上 下
127 / 226
王都に行きましょう

王都へ出発しました

しおりを挟む
今日の予定。
アルベールは、カミーユさんと冒険者ギルドで今後の王都までの旅程のお話し合い。
リュシアンとリオネルは、カヌレとブリュレの散歩とついでに食用の魔獣を狩ってくる。
ルネとセヴランは市場へ買い物。

私?
私は馬車の中で料理三昧ですが、なにか?

カミーユさんに誘われた王都への護衛依頼は、反対意見も出たが結局受けることにした。
改めてカミーユさんが冒険者ギルドに依頼を出して、私たち冒険者パーティーが受諾した形で。

んで、サン・ブルージュの町から王都まで・・・実は約1ヶ月の長旅なんだよねぇ。
だからその準備をしっかりとしておこうと、それぞれが得意分野を活かしているのです。
って、私は料理ばっかりだよっ。
あ、おやつも作っておこう。

なんせ、この馬車にカミーユさんも乗せることになったしね。
馬車の空間魔法のことは秘密にしてたけど、そんなに長旅で誤魔化せる訳ないし、だからと言って普通の馬車の状態で長旅なんてしたくないとリュシアンたちに泣かれてしまったし。

とりあえずカミーユさんに「カリスマ(種)」スキルが見事「カリスマ」になりましたよと伝えて、畳みかけるように「獣化」もできるようになりましたよ、と教えてあげた。
そのショックを受けて動揺しているうちに、馬車の話やリュシアンたち希少種族の話もしたから、なんたがよくわからない状態になっていたが、最後にアルベールが綺麗な顔に微笑みを浮かべて口止めしていた。

これで、王都までほとんど野営で進むことになったよ・・・。
みんな、馬車の居心地が良すぎて、宿屋に泊まるの嫌がるんだもん。
食事もそうだし・・・、あ、混ぜご飯作っておにぎりも大量に用意しておこう。

ま、冒険者ランクを上げるのに護衛依頼は受けなきゃいけなかったから、丁度良かったと言えるんだけどね・・・。
ちなみに部屋割りで揉めました。
カミーユさんはリオネルと同室で、と主張をしたけど、リオネルはルネと同室だからね。
「慎みが・・・」とカミーユさんは訴えていたけど、まだ子供じゃん。
リュシアンたちに聞いても「まだ平気」ってお許しが出てるし。
最終的にはリオネルの目が据わってきて、「ガルルルッ」と唸って終わった。

「リオネルが・・・僕に威嚇・・・。くすんくすん」

あー、ウザイ!
なのに、昨日はそのブラコンのカミーユさんに相談を持ち掛けられて。
いやいや、馬車の部屋割りの件は譲りませんけど?

「違う違う。それはしょうがないと諦めるよ・・・。それよりね・・・僕、リオネルともっともっと仲良くなりたいんだけど・・・。あの子は、ほら照れ屋だし・・・」

はて?リオネルが照れ屋さん?
あの子に羞恥心なんてないと思うけど?
どうやら、ブラコンスキルは対象をとことん歪めて見てしまうものらしい。

「仲良くって・・・。一緒にいたら仲良くできると思いますよ。あとは、食べ物で釣ってください」

漏れなく、絶対に釣れますから!
だいたい、あの子に策を講じても無駄です。
直感で生きてるもの。
カミーユさんは私の言葉にもじもじと乙女のように恥じらいながら、「協力してほしい」と頼んできた。

「えーっ」

やだよ、めんどい。
どう断ろうかと言い淀んだその一瞬、アルベールがひょいと顔を出して。

「いいですね。協力しますよ」
「ええっ!アルベールが?」
「兄弟が仲良くするのはいいことでしょう?」

はい、そうですね。
アンタも持ってたもんね、ブラコンスキル。

「いいけどさ・・・。過剰なスキンシップや過干渉は嫌われるよ?」

そこっ、ガーンと見てわかるほどにショックを受けない!

「ど・・・、どうすれば?リオネルはまだ幼いので抱っこも添い寝も一緒にお風呂も、あーんも、チュッチュッも許されると思ってたのにぃぃぃぃっ」

・・・犯罪者ですか?

「うーん、お互いのことをよく知るのがいいと思うけど・・・」

あ、そうだ。
ついでにリオネルの情操教育も行おう。
あの子、ちょっと感情が単純すぎるのよねぇ。
文字を教えてルネはたまに読書をしたり、セヴランにいろいろと教えてもらって勉強を続けているけど、リオネルは覚えたら終わりになってしまった。
リュシアンが言うには、「あいつ、冒険者ギルドの依頼ボードに貼ってある依頼書が読めればいいと思ってんだろ」とのこと。
でも本を読みなさいって注意しても読まないし・・・。
やっぱり、文字は読んで書いて読んで書いての繰り返しよね!

「あの・・・こういうのはどうですか?」

私の提案にカミーユさんは顔を輝かして、スキップする勢いで外出していった。
雑貨店でノートとお揃いのペンを買ってくるんだって。

「問題はリオネルが大人しく言うことをきくかどうか。どう思うアルベール?」

「・・・言うことを聞かせればいいのですよ」

ニッコリ。











「これ、なに?」

カミーユさんが満面な笑顔で差し出したのは、ファンシーな絵柄のノートとペン。
ニコニコと自分も同じペンを手に、リオネルに「交換日記」なるものの説明をしている。
つまり交互に日記を書いて親睦を深めようという作戦だ。
リオネルはカミーユさんの説明に段々と不機嫌になっていく。

「や!めんどう」

でしょうね。
カミーユさんは焦りながらなんとかリオネルを懐柔しようとしている。
そこへ、スッとアルベールが間に入り、リオネルの丸い耳にこしょこしょと何かを囁く。

そうそう、ここでは白虎族はカミーユさんで見慣れているので、リオネルも魔道具を外して白虎族の耳と尻尾のあるがままの姿で過ごしてます。
アルベールが何を言ったのか、煩悶するリオネル。

「お嬢。あれ・・・なんの意味があんだよ?」

「ないわよ。あれで仲良くなるかどうかなんて知らないわ。でもカミーユさんはリオネルとやりとりができるし、リオネルには勉強になるでしょう」

「そうですね。リオネルは文字しか覚えてないので、慣用句とか言い回しとか不慣れなままですし」

臨時の先生だったセヴランもうんうんと頷いて、日記を書くことを賛成してくれる。

「・・・?リオネル・・・泣きそう」

アルベールが何を言ったのかは想像できるが、その取引がリオネルにとってはギリギリの範囲なのか、すっごい顔してる。

「ぐぬぬぬぬ」

「どうします?リオネル」

「リオネル。お兄ちゃんと日記を書こうよ。お願い!」

・・・リオネルが耳も尻尾もだらーんと下げて、渋々頷くのが見えた。
そんなに日記を書くのが嫌なの?
それともカミーユさんと交換日記するのが嫌なの?

いい仕事しましたー!とばかりにスッキリした顔で、アルベールがこちらに歩いてきた。

「だいたい何を言ったかわかるけど・・・何を言ったの?」

「もちろん、おやつ禁止です」

アルベール・・・。
結局、食べ物で釣ったのね・・・。

そうして、私たちは王都に向かうビーストを運ぶ冒険者ギルドの馬車に遅れること数日、サン・ブルージュの町を出発するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる

佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます 「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」 なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。 彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。 私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。 それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。 そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。 ただ。 婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。 切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。 彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。 「どうか、私と結婚してください」 「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」 私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。 彼のことはよく知っている。 彼もまた、私のことをよく知っている。 でも彼は『それ』が私だとは知らない。 まったくの別人に見えているはずなのだから。 なのに、何故私にプロポーズを? しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。 どういうこと? ============ 番外編は思いついたら追加していく予定です。 <レジーナ公式サイト番外編> 「番外編 相変わらずな日常」 レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。 いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。   ※転載・複写はお断りいたします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。