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初級ダンジョン 探索編
厳しい指導が入りました!
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ハルトムートさんからの厳しいご指導を受けてなんとか初級ダンジョンの地下十階をクリアして、休憩スペースで昼食休憩を取ったあと、転移陣で再び地下十階の階段までやってきました。
ここからは未知の階層です。
「こっからは二足歩行の魔物が多くなる。ま、いわゆるゴブリンだ」
トントンと右手に持っている剣で肩を叩きながらハルトムートさんが教えてくれた情報に、ピクリと眉を動かすオスカーさん。
彼の目には、ぼくを心配する色がありありと浮かんでいます。
「大丈夫か?」
みんなに聞こえないような小さい声でぼくを窺うオスカーさんに、ニッコリ笑ってしっかりと頷いた。
「はい。大丈夫です」
ぼくは、もぐりの乗合馬車に乗っているときにゴブリンに襲われて記憶を失ってしまった……らしい。
とにかく記憶がないから、襲われた記憶も恐怖心もないので、ゴブリンを見ても「嫌だな」と思うだけです。
「クルト。お前、ゴブリンつーか、二足歩行の魔物を倒したことあるか?」
ハルトムートさんの質問に、ぼくは少し考えたあと首を左右に振りました。
「そうか……。あいつらの相手は慣れないと、ちとキツイかもな」
ぼくはコテリと首を傾げます。
「とにかく、やっみろ。ダメでもやってれば馴れるだろうし」
そう言うとハルトムートさんはぼくの頭をぐしゃぐしゃに掻き乱して、笑いながら階段を下りて行きました。
もうっ!
ぼくの乱れた髪はオスカーさんが優しく手櫛で直してくれました。
「ほら、そっちに二匹行ったぞ」
「はいはい」
ハルトムートさんの戦い方は鮮やかですごいの一言ですっ!
両手に持った双剣の刃を交差させたかと思えば、ぴょんと跳躍して魔物の群れに襲いかかりました。
瞬時に何体も倒し、壁を使ってゴブリンの頭の上を越えつつ一閃、クルクルとアクロバットな動きをしながら左右のゴブリンを斬り倒す。
瞬きするほどの短い時間で、バタバタと通路に集まっていたゴブリンの群れが全滅していた。
「あー、鈍ってるなぁ」
ハルトムートさんは自分の肩をコキコキさせて、不満そうに呟く。
「いやいや、ハルトのおじさん。それだけ動けて鈍ってるはないわー」
ビアンカさんと同意見のぼくは、うんうんと頷いてみせる。
倒したゴブリンの体はすでにダンジョンに吸収されてなくなっていて、ドロップアイテムもない。
ゴブリンは倒しても何も残さない、本当にハズレのモンスターなのだ。
「でも、これからゴブリンはうじゃうじゃ出るぞ。こいつら強くないけど数だけは多いからな」
そして臭いと鼻を押さえるハルトムートさんだけど、クンクン嗅いでもそんなに匂わないと思う。
オスカーさんが言うには、実際のゴブリンは離れた場所にいても匂うそうで、倒すときに返り血が付くとそれはそれは大変だそうです。
ダンジョン内のゴブリンは倒してもすぐに消えるからか、匂いはそこまで酷くないとか。
ハルトムートさんは獣人だから、匂いに敏感なんですね。
「ほら、次だぞ」
そんなに通路を進まない内に、次のゴブリンの群れがぼくたちに襲いかかってきました。
「クルト。数を減らせ」
「はい」
手を前に出して【ウォーターボール】と唱えると、小さな水の塊が出現し高速で回転しながらゴブリンの群れへ突っ込んでいく。
……たぶん。
「だーかーらー、目を瞑るなっと言ってんだろうがぁ」
「うわわわわっ」
ハルトムートさんの太い指で無理やり両目を開けられました。
「いだい、いだい」
「うるせ。このままもう一度だ」
ひぃーっ、と思いながらも【ウォーターボール】と。
ビュルルルルと唸るような音をさせて水の塊が目の前のゴブリンの胸を貫き、後ろのゴブリンのお腹に命中する。
「う、わぁ」
あんまり見たくない情景です。
「すぐ消える」
ハルトムートさんの言う通り、がっくりとゴブリンの体が沈み込むとすうーっとダンジョンの中へと消えていきました。
「次、目を瞑ったら帰りは馬車じゃなく走って帰ってこい」
「ええーっ!」
無理なこと言わないでくださいよー。
もちろん、必死に目を開けて魔法を使いましたよ?
みんなもハルトムートさんに怒られながら、襲ってくるゴブリンを倒していきます。
弱いから苦もなく倒すことはできるけど、数を多くてうんざりしてきました。
こんなにいっぱいいると、やっぱり臭い匂いがするような気もしてきて、ますます気分が下がります。
「ほら、気を取り直せ。ボス部屋だぞ」
いつの間にかぼくたちは初級ダンジョンの最下層、地下十五階に辿り着いていたみたいです。
「ドキドキします」
「ん? たいしたボスじゃねぇぞ。せいぜいゴブリンナイトかゴブリンメイジが混ざっているぐらいだ」
いえいえ、そうではなく。
ハルトムートさん以外のみんなが、このボス部屋で出るはずのアレに期待しているのです。
そう、ハズレドロップを!
「今回は何かしら」
「……甘い」
「肉は確保してあるからな、楽しみだ」
うん、ボス部屋アタック前の冒険者のセリフじゃありませんよね。
でもぼくも楽しみだし、ボス部屋なら鞄から出て戦えるからレオも楽しみだよね!
ここからは未知の階層です。
「こっからは二足歩行の魔物が多くなる。ま、いわゆるゴブリンだ」
トントンと右手に持っている剣で肩を叩きながらハルトムートさんが教えてくれた情報に、ピクリと眉を動かすオスカーさん。
彼の目には、ぼくを心配する色がありありと浮かんでいます。
「大丈夫か?」
みんなに聞こえないような小さい声でぼくを窺うオスカーさんに、ニッコリ笑ってしっかりと頷いた。
「はい。大丈夫です」
ぼくは、もぐりの乗合馬車に乗っているときにゴブリンに襲われて記憶を失ってしまった……らしい。
とにかく記憶がないから、襲われた記憶も恐怖心もないので、ゴブリンを見ても「嫌だな」と思うだけです。
「クルト。お前、ゴブリンつーか、二足歩行の魔物を倒したことあるか?」
ハルトムートさんの質問に、ぼくは少し考えたあと首を左右に振りました。
「そうか……。あいつらの相手は慣れないと、ちとキツイかもな」
ぼくはコテリと首を傾げます。
「とにかく、やっみろ。ダメでもやってれば馴れるだろうし」
そう言うとハルトムートさんはぼくの頭をぐしゃぐしゃに掻き乱して、笑いながら階段を下りて行きました。
もうっ!
ぼくの乱れた髪はオスカーさんが優しく手櫛で直してくれました。
「ほら、そっちに二匹行ったぞ」
「はいはい」
ハルトムートさんの戦い方は鮮やかですごいの一言ですっ!
両手に持った双剣の刃を交差させたかと思えば、ぴょんと跳躍して魔物の群れに襲いかかりました。
瞬時に何体も倒し、壁を使ってゴブリンの頭の上を越えつつ一閃、クルクルとアクロバットな動きをしながら左右のゴブリンを斬り倒す。
瞬きするほどの短い時間で、バタバタと通路に集まっていたゴブリンの群れが全滅していた。
「あー、鈍ってるなぁ」
ハルトムートさんは自分の肩をコキコキさせて、不満そうに呟く。
「いやいや、ハルトのおじさん。それだけ動けて鈍ってるはないわー」
ビアンカさんと同意見のぼくは、うんうんと頷いてみせる。
倒したゴブリンの体はすでにダンジョンに吸収されてなくなっていて、ドロップアイテムもない。
ゴブリンは倒しても何も残さない、本当にハズレのモンスターなのだ。
「でも、これからゴブリンはうじゃうじゃ出るぞ。こいつら強くないけど数だけは多いからな」
そして臭いと鼻を押さえるハルトムートさんだけど、クンクン嗅いでもそんなに匂わないと思う。
オスカーさんが言うには、実際のゴブリンは離れた場所にいても匂うそうで、倒すときに返り血が付くとそれはそれは大変だそうです。
ダンジョン内のゴブリンは倒してもすぐに消えるからか、匂いはそこまで酷くないとか。
ハルトムートさんは獣人だから、匂いに敏感なんですね。
「ほら、次だぞ」
そんなに通路を進まない内に、次のゴブリンの群れがぼくたちに襲いかかってきました。
「クルト。数を減らせ」
「はい」
手を前に出して【ウォーターボール】と唱えると、小さな水の塊が出現し高速で回転しながらゴブリンの群れへ突っ込んでいく。
……たぶん。
「だーかーらー、目を瞑るなっと言ってんだろうがぁ」
「うわわわわっ」
ハルトムートさんの太い指で無理やり両目を開けられました。
「いだい、いだい」
「うるせ。このままもう一度だ」
ひぃーっ、と思いながらも【ウォーターボール】と。
ビュルルルルと唸るような音をさせて水の塊が目の前のゴブリンの胸を貫き、後ろのゴブリンのお腹に命中する。
「う、わぁ」
あんまり見たくない情景です。
「すぐ消える」
ハルトムートさんの言う通り、がっくりとゴブリンの体が沈み込むとすうーっとダンジョンの中へと消えていきました。
「次、目を瞑ったら帰りは馬車じゃなく走って帰ってこい」
「ええーっ!」
無理なこと言わないでくださいよー。
もちろん、必死に目を開けて魔法を使いましたよ?
みんなもハルトムートさんに怒られながら、襲ってくるゴブリンを倒していきます。
弱いから苦もなく倒すことはできるけど、数を多くてうんざりしてきました。
こんなにいっぱいいると、やっぱり臭い匂いがするような気もしてきて、ますます気分が下がります。
「ほら、気を取り直せ。ボス部屋だぞ」
いつの間にかぼくたちは初級ダンジョンの最下層、地下十五階に辿り着いていたみたいです。
「ドキドキします」
「ん? たいしたボスじゃねぇぞ。せいぜいゴブリンナイトかゴブリンメイジが混ざっているぐらいだ」
いえいえ、そうではなく。
ハルトムートさん以外のみんなが、このボス部屋で出るはずのアレに期待しているのです。
そう、ハズレドロップを!
「今回は何かしら」
「……甘い」
「肉は確保してあるからな、楽しみだ」
うん、ボス部屋アタック前の冒険者のセリフじゃありませんよね。
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