みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
上 下
68 / 226
人助けをしましょう

名物料理作りました

しおりを挟む
ゴダール男爵領地の土地は、痩せている。
小麦や大麦、他の穀物、野菜も育ちにくい。
でも、芋類は取れる。

「だから、唯一余っている食材であろうお芋でいろいろ作ったけど・・・。あれでどうして人が戻ってくるの?」

私の疑問に、ローズさんとガストンさんは真面目な顔で教えてくれた。

「ああ、名物料理があればそれが話題になって、冒険者なんかは戻ってくるかもねぇ。しかも芋はよく取れるし料理手順も簡単で安くできるし」

「そうじゃな。酒のツマミにもなるし、子供のおやつにもなる」

ただの揚げた芋ですが?

「ほら、甘い芋も美味しくなったよね!」

ああ、薩摩芋ですか?
この世界、砂糖や塩、スパイス系が高くてお貴族様が食べる高級品扱い・・・ではなく、市民でも手軽に買って食べれるものだから助かったわ。
薩摩芋も、それだけでも甘いけど砂糖入れたらもっと美味しいし・・・。

「食べ物で釣るのか・・・。いい作戦だな」

ギルドマスターのヤンさんまで乗り気になってしまったが、本当にたかが芋料理で人が集まるのかな?

「ふむ。ローズさんとこだけじゃなくて、町全体で商品にした方がいいな。屋台とかも出して」

「屋台なら、人が来なくて休業状態の奴らも売ることができるね!」

そう、冒険者も商人も来ないし、ゴロツキ共に町が封鎖されていたからお仕事ができなくて、しょんぼりしている大人たちがかなりいる。
ガストンさんたち鍛冶師もそうだ。

「じゃあ、屋台はガストンさんたちに作ってもらったら?」

間に合わせで屋台を開くより、ガストンさんたちにしっかりとした屋台を作ってもらったら?
私はガストンさんに芋を揚げる鍋と油切りのトレーと揚げ物用の菜箸の説明をする。
ついでに味変のためのスパイス入れも。

「ん?塩味だけじゃないのかい?」

「みんな塩味だけで売ったら飽きちゃうでしょ?いや塩味は王道だけども。ちょっと辛い味にしたりバター味にしたり、いろいろと試してみたら?」

「短冊の形だけじゃなくて薄切りの形もあるし・・・。そうだな、いろんな味があったら商売の棲み分けもできる」

ガストンさんの言葉に、ヤンさんがうんとひとつ頷いた。

「その前に、その芋料理を俺にも食わしてくれ」

ヤンさんの要望に、男爵夫人のブリジット様と使用人の皆さんが一斉に頷いた。

「ははは。作りますよ。作ればいいんでしょ!」

男爵邸にまできて、私は料理を作るのかい!






男爵位は決して高い地位ではないが、貴族である。
その貴族のお屋敷の広間に並べられる様々な芋料理。
揚げた芋、蒸かした芋、薩摩芋。
付けて食べるディップ式も取り入れて、トマトソースも並べました。
トマトソースは安価で流通してましたので。
そして、平民貴族関係なく、男女も老いも若いも関係なく、貪り食べてます、芋料理。

「ははは」

そんなに美味しいですか?
私もポリポリ食べてるけどね。

「はあぁぁ、美味しいですわ。揚げているだけのお芋なのに、いつも食べているお芋とは違う。とっても美味しくて・・・手が止まりません」

ブリジット様、気を付けてくださいね。
その芋料理は、食べ過ぎると太ります。

ガストンさんとヤンさんは辛い味付けのポテトを食べながら、メイド長にお酒を頼んでいるけど断られている。
そりゃそうだ。
何しに来てるんだ!

「美味しいねぇ。これならリュイエの町の名物になれるよ」

「うーん。でも・・・地味じゃないかな?」

芋料理って。
でも他の名物料理を作るには、この土地でできる作物が少なすぎる。
ここの農家が作っている物は、町民たちが食べる分とあとはちょっぴり残るだけ・・・らしい。

そして味付け。
カレー味はスパイスが揃えられなくて無理だったけど、バジルやガーリックの味付けした芋にさらにトマトソースを付けるとか・・・美味い。

「あーあ。マヨネーズがあったら最高なんだけどなぁ」

バター味のときにしょうゆ味!と思ったけどチハロ国の調味料を扱っているのは一部の商会だけだから、ゴダール男爵領地には流通してなかった。
だったらマヨネーズ!と思ったけど、市販されているソースの種類には無かった。

「新鮮な卵が必要だからかな?」

しかも浄化して使わないと菌があってお腹を壊すんだっけ?

「卵ですか?」

いつのまにか隣に来ていたブリジット様が不思議そうな顔で聞いてきた。

「ええ。卵があれば油とお酢でソースが作れるんですけど。あー、そうだなぁ卵とか牛乳とかあったら、チーズにバターに生クリームに・・・」

もっと美味しいスイーツもできるのでは?
このゴダール男爵領地の外れに果樹があるのを見た。
そしてゴブリンの巣があった森にもいくつか果樹があった。
もしかしたら、果樹園を作ることができるのでは?

小麦が高くて主食のパン以外に使うことは気が咎めるが、瑞々しいフルーツと生クリームとかでパフェを作ったり、チーズでスイーツを作ったりできるんだけどなぁ。

「あのぅ・・・」

「はい?」

なんかブリジット様がもじもじしている。
なんだろう?

「わたくしの実家は・・・牧場でして。卵も牛乳も・・・チーズもバターもありますが?」

はっ!そうだった!

あれれ?
これって芋料理以外にも名物ができるんじゃないの?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。