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ギルド
テイマースキル
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寝泊まりしていた、ただ広いだけの部屋がキレイになりました。
天井も壁も床も埃ひとつなく、カーテンは開けた窓からの風に揺れても臭くないし真っ黒だったレースのカーテンも真っ白になりました。
でも、あちこちほつれているのはそのままです。
絨緞も色が鮮やかに蘇って、足踏みしてもモワンと埃が舞うこともありません。
ちょっと、フワフワになった気もします。
残念だったのは、窓磨きも成功したけど部屋側の窓だけキレイになりました。
そう、外側は真っ黒に汚れたままなので、窓を閉めたら暗い部屋になってしまいます。
「……そして、ぼくの魔力もまだまだ残っていそう」
魔力枯渇に怯えながらも、あちこちに魔法をかけまくって掃除したけど、あんまり魔力が減った気がしない。
なんとなく気疲れは感じるけど、このままトイレ掃除とお風呂掃除までこなせそうです。
「むしろ、レオが大活躍だよね?」
レオが「呼んだ?」とぼくの顔を見る……見ていると思う、たぶん。
レオは触手を四方八方に伸ばして、ミストを噴射したりスチームを散布したり、汚れた水を体に取り込んだりした。
しかもオプションとやらの「消臭」を選択したら、「炭が不足しています」と表示されて、慌てて屋敷中を探してみつけた小さな炭の欠片をどうしたらいいのかと右往左往した。
レオがひょいとぼくの手から炭を奪って体に取り込むと、ポヨンとした体をグニャグニャと右に左にと歪ませて、そして全身から何かを吸い込み始めた。
「レ、レオーッ!」
スライムの生態なんてよく知らないから、レオに何か悪いことが起きて消滅しちゃうじゃないかと怖い思いをした。
しばらくした後、例の半透明な画面が「シュン」と出てきて、半泣きのぼくの目に入ってきたのは、消臭作業終了の文字だった。
「消……臭?」
呆然としたままレオの様子を窺えば、呑気にみょーんと体を上下に伸ばしていた。
よくわからないけど、炭を体に取り入れたレオは、匂いを消したらしい。
クンクンとカーテンの匂いを嗅いでみたけど、たしかに黴臭い匂いはキレイになくなっていた。
「レオ……お疲れさま。君ってば、すごいや!」
レオのポヨンとした体を抱き上げて、その場でクルクルと回って喜んだ。
留守番一日目の陽が暮れてゆく。
裏手の扉から裏庭に出て、ふーっと息を大きく吐く。
ぼくの足元では、茶色スライムがぐにゃりと動かないでいるけど、寝ているの?
いつもはビシビシ厳しい指導を同族にしているレオだけど、今日は茶色スライムを労わるようにポンポンと触手で撫でていた。
のんびりとした時間の中で、気持ちのいい疲労感を癒していると、裏庭のうっそりと茂った雑草の間からオスカーさんが帰ってきた!
「オスカーさん! お帰りなさいっ」
「ただいま、クルト」
半日離れていただけなのに、オスカーさんの姿が見えただけで泣きそうに嬉しい気持ちが湧き上がってきたよ。
オスカーさんの大きな手で頭を撫でられながら屋敷の中に入ると、オスカーさんの足がピタリと不自然に止まる。
「どうしました?」
「はああっ? な、なんだ、このキッチンは! え? えっ、クルト一人でこんなにキレイにしたのか?」
うわあああっ、オスカーさんがびっくりしている! ぼくたちが頑張ったお掃除に、驚いてキレイだって褒めてくれたーっ!
「はいっ。あ、でもぼくだけじゃないです。レオも手伝ってくれたんですよ」
ほらっ、とレオを両手に掴んでオスカーさんの眼の前に押し出す。
「……スライムが掃除の手伝い? なんだ、それは。いやいや、待て! レオ? レオってなんだ? も、もしかして、クルト。このスライムに名前を付けたのか?」
「はいっ。レオっていいます。かっこいいでしょ!」
満面の笑顔で答えたぼくに、オスカーさんはそのままガックリと膝から崩れ落ちた。
「え? えーっ、オスカーさん! しっかり! しっかりしてください」
なんで、そんな死んだ魚のような目でレオを見るんですか?
なんとか、大きな体のオスカーさんをキッチンのテーブルまで引き摺っていき、ガタガタの椅子に座らせる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない……。いや、待てよ。クルトはスライムに名前を付けただけなんだよな」
グイッと顔を突き出してきたオスカーさんの勢いに、二、三歩後退る。
「はい。名前を付けただけですけど」
「そ、そうか。ただ名前を付けただけだよな。そうだよな、レオ?」
レオが、オスカーさんの呼びかけにみょーんと触手を伸ばして左右に振ってみせた。
「えっ!」
「わあっ。レオ、オスカーさんに名前を呼ばれたのがわかったんだ。頭いいねー」
レオのツルツルな頭を撫でて、ムギュッと抱きしめる。
「名前に……反応した、だと?」
小声でオスカーさんが何か言ってるけど、ぼくとしてはキッチンの掃除を褒めてもらったから、次の部屋も確認してほしいんだけどなぁ。
「……クルト。そのスライムの名前を呼んでみてくれないか」
「いいですけど? レーオッ」
ぼくの声にレオはみょーんと左右から触手を伸ばして、ぼくの両頬に当ててムニムニしてくる。
「あはははっ。くすぐったいよ」
「……やっぱり、自分の名前に反応している。クルト……お前のスキルは『器用貧乏』だよな?」
「そうですよ?」
何をいまさら? ぼくのスキルは『器用貧乏』、究極の外れスキルと呼ばれているスキルですよ?
「じゃあ、なんで、なんで、テイマースキルが使えるんだーっ!」
その日、オスカーさんの悲痛な叫びが、キレイ清潔なキッチンの隅々にまで響き渡った。
天井も壁も床も埃ひとつなく、カーテンは開けた窓からの風に揺れても臭くないし真っ黒だったレースのカーテンも真っ白になりました。
でも、あちこちほつれているのはそのままです。
絨緞も色が鮮やかに蘇って、足踏みしてもモワンと埃が舞うこともありません。
ちょっと、フワフワになった気もします。
残念だったのは、窓磨きも成功したけど部屋側の窓だけキレイになりました。
そう、外側は真っ黒に汚れたままなので、窓を閉めたら暗い部屋になってしまいます。
「……そして、ぼくの魔力もまだまだ残っていそう」
魔力枯渇に怯えながらも、あちこちに魔法をかけまくって掃除したけど、あんまり魔力が減った気がしない。
なんとなく気疲れは感じるけど、このままトイレ掃除とお風呂掃除までこなせそうです。
「むしろ、レオが大活躍だよね?」
レオが「呼んだ?」とぼくの顔を見る……見ていると思う、たぶん。
レオは触手を四方八方に伸ばして、ミストを噴射したりスチームを散布したり、汚れた水を体に取り込んだりした。
しかもオプションとやらの「消臭」を選択したら、「炭が不足しています」と表示されて、慌てて屋敷中を探してみつけた小さな炭の欠片をどうしたらいいのかと右往左往した。
レオがひょいとぼくの手から炭を奪って体に取り込むと、ポヨンとした体をグニャグニャと右に左にと歪ませて、そして全身から何かを吸い込み始めた。
「レ、レオーッ!」
スライムの生態なんてよく知らないから、レオに何か悪いことが起きて消滅しちゃうじゃないかと怖い思いをした。
しばらくした後、例の半透明な画面が「シュン」と出てきて、半泣きのぼくの目に入ってきたのは、消臭作業終了の文字だった。
「消……臭?」
呆然としたままレオの様子を窺えば、呑気にみょーんと体を上下に伸ばしていた。
よくわからないけど、炭を体に取り入れたレオは、匂いを消したらしい。
クンクンとカーテンの匂いを嗅いでみたけど、たしかに黴臭い匂いはキレイになくなっていた。
「レオ……お疲れさま。君ってば、すごいや!」
レオのポヨンとした体を抱き上げて、その場でクルクルと回って喜んだ。
留守番一日目の陽が暮れてゆく。
裏手の扉から裏庭に出て、ふーっと息を大きく吐く。
ぼくの足元では、茶色スライムがぐにゃりと動かないでいるけど、寝ているの?
いつもはビシビシ厳しい指導を同族にしているレオだけど、今日は茶色スライムを労わるようにポンポンと触手で撫でていた。
のんびりとした時間の中で、気持ちのいい疲労感を癒していると、裏庭のうっそりと茂った雑草の間からオスカーさんが帰ってきた!
「オスカーさん! お帰りなさいっ」
「ただいま、クルト」
半日離れていただけなのに、オスカーさんの姿が見えただけで泣きそうに嬉しい気持ちが湧き上がってきたよ。
オスカーさんの大きな手で頭を撫でられながら屋敷の中に入ると、オスカーさんの足がピタリと不自然に止まる。
「どうしました?」
「はああっ? な、なんだ、このキッチンは! え? えっ、クルト一人でこんなにキレイにしたのか?」
うわあああっ、オスカーさんがびっくりしている! ぼくたちが頑張ったお掃除に、驚いてキレイだって褒めてくれたーっ!
「はいっ。あ、でもぼくだけじゃないです。レオも手伝ってくれたんですよ」
ほらっ、とレオを両手に掴んでオスカーさんの眼の前に押し出す。
「……スライムが掃除の手伝い? なんだ、それは。いやいや、待て! レオ? レオってなんだ? も、もしかして、クルト。このスライムに名前を付けたのか?」
「はいっ。レオっていいます。かっこいいでしょ!」
満面の笑顔で答えたぼくに、オスカーさんはそのままガックリと膝から崩れ落ちた。
「え? えーっ、オスカーさん! しっかり! しっかりしてください」
なんで、そんな死んだ魚のような目でレオを見るんですか?
なんとか、大きな体のオスカーさんをキッチンのテーブルまで引き摺っていき、ガタガタの椅子に座らせる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない……。いや、待てよ。クルトはスライムに名前を付けただけなんだよな」
グイッと顔を突き出してきたオスカーさんの勢いに、二、三歩後退る。
「はい。名前を付けただけですけど」
「そ、そうか。ただ名前を付けただけだよな。そうだよな、レオ?」
レオが、オスカーさんの呼びかけにみょーんと触手を伸ばして左右に振ってみせた。
「えっ!」
「わあっ。レオ、オスカーさんに名前を呼ばれたのがわかったんだ。頭いいねー」
レオのツルツルな頭を撫でて、ムギュッと抱きしめる。
「名前に……反応した、だと?」
小声でオスカーさんが何か言ってるけど、ぼくとしてはキッチンの掃除を褒めてもらったから、次の部屋も確認してほしいんだけどなぁ。
「……クルト。そのスライムの名前を呼んでみてくれないか」
「いいですけど? レーオッ」
ぼくの声にレオはみょーんと左右から触手を伸ばして、ぼくの両頬に当ててムニムニしてくる。
「あはははっ。くすぐったいよ」
「……やっぱり、自分の名前に反応している。クルト……お前のスキルは『器用貧乏』だよな?」
「そうですよ?」
何をいまさら? ぼくのスキルは『器用貧乏』、究極の外れスキルと呼ばれているスキルですよ?
「じゃあ、なんで、なんで、テイマースキルが使えるんだーっ!」
その日、オスカーさんの悲痛な叫びが、キレイ清潔なキッチンの隅々にまで響き渡った。
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