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未完成のクリード 6
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放課後の部活までは特に何もせずに待機するように部長からみんなに通達が出された。僕は大人しくその指示に従って大人しくしていた。というのは建前で、単純に調査に行き詰っていただけだ。
「はぁ…」
思わずため息が出る。自分の無能さが嫌になってくる。こんなんではいつ部長に見限られるか分かったもんじゃない。
仕方ない、事件の整理でもするか…。
木村君が絵羽さんに告白したのが今月の五日の事。噂が出始めたのがその二日後の七日。そして田縁君がその話を新聞部に持ってきたのが一昨日の十日のことだ。そしてその次の日に写真が掲示板に貼られたのが昨日十一日の事だ。そして今日に至る、と。引っかかるのはやはり新聞部で記事を決定した次の日に写真が張り出された点だ。今のところは偶然と考えるしか無さそうだけど…。そして次に気になるのは、今日の猿山からの呼出だ。昨日の今日でどうやって新聞部の活動を知ったんだろうか。そんな派手に調査しているわけでもあるまいし…。単純に誰かが聞き込みをしているところを聞かれたか。それが今のところ一番有力かな…。
そして絵羽さんにはずっと昔から好きな人がおり、援交なんてするとは考えにくい。というのは橋野さん曰く。他の人にとってはしていてもおかしくない、と。これに関しては確かに絵羽さんの恋愛観に触れなくてはいけない内容で、判断が付き辛い。橋野さんの意見を尊重したい所ではあるけれど、幼馴染としての願望があってもおかしくない。
うーん…。曖昧な情報だらけで確実に言えることがほとんどない状態だ。これではとてもじゃないが真相に辿り着くことなんてできない。どうすれば。
悩んだところで答えが一向に出ないまま、放課後、部室。
「お疲れ様です」
いつもの挨拶をしながら部室に入る。今日も部員は優秀なもので、全員来ていた。誰も休まないのは凄いことである。感心感心。
「皆さん揃いましたね」
ありゃ、また僕が最後か。これは先輩としていけないな。明日からは少し早めに部室に来ることにしよう。
「さて、本日のお昼ですが、生徒指導の猿山教員から今回の案件の調査の自重を命じられました」
部長が淡々と説明するのに対し、後輩はあの通達はそういうことなのかと納得していた。
「え、じゃあどうするんですか」
恐る恐るといった感じで田縁君が挙手しながらそう言った。まぁ彼が発案したのがきっかけの案件だし、彼なりに張り切っていたようだから、確かにこのまま中止というのも目覚めが悪いのだろう。僕としてもその気持ちはよく分かる。このまま絵羽さんが誤解されたままというのは頂けない。どうにかして真相を僕個人だけでも突き止め…。
「誰も中止にするとは言ってませんよ。このまま調査を続けます。何だか癪じゃないですか」
部長はあっけらかんとして言い放った。この人はそういう人だ。普段は目立たないように徹しているが、こういう事態になった時の部長は非常に頑固で梃でも動かない。猿山に自重するように言われ、余計に火が付いたと見える。
「ただ、厄介事に割く時間はありません。皆さん、調査は教員の目に入らないよう、慎重に行ってください」
僕は田縁君が小さくグッと拳を握りしめているのを見逃さなかった。
「それと、これ以上の調査は無理強いしません。内申にも響くかもしれませんしね。やらない、やりたくないという
人は知らぬ存ぜぬを通してくださって構いませんので」
内申だったら今年受験生である部長が一番不味いのではないだろうか。
そんなくだらないことばかり考えていると、気が付けば部員は部長と田縁君と僕しか残っていなかった。他の後輩達は入学して早々に教員に目を付けられることを嫌ったのだろう。実に賢明な判断といえよう。
今日はその通達だけで部活は終了となった。
無理もない。今日は、調査はしない様に部長から通達があったのだから、それを無視して調査をするような愚か者はいなかった。つまり、進展は無しという事だ。
「沢藤君、この後時間ありますか」
「デートのお誘いですか?喜んで」
いつも通りのやり取りのつもりだったのだが。
「えぇ、そうですね。デートのお誘い……。そう言って差し支えないでしょうね」
……マジかよ。普段だったら「私とデートできて光栄でしょう?ま、違いますが」とかそんな感じで返ってくると思っていたのに。何だかこう、普段と違うノリで返ってくるとやりにくさを感じてしまう。それにしてもどうしたのだろう。
「ちょっと、お茶でもしませんか?」
これは確かに、デートのお誘いだ。
学生の特権、放課後の制服でのデートというのは思春期なら誰もが一度はしてみたいと思うものだろう。…え?しない?僕はしたぞ。しかもそれが実現し、その相手が何と、美人と評判(僕の中では)の部長がお相手となると気合が入るってものですよ。
「一度、行ってみたい喫茶店があるのですが、どうも一人では入りづらい雰囲気のお店でして」
部長の言わんとすることは非常に分かる。完全にカップルを対象としたようなデザインのお店に独りで入るのは非常に勇気が必要だ。入った後の店員や先に入店していた客の、こいつ独りで来たの?という異端児を見るあの目。考えただけでもゾッとするね。まぁ、世の中にはそういうのが一切平気な人間もいるらしいけど、目立つのが嫌いな部長は、例に漏れず、苦手のようだ。可愛らしい。
「ここです」
学校から出て三十分程歩いただろうか。喫茶店「りふる」と可愛らしく平仮名で看板に書いてあった。見た目はモダンでシックな感じのデザインで、カップルというよりは落ち着いた大人が好みそうな雰囲気のお店だった。こういうお店だと、常連がいて、初見の人間が来ると睨んでくるようにこっちを見てくる。成程、確かに独りでは入りにくい雰囲気のお店だ。
部長が先陣を切って入り口の戸を押し開いた。戸の上部に付いているベルがカランカランと軽い音で僕たちの入店を知らせる。中には僕の予想通り中年から初老ぐらいの男性が三名程いた。しかし予想通りではなかったのは、こっちを睨んでくる人間はいなかったという点だった。
適当な席に案内された僕達はとりあえずコーヒーを、部長はストレートティーを注文した。
「あれ、部長、レモンティーじゃないんですか?」
「まずはストレートでお店の味を図るものですよ」
拘りが強いことで。
それから部長はメニューと睨めっこをしていた。開いているページはケーキの一覧が載っていた。部長チョコレイトを常備しているし、ひょっとしたら甘い物に目がないのかもしれない。お菓子を前に目をキラキラと輝かしている部長を想像してみると、それはもうギャップが凄かった。
「なんですか、その眼は。罵倒されたいのですか」
理不尽な暴力が僕を襲う。いや、強ち理不尽でもないか。
「甘い物好きなんですか?」
「甘い物……。そうですね。厳密に言うと洋菓子が好きなんです」
部長も女の子なんだなぁ。
部長が未だにメニューと睨めっこしている間に先に注文していたコーヒーとストレートティーが運ばれてきた。
「レモンタルト一つ」
部長がついでにとケーキを注文した。甘い物に加えてレモンも好きなのかもしれない。
では僕も部長に倣って、コーヒーをブラックで頂いてこのお店の味とやらを図らせてもらおうではないか。
「……」
砂糖とミルクを一つずつ入れることにした。まだ僕はどうやら大人になり切れていないらしい。
部長はストレートティーになにも入れずにそのまま一口。
「ダージリンですね。良い茶葉を使っているようですし、温度も適温。蒸し方も合った蒸し方をしています。うん、美味です」
美味って言う人初めて見た…。
それより部長、結構味に煩いんだな。一口飲んだだけでそんなに分かるものなのか。僕とは大違いだなぁ。
「うん、やっぱり私が目を付けただけあります。これは常連になってしまうかもしれません」
部長は楽しそうだ。てっきりお茶に託けて事件の話でもするのかと思っていたが、今日は本当に頭を休めるつもりだったらしい。
ちなみに僕は家が真逆の方向なので常連になるのは難しそうだ。部長のお誘いがあれば来るかもだけど。でも今日僕が誘われたのは、初見で入りづらいからというだけだから二度と誘われることはないだろう。残念。
「そういえば部長」
「何でしょう。今日はもう事件の話をするつもりはありませんよ」
「そうではないですよ。ただの世間話です」
今日部活で部長が言っていた、「内申」という単語を思い出しながら部長に聞いてみた。
「部長、進路ってどうするんですか?」
確かにまだ五月。受験本番という気持ちは弱いかもしれないが、考える人は考えているだろう。
「進学しますよ。まだ大学は決めてはいませんが、家から通える範囲で進学するつもりです」
意外と部長は受験に対して暢気に構えているようだった。多くの人はとっくに大学なんて決めて、それに向けて準備しているものではないのだろうか。
かくいう僕も進路調査票の提出に困っているところなんだけどね。周りのクラスメイト達は進路調査票が配られた次の日は提出していた。未提出なのは僕含めて少数派だった。特にやりたい事や将来の夢がない僕はなんとなく、部長と同じ大学にでも進もうかな、なんて考えたのだ。部長の事大好きか、僕。
「意外と新聞作りが楽しいので、そっち方面もありかもですね」
ボソリと部長が漏らした。意外や意外。部長楽しんでたのか。嫌々やっているのかと思っていましたごめんなさい。
「嫌だったら部長なんかやらずに新聞部辞めてますよ」
確かに、ごもっともで。
「部長は将来やりたい事ってあるんですか?」
「どうしたんですか、さっきから急に」
「いえ、なんとなく」
本当になんとなくでしかない。自分の進路の参考になればな、程度に考えて聞いただけのことだった。決して部長の進路を憶測しようだなんて考えてないよ、うん。本当だとも。神に誓おう。無神論者だけども。
そんなくだらない誓いを信じていない神にしているところでレモンタルトが運ばれてきた。そのレモンタルトを、幼女の様に目を輝かせて見ている部長。本当に今日はギャップの塊だ。
「んー、美味しいです」
やっぱり部長も女の子なんだよなぁ…。
「さっきから失礼な事ばかり考えてませんか」
さっきと声色が違いすぎませんか。怖いんですが。
「それにしてもこういう喫茶店なら女同士の方が良くありませんか?」
「去年、あんな事があったのに私にお友達がいるとでも?」
「……」
何も言い返せなかった。去年、ある事件が起きた。そこそこ騒ぎが大きく、部長に友達がいなくなる程度には大きな事件があった。
「私のお友達と呼べる存在は沢藤君ぐらいでしょうね」
レモンタルトを頬張りながら言ったのだから恐らく何の意図もなく率直に思ったことを言ったのだろう。だから気にするだけ無駄だ。でも、でも…。
(思春期真っ只中の男子高校生にそんなん言ったら勘違いされるよ…)
良かったですね、部長。僕の理性が逞しくて。
「部長って僕の事好きなんですか」
全く理性は逞しくなかった。
「は?」
今までの中で最高に冷たい声と目線を頂きました。コーヒーで温まることにしよう。
たっぷりと一時間ほどレモンタルトとストレートティーを堪能した部長が、「今日は付き合ってくれてありがとう」といって会計はもってくれた。男としては格好付けて奢るぐらいの気概を見せたかったのだが如何せん、財布が寂しかったのだ。
部長とは「りふる」を出てすぐに別れた。帰路につく頃には夕日は半分ほどしずんでおり、辺りは暗くなってきていた。
学校に停めたままの自転車を取りに一度学校に戻り、学校からは自転車で家に帰る。流石に五月といえど、太陽も沈んでしまえば少し冷える。そこに自転車を漕ぐことによって起きる向かい風が余計に肌を冷やした。
冷たい風に吹かれながら、部長の事を考えていた。去年の一件からある程度、友達以上には部長の事は知っているつもりだ。踏み込んだ事情も聞いた。部長の抱えている闇にも触れた。それでも部長は一見しただけでは分からない程度に「人として」生きている。僕の最も尊敬する人間だ。その部長が今日は非常に、可愛らしい一面を見せた。ケーキと紅茶に目を輝かせ、嬉しそうに頬張り、喜びながら飲むその姿は一つ歳が上とは思えない愛らしさを持っていた。
(ひょっとしたら、僕は、部長を偏見していたのかもしれない)
去年、部長は非常に恐ろしい一面を僕に見せた。復讐に燃え、果たすために狡猾な一面を見せた、あの「復讐の鬼」とも呼ぶべき狂気に満ちたあの目。思い出すだけでもゾッとする。あれ以来部長だけは絶対に敵には回すまいと心に誓った。
だがどうだろうか。それ自体が偏見ではなかろうか。誰しも許せない何かを持っており、去年は偶々それが起きてしまっただけではないのだろうか。本当の部長は非常に女の子らしい女の子なのではないだろうか。人というのは非常に複雑怪奇で何とも面倒臭い生き物なのだろうか。
そんなことを考えている内に愛しの我が家に着いた。ただいま、といつもと変わら繰り返しをすると、当然いつもと変わらぬ、おかえり、と母親から返ってきた。家にはでデミグラスソースの匂いがした。ふむ、今日の晩御飯はミートスパゲッティか。
「あれ?ハンバーグ?」
部屋で少しばかりゴロゴロした後、ダイニングから母親にご飯ができたと呼ばれ、食卓についたところ、予想が外れていると思い知らされた。
「嫌だった?」
「あぁ、ううん、そうじゃないよ。ミートスパゲッティかと思ったから」
ハンバーグだけど、煮込みハンバーグだった。うん、確かにこれならデミグラスソースも使うね。
「美味しいよ」
ソースの濃い味に、肉汁がとても合っていた。
さて、晩御飯を食べた後、風呂に入り、少しばかり家族と団欒した後に自分の部屋に戻る。そして考え事。調べ物。といっても事件に関する新しい情報が無いかのチェックだ。それも、あの裏掲示板を見るだけ。どうやら生徒諸君は段々と絵羽さんの事件に関する関心が薄れてきたのか、また、事件前の混沌とした記事ばかりになっていた。そんな中で嫌に目についたのが、猿山の悪口の記事だ。自分も今日猿山に関わったせいか、自然と目が向いてしまう。
猿山って女子生徒にセクハラしているのか…。なんだ、性的な目で見られているという被害妄想か。男子も便乗している。よほど嫌われているんだなぁ…。
待て待て。事件に関係ないじゃないか。何をしているんだ僕は。まぁ確かに僕も好意的にはなれないけども。気持ちも分かるけども。ネットってこうして人から時間を奪っていくんだな。
これ以上見ていても得られるものは何もなく、そっとパソコンを閉じることにした。そういえば古典で課題が出ているんだった。それを片付けなくちゃ。仕方なく机に座り、古典の課題のプリントと睨み合うことになった。お願いだから日本語を話してほしいと切実に願う。日本語だけども。何なんだ、ありおりはべりいまそかりとか。訳が分からないよ。
何とか課題のプリントを終わらせ、ベッドに潜り込んだのは時計の針がてっぺんに上りそうになった時だった。どうも僕は古典が苦手のようだ。
欠伸をしながら登校していると暑さも本格的になってきたのを肌で感じる。いやな季節になってきたもんだね。暑いのよりは寒い方が遥かにいいね。しかし夏の前には梅雨が待ち構えているのも、僕的には嫌でしょうがない。あのジメっとした暑さが衣類を肌にくっつかせ、服の中を蒸させる。とても不愉快な暑さだ。
木々も緑が強くなっているのを見て、植物は元気だなぁとかそんなくだらないことばかり考えていた。
今日は何か、進展はないものだろうか。
「はぁ…」
思わずため息が出る。自分の無能さが嫌になってくる。こんなんではいつ部長に見限られるか分かったもんじゃない。
仕方ない、事件の整理でもするか…。
木村君が絵羽さんに告白したのが今月の五日の事。噂が出始めたのがその二日後の七日。そして田縁君がその話を新聞部に持ってきたのが一昨日の十日のことだ。そしてその次の日に写真が掲示板に貼られたのが昨日十一日の事だ。そして今日に至る、と。引っかかるのはやはり新聞部で記事を決定した次の日に写真が張り出された点だ。今のところは偶然と考えるしか無さそうだけど…。そして次に気になるのは、今日の猿山からの呼出だ。昨日の今日でどうやって新聞部の活動を知ったんだろうか。そんな派手に調査しているわけでもあるまいし…。単純に誰かが聞き込みをしているところを聞かれたか。それが今のところ一番有力かな…。
そして絵羽さんにはずっと昔から好きな人がおり、援交なんてするとは考えにくい。というのは橋野さん曰く。他の人にとってはしていてもおかしくない、と。これに関しては確かに絵羽さんの恋愛観に触れなくてはいけない内容で、判断が付き辛い。橋野さんの意見を尊重したい所ではあるけれど、幼馴染としての願望があってもおかしくない。
うーん…。曖昧な情報だらけで確実に言えることがほとんどない状態だ。これではとてもじゃないが真相に辿り着くことなんてできない。どうすれば。
悩んだところで答えが一向に出ないまま、放課後、部室。
「お疲れ様です」
いつもの挨拶をしながら部室に入る。今日も部員は優秀なもので、全員来ていた。誰も休まないのは凄いことである。感心感心。
「皆さん揃いましたね」
ありゃ、また僕が最後か。これは先輩としていけないな。明日からは少し早めに部室に来ることにしよう。
「さて、本日のお昼ですが、生徒指導の猿山教員から今回の案件の調査の自重を命じられました」
部長が淡々と説明するのに対し、後輩はあの通達はそういうことなのかと納得していた。
「え、じゃあどうするんですか」
恐る恐るといった感じで田縁君が挙手しながらそう言った。まぁ彼が発案したのがきっかけの案件だし、彼なりに張り切っていたようだから、確かにこのまま中止というのも目覚めが悪いのだろう。僕としてもその気持ちはよく分かる。このまま絵羽さんが誤解されたままというのは頂けない。どうにかして真相を僕個人だけでも突き止め…。
「誰も中止にするとは言ってませんよ。このまま調査を続けます。何だか癪じゃないですか」
部長はあっけらかんとして言い放った。この人はそういう人だ。普段は目立たないように徹しているが、こういう事態になった時の部長は非常に頑固で梃でも動かない。猿山に自重するように言われ、余計に火が付いたと見える。
「ただ、厄介事に割く時間はありません。皆さん、調査は教員の目に入らないよう、慎重に行ってください」
僕は田縁君が小さくグッと拳を握りしめているのを見逃さなかった。
「それと、これ以上の調査は無理強いしません。内申にも響くかもしれませんしね。やらない、やりたくないという
人は知らぬ存ぜぬを通してくださって構いませんので」
内申だったら今年受験生である部長が一番不味いのではないだろうか。
そんなくだらないことばかり考えていると、気が付けば部員は部長と田縁君と僕しか残っていなかった。他の後輩達は入学して早々に教員に目を付けられることを嫌ったのだろう。実に賢明な判断といえよう。
今日はその通達だけで部活は終了となった。
無理もない。今日は、調査はしない様に部長から通達があったのだから、それを無視して調査をするような愚か者はいなかった。つまり、進展は無しという事だ。
「沢藤君、この後時間ありますか」
「デートのお誘いですか?喜んで」
いつも通りのやり取りのつもりだったのだが。
「えぇ、そうですね。デートのお誘い……。そう言って差し支えないでしょうね」
……マジかよ。普段だったら「私とデートできて光栄でしょう?ま、違いますが」とかそんな感じで返ってくると思っていたのに。何だかこう、普段と違うノリで返ってくるとやりにくさを感じてしまう。それにしてもどうしたのだろう。
「ちょっと、お茶でもしませんか?」
これは確かに、デートのお誘いだ。
学生の特権、放課後の制服でのデートというのは思春期なら誰もが一度はしてみたいと思うものだろう。…え?しない?僕はしたぞ。しかもそれが実現し、その相手が何と、美人と評判(僕の中では)の部長がお相手となると気合が入るってものですよ。
「一度、行ってみたい喫茶店があるのですが、どうも一人では入りづらい雰囲気のお店でして」
部長の言わんとすることは非常に分かる。完全にカップルを対象としたようなデザインのお店に独りで入るのは非常に勇気が必要だ。入った後の店員や先に入店していた客の、こいつ独りで来たの?という異端児を見るあの目。考えただけでもゾッとするね。まぁ、世の中にはそういうのが一切平気な人間もいるらしいけど、目立つのが嫌いな部長は、例に漏れず、苦手のようだ。可愛らしい。
「ここです」
学校から出て三十分程歩いただろうか。喫茶店「りふる」と可愛らしく平仮名で看板に書いてあった。見た目はモダンでシックな感じのデザインで、カップルというよりは落ち着いた大人が好みそうな雰囲気のお店だった。こういうお店だと、常連がいて、初見の人間が来ると睨んでくるようにこっちを見てくる。成程、確かに独りでは入りにくい雰囲気のお店だ。
部長が先陣を切って入り口の戸を押し開いた。戸の上部に付いているベルがカランカランと軽い音で僕たちの入店を知らせる。中には僕の予想通り中年から初老ぐらいの男性が三名程いた。しかし予想通りではなかったのは、こっちを睨んでくる人間はいなかったという点だった。
適当な席に案内された僕達はとりあえずコーヒーを、部長はストレートティーを注文した。
「あれ、部長、レモンティーじゃないんですか?」
「まずはストレートでお店の味を図るものですよ」
拘りが強いことで。
それから部長はメニューと睨めっこをしていた。開いているページはケーキの一覧が載っていた。部長チョコレイトを常備しているし、ひょっとしたら甘い物に目がないのかもしれない。お菓子を前に目をキラキラと輝かしている部長を想像してみると、それはもうギャップが凄かった。
「なんですか、その眼は。罵倒されたいのですか」
理不尽な暴力が僕を襲う。いや、強ち理不尽でもないか。
「甘い物好きなんですか?」
「甘い物……。そうですね。厳密に言うと洋菓子が好きなんです」
部長も女の子なんだなぁ。
部長が未だにメニューと睨めっこしている間に先に注文していたコーヒーとストレートティーが運ばれてきた。
「レモンタルト一つ」
部長がついでにとケーキを注文した。甘い物に加えてレモンも好きなのかもしれない。
では僕も部長に倣って、コーヒーをブラックで頂いてこのお店の味とやらを図らせてもらおうではないか。
「……」
砂糖とミルクを一つずつ入れることにした。まだ僕はどうやら大人になり切れていないらしい。
部長はストレートティーになにも入れずにそのまま一口。
「ダージリンですね。良い茶葉を使っているようですし、温度も適温。蒸し方も合った蒸し方をしています。うん、美味です」
美味って言う人初めて見た…。
それより部長、結構味に煩いんだな。一口飲んだだけでそんなに分かるものなのか。僕とは大違いだなぁ。
「うん、やっぱり私が目を付けただけあります。これは常連になってしまうかもしれません」
部長は楽しそうだ。てっきりお茶に託けて事件の話でもするのかと思っていたが、今日は本当に頭を休めるつもりだったらしい。
ちなみに僕は家が真逆の方向なので常連になるのは難しそうだ。部長のお誘いがあれば来るかもだけど。でも今日僕が誘われたのは、初見で入りづらいからというだけだから二度と誘われることはないだろう。残念。
「そういえば部長」
「何でしょう。今日はもう事件の話をするつもりはありませんよ」
「そうではないですよ。ただの世間話です」
今日部活で部長が言っていた、「内申」という単語を思い出しながら部長に聞いてみた。
「部長、進路ってどうするんですか?」
確かにまだ五月。受験本番という気持ちは弱いかもしれないが、考える人は考えているだろう。
「進学しますよ。まだ大学は決めてはいませんが、家から通える範囲で進学するつもりです」
意外と部長は受験に対して暢気に構えているようだった。多くの人はとっくに大学なんて決めて、それに向けて準備しているものではないのだろうか。
かくいう僕も進路調査票の提出に困っているところなんだけどね。周りのクラスメイト達は進路調査票が配られた次の日は提出していた。未提出なのは僕含めて少数派だった。特にやりたい事や将来の夢がない僕はなんとなく、部長と同じ大学にでも進もうかな、なんて考えたのだ。部長の事大好きか、僕。
「意外と新聞作りが楽しいので、そっち方面もありかもですね」
ボソリと部長が漏らした。意外や意外。部長楽しんでたのか。嫌々やっているのかと思っていましたごめんなさい。
「嫌だったら部長なんかやらずに新聞部辞めてますよ」
確かに、ごもっともで。
「部長は将来やりたい事ってあるんですか?」
「どうしたんですか、さっきから急に」
「いえ、なんとなく」
本当になんとなくでしかない。自分の進路の参考になればな、程度に考えて聞いただけのことだった。決して部長の進路を憶測しようだなんて考えてないよ、うん。本当だとも。神に誓おう。無神論者だけども。
そんなくだらない誓いを信じていない神にしているところでレモンタルトが運ばれてきた。そのレモンタルトを、幼女の様に目を輝かせて見ている部長。本当に今日はギャップの塊だ。
「んー、美味しいです」
やっぱり部長も女の子なんだよなぁ…。
「さっきから失礼な事ばかり考えてませんか」
さっきと声色が違いすぎませんか。怖いんですが。
「それにしてもこういう喫茶店なら女同士の方が良くありませんか?」
「去年、あんな事があったのに私にお友達がいるとでも?」
「……」
何も言い返せなかった。去年、ある事件が起きた。そこそこ騒ぎが大きく、部長に友達がいなくなる程度には大きな事件があった。
「私のお友達と呼べる存在は沢藤君ぐらいでしょうね」
レモンタルトを頬張りながら言ったのだから恐らく何の意図もなく率直に思ったことを言ったのだろう。だから気にするだけ無駄だ。でも、でも…。
(思春期真っ只中の男子高校生にそんなん言ったら勘違いされるよ…)
良かったですね、部長。僕の理性が逞しくて。
「部長って僕の事好きなんですか」
全く理性は逞しくなかった。
「は?」
今までの中で最高に冷たい声と目線を頂きました。コーヒーで温まることにしよう。
たっぷりと一時間ほどレモンタルトとストレートティーを堪能した部長が、「今日は付き合ってくれてありがとう」といって会計はもってくれた。男としては格好付けて奢るぐらいの気概を見せたかったのだが如何せん、財布が寂しかったのだ。
部長とは「りふる」を出てすぐに別れた。帰路につく頃には夕日は半分ほどしずんでおり、辺りは暗くなってきていた。
学校に停めたままの自転車を取りに一度学校に戻り、学校からは自転車で家に帰る。流石に五月といえど、太陽も沈んでしまえば少し冷える。そこに自転車を漕ぐことによって起きる向かい風が余計に肌を冷やした。
冷たい風に吹かれながら、部長の事を考えていた。去年の一件からある程度、友達以上には部長の事は知っているつもりだ。踏み込んだ事情も聞いた。部長の抱えている闇にも触れた。それでも部長は一見しただけでは分からない程度に「人として」生きている。僕の最も尊敬する人間だ。その部長が今日は非常に、可愛らしい一面を見せた。ケーキと紅茶に目を輝かせ、嬉しそうに頬張り、喜びながら飲むその姿は一つ歳が上とは思えない愛らしさを持っていた。
(ひょっとしたら、僕は、部長を偏見していたのかもしれない)
去年、部長は非常に恐ろしい一面を僕に見せた。復讐に燃え、果たすために狡猾な一面を見せた、あの「復讐の鬼」とも呼ぶべき狂気に満ちたあの目。思い出すだけでもゾッとする。あれ以来部長だけは絶対に敵には回すまいと心に誓った。
だがどうだろうか。それ自体が偏見ではなかろうか。誰しも許せない何かを持っており、去年は偶々それが起きてしまっただけではないのだろうか。本当の部長は非常に女の子らしい女の子なのではないだろうか。人というのは非常に複雑怪奇で何とも面倒臭い生き物なのだろうか。
そんなことを考えている内に愛しの我が家に着いた。ただいま、といつもと変わら繰り返しをすると、当然いつもと変わらぬ、おかえり、と母親から返ってきた。家にはでデミグラスソースの匂いがした。ふむ、今日の晩御飯はミートスパゲッティか。
「あれ?ハンバーグ?」
部屋で少しばかりゴロゴロした後、ダイニングから母親にご飯ができたと呼ばれ、食卓についたところ、予想が外れていると思い知らされた。
「嫌だった?」
「あぁ、ううん、そうじゃないよ。ミートスパゲッティかと思ったから」
ハンバーグだけど、煮込みハンバーグだった。うん、確かにこれならデミグラスソースも使うね。
「美味しいよ」
ソースの濃い味に、肉汁がとても合っていた。
さて、晩御飯を食べた後、風呂に入り、少しばかり家族と団欒した後に自分の部屋に戻る。そして考え事。調べ物。といっても事件に関する新しい情報が無いかのチェックだ。それも、あの裏掲示板を見るだけ。どうやら生徒諸君は段々と絵羽さんの事件に関する関心が薄れてきたのか、また、事件前の混沌とした記事ばかりになっていた。そんな中で嫌に目についたのが、猿山の悪口の記事だ。自分も今日猿山に関わったせいか、自然と目が向いてしまう。
猿山って女子生徒にセクハラしているのか…。なんだ、性的な目で見られているという被害妄想か。男子も便乗している。よほど嫌われているんだなぁ…。
待て待て。事件に関係ないじゃないか。何をしているんだ僕は。まぁ確かに僕も好意的にはなれないけども。気持ちも分かるけども。ネットってこうして人から時間を奪っていくんだな。
これ以上見ていても得られるものは何もなく、そっとパソコンを閉じることにした。そういえば古典で課題が出ているんだった。それを片付けなくちゃ。仕方なく机に座り、古典の課題のプリントと睨み合うことになった。お願いだから日本語を話してほしいと切実に願う。日本語だけども。何なんだ、ありおりはべりいまそかりとか。訳が分からないよ。
何とか課題のプリントを終わらせ、ベッドに潜り込んだのは時計の針がてっぺんに上りそうになった時だった。どうも僕は古典が苦手のようだ。
欠伸をしながら登校していると暑さも本格的になってきたのを肌で感じる。いやな季節になってきたもんだね。暑いのよりは寒い方が遥かにいいね。しかし夏の前には梅雨が待ち構えているのも、僕的には嫌でしょうがない。あのジメっとした暑さが衣類を肌にくっつかせ、服の中を蒸させる。とても不愉快な暑さだ。
木々も緑が強くなっているのを見て、植物は元気だなぁとかそんなくだらないことばかり考えていた。
今日は何か、進展はないものだろうか。
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『ファンタジー×サスペンス。信頼と裏切り、謎と異能――嘘を吐いているのは誰?』
ある年の冬、北海道沖に浮かぶ小さな離島が一晩で無人島と化した。
この出来事に関する情報は一切伏せられ、半年以上経っても何が起こったのか明かされていない――。
ごく普通の生活を送ってきた女性――小鳥遊蒼《たかなし あお》は、ある時この事件に興味を持つ。
事件を調べているうちに出会った庵朔《いおり さく》と名乗る島の生き残り。
この男、死にかけた蒼の傷をその場で治し、更には壁まで通り抜けてしまい全く得体が知れない。
それなのに命を助けてもらった見返りで、居候として蒼の家に住まわせることが決まってしまう。
蒼と朔、二人は協力して事件の真相を追い始める。
正気を失った男、赤い髪の美女、蒼に近寄る好青年――彼らの前に次々と現れるのは敵か味方か。
調査を進めるうちに二人の間には絆が芽生えるが、周りの嘘に翻弄された蒼は遂には朔にまで疑惑を抱き……。
誰が誰に嘘を吐いているのか――騙されているのが主人公だけとは限らない、ファンタジーサスペンス。
※ミステリーにしていますがサスペンス色強めです。
※作中に登場する地名には架空のものも含まれています。
※痛グロい表現もあるので、苦手な方はお気をつけください。
本作はカクヨム・なろうにも掲載しています。(カクヨムのみ番外編含め全て公開)
©2019 新菜いに
影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -
葉羽
ミステリー
孤島に建つ天文台廃墟「虚塔」で相次ぐ怪死事件。被害者たちは皆一様に、存在しない「何か」に怯え、精神を蝕まれて死に至ったという。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に島を訪れ、事件の謎に挑む。だが、彼らを待ち受けていたのは、常識を覆す恐るべき真実だった。歪んだ視界、錯綜する時間、そして影のように忍び寄る「異形」の恐怖。葉羽は、科学と論理を武器に、目に見えない迷宮からの脱出を試みる。果たして彼は、虚塔に潜む戦慄の謎を解き明かし、彩由美を守り抜くことができるのか? 真実の扉が開かれた時、予測不能のホラーが読者を襲う。
未完成のメソッド
紫苑色のシオン
ミステリー
あれから一年が経った。部長は卒業し、僕は三年生になり、新聞部の部長になった。
部長のいない学校生活に部活動。つまらない日々が……
なんてことはなく、一風変わった事件が舞い込んでくる______
未完成シリーズ、閑話休題の短編集
時計の歪み
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽は、推理小説を愛する天才少年。裕福な家庭に育ち、一人暮らしをしている彼の生活は、静かで穏やかだった。しかし、ある日、彼の家の近くにある古びた屋敷で奇妙な事件が発生する。屋敷の中に存在する不思議な時計は、過去の出来事を再現する力を持っているが、それは真実を歪めるものであった。
事件を追いかける葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共にその真相を解明しようとするが、次第に彼らは恐怖の渦に巻き込まれていく。霊の囁きや過去の悲劇が、彼らの心を蝕む中、葉羽は自らの推理力を駆使して真実に迫る。しかし、彼が見つけた真実は、彼自身の記憶と心の奥深くに隠された恐怖だった。
果たして葉羽は、歪んだ時間の中で真実を見つけ出すことができるのか?そして、彼と彩由美の関係はどのように変わっていくのか?ホラーと推理が交錯する物語が、今始まる。
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