昔馴染みがいる。
ヴァネッサたちと冒険者稼業に精を出していたときに知り合った、とてつもなく強い男。
噂ではSランク冒険者になったそうだが、今はここアンティーブ国のギルドのギルマスになっていると。

ガチャリと開けたドアから見た懐かしい奴の姿は、時を戻したように何も変わらないように見えた。
ただ、その頭を覆う白いターバンを除いては・・・。
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