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王都に行きましょう

スキルがバレました、どっちの?

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小さい獣人の子供がたったひとり、違法な奴隷獣人の馬車に乗せられ、悪名高い亜人差別の王国に連れて来られる。
うん、これだけで犯罪だし、危険な匂いがプンプンしてましたよ?

同じ境遇の猫獣人のルネは、そもそも人身売買組織と繋がっていた孤児院から奴隷商人へと渡ったから、始めから仕組まれていたものだったし。
でも、リオネルは記憶が無かったから、事情を聴くことも調べることもできなかったんだよねぇ。

両親が健在で良い人なら、最悪リオネルを返さなくてはならない・・・なーんて覚悟もしてたけど・・・。
殺されそうになったって、物騒な話は聞きたくなかったなー、私。

「どういうことか、もうちょっと詳しく話してごらんなさい」

私はリオネルが手を伸ばした焼き菓子のお皿を彼から遠ざける。
いやーと駄々を捏ねるようにお菓子のお皿に両手を伸ばしてくるが、あんた口の中いっぱいに頬張るから喋れなくなるでしょーが!
ルネが慌てて身を乗り出したリオネルの体を抱き留める。

「お嬢、菓子を返してやれ。リオネルに理路整然と説明ができるわけがない」

「そうですよ。無理ですよ、無理。だいたい誰に殺されそうになったかなんて、この子は興味が無いと思いますよ?」

リオネルの性格を掴んでいるリュシアンとセヴランの意見に激しく同意するわ。

「・・・たぶん、リオネルの命を狙ったのは、他の兄弟やその母親、一族の者でしょう。逃げたのは分かりますがひとりで逃げたとは思えませんが?」

アルベールの言葉に、リオネルはもぐもぐと口を動かしながら思い出そうと眉間にシワを寄せる。

「・・・っぅぐ。うーんと、とにげた。ばしゃにいれられた。もりでひとり、おろされた」

「一緒に居た乳母は、どうしたの?」

「ちがうばしゃ、のった。おとり?になるって」

・・・つまり国を出るときに一緒にいた乳母は、リオネルを守るため囮の馬車に乗って違う道を逃げたのだろう。
でも、馬車からひとりで森の中に放置されるってどんな状況なの?

「森の中でどうしたのよ?」

「・・・うん?ねた。おきたら、ちがうばしゃのなか。またちがうばしゃ、なんどかのりかえたら、ルネがいた」

そう言ってギュッとルネに抱き着く。

「森の中で寝るのは止めなさいよ、危ないなぁ。それより違う馬車って何者?」

「あー、たぶん、そもそも最初に乗った馬車が依頼の金だけせしめて、護衛対象、つまりリオネルを適当な場所で放置したんだな。んで都合よく別の馬車に・・・て」

「その馬車が奴隷商人の馬車だったのね・・・」

護衛対象を森の中に放置するなら、その愚行がバレないようにそこそこ森の奥で捨てるだろうし、そんな森の奥を移動している馬車なんて普通の馬車のハズがないもんね。
逃げていた私たちもだったし。

運よく助かったと思ったほうがいいのか、奴隷商人に見つかるなんて運が悪いと言ったほうがいいのか・・・悩むわね。
本人は呑気にお菓子を両手に持ってニコニコで齧っているけどね。

「・・・あの人たちはどうしようもないな・・・。一番小さいリオネルにまで暗殺の手を伸ばすなんて。・・・リオネルに何か才能の片鱗でも見出したのかな?」

カミーユさんの呟きに、私たちはギクッと体を強張らせた。
リオネルの持つスキル、「カリスマ」は白虎族の中では特別なスキル。
持っている者は白虎族の王となる、「カリスマ」スキル。
リオネルが持っているとバレたら、そりゃ幼いうちに殺そうと王座を狙う野心マンマンの人たちは思うかもしれない。

私は隣に座るアルベールにこそっと耳打ちした。

「・・・スキル、バレたのかな?」

「・・・それはないとも・・・言い切れませんね」

白虎族の中でリオネルに「カリスマ」スキルを持っていることを知っている人がいると、後々リオネルの身柄を奪いにくるかもしれないから、面倒だよなー。
はふぅとため息吐いて、すっかり冷めた紅茶に手を伸ばす。
・・・あれ?そういえば・・・。

「ねぇ、リオネルのお母さんってまだ国にいるの?それともどこかへ逃げたの?」

あら、いやだ。
この子の保護者がまだ残っているじゃない。

「・・・あいつ、きらい。だから、しらない」

「母親と不仲ってどんな関係だったのよ・・・。じゃあ、父親は?」

「?しらない?みたことない」

プルプルと頭を左右に振って否定するリオネル。
ま、私も例の血みどろパーティーまで親兄弟に会ったことないから人のこと言えないけど・・・、王族ってみんなそんなモノなのか?

「リオネルの母親は気の強い人だったから嬉々として政略争いに乗り出していたと思うよ。子供を大事にするような母性は感じなかったかな・・・。リオネルが居なくなって困っただろうね」

国王である父親は一度は顔を見に来たと思うけど、基本は使用人任せの放置だそうだ。

母親同士が姉妹だったというカミーユさんから詳しく聞くと、リオネルの母親はギラギラの野心を剥き出しに自ら王に売り込みして、まんまとリオネルを身ごもり妃のひとりになったというバイタリティーの塊のような人。

とにかくあちらこちらで喧嘩を売りまくり、マウントの取り合いに命を賭けるほどの人で、暗殺されるぐらいには後宮の妃たちに嫌われているし、なんなら自分も暗殺者を雇っているだろうと。

「・・・殺伐とした環境にいたのね・・・」

じゃあ、リオネルがバトルジャンキーでもしょうがない。
生きるために必要だったんだもん。
と、私かひとりで納得していると、カミーユさんは再びじぃーっとリオネルを見つめる。

「でも・・・王太子にならないと王妃にはなれない。なら彼女はリオネルが王太子になれると思っていた?なんでだろう?」

それは、「カリスマ」スキルを持っているからでーす!なんて告白できないから、お口はチャック!
そう、私たち全員、ここは沈黙が金!とばかりに口を噤んでいましたよ?ただ・・・ひとりを除いては。

「カリスマ?もってるから?」

リオネル本人が爆弾発言しやがりましたよーっ、もう嫌、この子・・・。
ルネが迅速にリオネルの口を両手でがっちりホールドするが、時遅し。

「なんだって!リオネルが・・・カリスマスキル持ち?」

ソファから立ち上がって、呆然とリオネルを見つめながらブツブツと「カリスマスキル」と口に出しているカミーユさんがちょっと怖い。

私は気を取り直してゴクンと喉を鳴らすと、とっておきの切り札を切る。
だって、「カリスマ」スキルを持っているからって、リオネルを国に強制送還されちゃ困るのよ!
この子も大切な家族なんだから!だいぶ、エンゲル係数が気になるけど・・・。

「カリスマスキルって珍しいんですか?だって・・・よね?カミーユさん」

ニッコリ。

「鑑定」スキル持ちを誤魔化せると思うなよーっ!

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