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「ギ・・・ギルマス?一体、そのゴーレムみたいなふざけた人形は、なんなんですか?」
冒険者ギルドの地下にある隠し部屋に、天井から侵入したシルヴィーのゴーレムたちは、若い男の失礼な物言いに鋭く顔を向けて圧をかける。
「うっ・・・!」
「せっかく、助けにきてくれたこの子たちに、失礼なことを言ったお前が悪い。とうとう、待っていた外からの連絡だ。ギルドの仲間ではないが、ガストンのサインもあるから信用して大丈夫だろう」
ぴらっと読んでいた手紙を、ゴーレムに凄まれて顔色を悪くした、まだ若いヒラ職員に渡す。
「ええ・・・町の者がどうにかできる相手ですか?・・・て、Aランク冒険者がひとりじゃないですか?」
ぎゅむと眉間にシワを寄せて、難しい顔をするヒラ職員。
「・・・これ、本当ですか?」
後ろからこっそり手紙を盗み読んでいたサブマスが、ギルマスに確認をとる。
「ああ。確かにAランク冒険者ひとりで状況を変えることはできないかもしれないが・・・。エルフのアルベールなら」
「このゴーレムが証明してますが、我々がこの部屋から脱出できれば、ナタンたちを捕らえることも可能です。いささか乱暴な手段を取りますが」
ギルマスは、ニヤリと口元を歪めて楽しそうに言う。
「あぁん?構うものか。ギルドに対しての攻撃と判断して、迎撃するだけだ。それに・・・ナタンは男爵位を継ぐ立場じゃない。正統な跡継ぎがいるからな!」
ギルマスは、一緒に捕らわれた職員と一部の冒険者たちの顔をひとりひとり見つめ、脱出のための下準備に入る。
ヒラ職員はチラリと上、天井を見上げた。
「ふぅーっ、やっとですね・・・」
ヴィーたちは冒険者ギルドに正面と裏手から突入しナタンの仲間たちを攪乱し、その間に隠し部屋の天井からギルマスたちを脱出させる作戦を立てた。
ゴーレムが天井ならすり抜けられたので、できるかどうか分からない施錠している魔道具の解除よりも、天井に穴を開けて梯子を垂らす単純な方法をとることにしたのだ。
隠し部屋には外の音は聞こえないし、外に音を伝える術もない。
ただ静かにそのときを待つだけ。
ぴょこん!ぴょこん!
大人しくしていた2体のゴーレムが小さく跳ねた。
ちょこちょこと柱を昇って、よじよじと天井を這っていく。
部屋にいる囚われ人は、じぃーっとその様子を見つめている。
ぱらり・・・。
天井から、ぱらぱらと土塊が落ち始めた。
「リュシアン!ルネ!」
セヴランは焦った。
そういえば、ヴィーさんに「セヴランはルネの護衛でゴダール男爵邸の方をよろしくね」と命じられたが、細かい作戦を知らされていなかった。
でも、これは違うと確信を持って言える。
なんてたって、ゴダール男爵邸は敵の本拠地だし、人質の男爵夫人が捕らわれている。
慎重に慎重を重ねて行動するべきだ。
なのに・・・。
「なんで正面突破していくんですかーっ!!」
リュシアンとルネは男爵邸の門を蹴り上げて破壊し、「うおおおおっ!」と雄叫びまで上げて一直線に走って行く。
侵入したのが、ナタンの仲間たちにバレバレである。
焦ったセヴランはふたりを追いかけようとして、隣の少年の存在に気づき、はっ、と走り出そうとした足を止める。
「ああああぁぁ。どうしたらいいんだ。こんな状況で、もし人質に何かあったら・・・。あああ」
「・・・大丈夫ですか?」
頭を抱え込んでしゃがみ込んだダメな大人に、エリク君は優しく声を掛ける。
正直、ナタンたちのいる所に突撃するつもりだったので、エリク君としてはリュシアンとルネの行動に不安はない。
むしろ、急に叫びだしてパニック状態になった、ちょっと弱そうな狐獣人のお兄さんが心配だった。
「えっと・・・。町の人も結構強い人がいるし大丈夫ですよ?おばさんたちは本邸に行かないでブリジット様がいる離れに向かいましたし・・・。僕たちもそっちに行きましょう?」
蹲ったセヴランの腕を掴んで立たせようとするエリク君。
「・・・そう、ですね。もう、私は知りません。あとはあの脳筋ふたりがゴダール男爵邸を制圧するのを信じるしかないです。私たちは離れに行って男爵夫人たちを保護したら、すぐに戻ってきましょう」
「・・・・・・。そ、そうですね」
あ、この人は戦わないんだ、と思ったエリク君でした。
ガストンさんたち鍛冶師仲間は裏手から、鍵がかかっていようがとにかく力技で突入するぜ!とばかりに、その小さな体には不釣り合いな大槌を振り上げて走って行った。
正面には元冒険者のおじさまが、剣や大剣を手に扉をぶち破って突入して行った。
ま、正面組にはリオネルが参加しているから、戦力的には問題はないでしょう。
くふふふ。
引退した冒険者のおじさまたちも、それなりに体調は万全だろうし、ね!
「ヴィー・・・。あなた、何かしましたね?」
うっ!秒でバレたし・・・!
「・・・いや、元冒険者のおじさまたちって、ほら、怪我して引退した人が多かったからぁ・・・。えー、ポーション飲ませました」
怖いからアルベールから顔を背けて、早口で言った。
だって、足か痛いとか腕の筋がちょっととか、それこそ歳で腰が痛いとかいうおじさまばっかりなんだもん。
ちょっと戦力に不安があったから、昨日ローズさんの店に集合してもらったときのお茶に・・・、私お手製の、効き目のいい奴を1~2滴垂らして・・・。
さっき、おじさまたちと合流したら、皆が口々に「体が軽い」とか「腕が上がるようになった」とか「走れるぜ!」とか言っていたので、ポーションの効力が抜群だなぁと感心していたのでした。
「ふぅ。しょうがない。場合が場合ですし。でも、もうダメですよ!今度からポーションを使うときは相談してください!」
「はぁ~い」
怒られた。
ま、怒られるかなぁ?と思っていたから、そんなに凹んではいない。
「アルベール。私たちも行きましょう。ギルマスたちを解放して一気にナタンたちを倒すわよ!」
えいえいおー!と片腕を突き上げると、足元のゴーレムもおー!と片腕を突き上げていた。
アルベールは縄梯子を担ぎ、剣を抜く。
「では、行きます」
「うん!」
ギルド内から乱闘の激しさが分かる破壊音と人の叫び声が響いている。
攪乱作戦は充分だと思うけど、念のため隠蔽魔法をかけてから、さぁ、行くぞ!
冒険者ギルドの地下にある隠し部屋に、天井から侵入したシルヴィーのゴーレムたちは、若い男の失礼な物言いに鋭く顔を向けて圧をかける。
「うっ・・・!」
「せっかく、助けにきてくれたこの子たちに、失礼なことを言ったお前が悪い。とうとう、待っていた外からの連絡だ。ギルドの仲間ではないが、ガストンのサインもあるから信用して大丈夫だろう」
ぴらっと読んでいた手紙を、ゴーレムに凄まれて顔色を悪くした、まだ若いヒラ職員に渡す。
「ええ・・・町の者がどうにかできる相手ですか?・・・て、Aランク冒険者がひとりじゃないですか?」
ぎゅむと眉間にシワを寄せて、難しい顔をするヒラ職員。
「・・・これ、本当ですか?」
後ろからこっそり手紙を盗み読んでいたサブマスが、ギルマスに確認をとる。
「ああ。確かにAランク冒険者ひとりで状況を変えることはできないかもしれないが・・・。エルフのアルベールなら」
「このゴーレムが証明してますが、我々がこの部屋から脱出できれば、ナタンたちを捕らえることも可能です。いささか乱暴な手段を取りますが」
ギルマスは、ニヤリと口元を歪めて楽しそうに言う。
「あぁん?構うものか。ギルドに対しての攻撃と判断して、迎撃するだけだ。それに・・・ナタンは男爵位を継ぐ立場じゃない。正統な跡継ぎがいるからな!」
ギルマスは、一緒に捕らわれた職員と一部の冒険者たちの顔をひとりひとり見つめ、脱出のための下準備に入る。
ヒラ職員はチラリと上、天井を見上げた。
「ふぅーっ、やっとですね・・・」
ヴィーたちは冒険者ギルドに正面と裏手から突入しナタンの仲間たちを攪乱し、その間に隠し部屋の天井からギルマスたちを脱出させる作戦を立てた。
ゴーレムが天井ならすり抜けられたので、できるかどうか分からない施錠している魔道具の解除よりも、天井に穴を開けて梯子を垂らす単純な方法をとることにしたのだ。
隠し部屋には外の音は聞こえないし、外に音を伝える術もない。
ただ静かにそのときを待つだけ。
ぴょこん!ぴょこん!
大人しくしていた2体のゴーレムが小さく跳ねた。
ちょこちょこと柱を昇って、よじよじと天井を這っていく。
部屋にいる囚われ人は、じぃーっとその様子を見つめている。
ぱらり・・・。
天井から、ぱらぱらと土塊が落ち始めた。
「リュシアン!ルネ!」
セヴランは焦った。
そういえば、ヴィーさんに「セヴランはルネの護衛でゴダール男爵邸の方をよろしくね」と命じられたが、細かい作戦を知らされていなかった。
でも、これは違うと確信を持って言える。
なんてたって、ゴダール男爵邸は敵の本拠地だし、人質の男爵夫人が捕らわれている。
慎重に慎重を重ねて行動するべきだ。
なのに・・・。
「なんで正面突破していくんですかーっ!!」
リュシアンとルネは男爵邸の門を蹴り上げて破壊し、「うおおおおっ!」と雄叫びまで上げて一直線に走って行く。
侵入したのが、ナタンの仲間たちにバレバレである。
焦ったセヴランはふたりを追いかけようとして、隣の少年の存在に気づき、はっ、と走り出そうとした足を止める。
「ああああぁぁ。どうしたらいいんだ。こんな状況で、もし人質に何かあったら・・・。あああ」
「・・・大丈夫ですか?」
頭を抱え込んでしゃがみ込んだダメな大人に、エリク君は優しく声を掛ける。
正直、ナタンたちのいる所に突撃するつもりだったので、エリク君としてはリュシアンとルネの行動に不安はない。
むしろ、急に叫びだしてパニック状態になった、ちょっと弱そうな狐獣人のお兄さんが心配だった。
「えっと・・・。町の人も結構強い人がいるし大丈夫ですよ?おばさんたちは本邸に行かないでブリジット様がいる離れに向かいましたし・・・。僕たちもそっちに行きましょう?」
蹲ったセヴランの腕を掴んで立たせようとするエリク君。
「・・・そう、ですね。もう、私は知りません。あとはあの脳筋ふたりがゴダール男爵邸を制圧するのを信じるしかないです。私たちは離れに行って男爵夫人たちを保護したら、すぐに戻ってきましょう」
「・・・・・・。そ、そうですね」
あ、この人は戦わないんだ、と思ったエリク君でした。
ガストンさんたち鍛冶師仲間は裏手から、鍵がかかっていようがとにかく力技で突入するぜ!とばかりに、その小さな体には不釣り合いな大槌を振り上げて走って行った。
正面には元冒険者のおじさまが、剣や大剣を手に扉をぶち破って突入して行った。
ま、正面組にはリオネルが参加しているから、戦力的には問題はないでしょう。
くふふふ。
引退した冒険者のおじさまたちも、それなりに体調は万全だろうし、ね!
「ヴィー・・・。あなた、何かしましたね?」
うっ!秒でバレたし・・・!
「・・・いや、元冒険者のおじさまたちって、ほら、怪我して引退した人が多かったからぁ・・・。えー、ポーション飲ませました」
怖いからアルベールから顔を背けて、早口で言った。
だって、足か痛いとか腕の筋がちょっととか、それこそ歳で腰が痛いとかいうおじさまばっかりなんだもん。
ちょっと戦力に不安があったから、昨日ローズさんの店に集合してもらったときのお茶に・・・、私お手製の、効き目のいい奴を1~2滴垂らして・・・。
さっき、おじさまたちと合流したら、皆が口々に「体が軽い」とか「腕が上がるようになった」とか「走れるぜ!」とか言っていたので、ポーションの効力が抜群だなぁと感心していたのでした。
「ふぅ。しょうがない。場合が場合ですし。でも、もうダメですよ!今度からポーションを使うときは相談してください!」
「はぁ~い」
怒られた。
ま、怒られるかなぁ?と思っていたから、そんなに凹んではいない。
「アルベール。私たちも行きましょう。ギルマスたちを解放して一気にナタンたちを倒すわよ!」
えいえいおー!と片腕を突き上げると、足元のゴーレムもおー!と片腕を突き上げていた。
アルベールは縄梯子を担ぎ、剣を抜く。
「では、行きます」
「うん!」
ギルド内から乱闘の激しさが分かる破壊音と人の叫び声が響いている。
攪乱作戦は充分だと思うけど、念のため隠蔽魔法をかけてから、さぁ、行くぞ!
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