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未完成のビリーフ 8
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あれからというもの、週に二回部活で集まるものの、これといった収穫はないままに八月に突入してしまった。
そして八月入っての二回目の部活の時に。
「六個目と七個目がようやくわかりました」
近野先輩が凛とした声でそう言った。聞けば、クラスメイト全員に聞いたそうで、その中の一人が知っていたとの事だった。
六個目は「壁一面に現れる呪の字」だそうだ。一晩にして壁一面に結構大きい「呪」という字が現れたそうだ。場所は視聴覚室。
七個目は僕が言っていた通り、「全て知ると不幸が訪れる」というやつだった。これはまぁ、七不思議に用意されたオチのようなものなので合って無いようなものといっても差し支えないだろう。
「ふむ…これで全部か…」
篠崎部長がホワイトボードと睨めっこしている。この後の篠崎部長の言うことは大体皆が察していた。
「原因を突き止めよう!」
…ですよね。
ということで残りの部活は七不思議の原因究明にあたることになった。篠崎部長と近野先輩と僕で一組。及川先輩と桐生先輩で一組に分かれて各自七不思議が起きた現場に向かって現場検証にあたってみることになった。
僕達が訪れたのは美術室。泣く石膏を見に来たのだ。中では珍しく美術部が活動していた。
「どうしたんですか、篠崎君」
どうやら美術部の部長は篠崎部長と顔見知りのようだった。
「あぁ、今七不思議を調査していてな。悪いが、件の泣く石膏を見せてもらえないか」
「あ、なるほど…。ごめんね、その石膏、部員が不気味だからって準備室に片しちゃった」
まぁ、無理もないと思う。
「見ることはできないか?」
「準備室には美術部しか入っちゃいけないの。…時間が掛かってもいいなら出すけど」
「悪いが頼めるか」
美術部部長さんは気の良いことに、「ちょっと待っててね」と言って準備室に消えて行った。本来であればそこまでする必要がないのに、わざわざそこまで協力してくれるとは。
時間が掛かると言っていた割には数分で持ってきてくれた。見た感じはいかにも普通の西洋人の顔を象った肩までしかない石膏だった。特に違和感などはない。
「これだけが泣いていたのか」
「らしいわ。近くには四体ほど石膏があったんだけど、これだけが涙を流していたらしいわ」
「誰がそれを?」
「一年の木川さんよ」
「呼んでもらえないか」
しかしこんなに協力的だった部長さんが初めて渋った。
「ごめんなさい。彼女、その日を境に美術部を辞めてしまったの」
いきなりこういった怖い目にあったら美術室に来辛いよな、確かに。
「そうか、なら仕方ないな」
篠崎部長もそれ以上の無理強いはしなかった。それからはできる限り知っていることを話してもらい、石膏の写真と元にあった場所の写真を幾つか撮って、「泣く石膏」は一旦切り上げとなった。
次は「保健室の首吊り」だ。保健室に現れた首を吊っているかのような影が現れたという七不思議。目撃者は陸上部の部員殆どだ。中には猿山教員も交じっているようだが、話を聞く限り、影を直接見たわけではなさそうなので、優先度は低いことになった。
保健室には保健医の先生がいた。夏休みでも部活中に怪我人が出ることが多いそうなので出勤しなくてはいけないそうだ。何とも大変な事だ。
保健室も見る限り変わった様子はない。清潔に整えられたベッドが三台並び、床も証明の明かりが反射するぐらいに綺麗に清掃されている。備品も丁寧に棚の中で並べられており、見るからに普段から整頓されていることが分かる。とてもではないが首を吊るのにここを選ぶのは変な気がする。
保健医は七不思議については何も知らないらしく、有益な話は聞けなかった。そこで僕達は保健室の写真だけ撮って、陸上部に話を聞きに行くことにした。
保健室を出ようとしたところで。
「あ、先生。最後にちょっとだけいいですか」
僕が聞きたいことがあるのを忘れていた。
「何かしら」
「いつもお仕事は遅いのでしょうか?」
「ん~、他の先生に比べたら遥かに早いと思うわ。十八時ぐらいには部活も終わりに差し掛かっているから怪我人も出ないだろうし、上がっているわ」
「そうですか、ありがとうございます」
それだけを確認し、僕達は保健室を後にした。
「沢藤、何であんな事聞いたんだ?」
篠崎部長が目を丸くしながら聞いてくる。
「いえ、遅くまでいたのなら何か変わった点が無かったか聞きたかったんです」
そうか、とだけ呟いた。これ以上掘り下げられたらちょっとどうしようかと悩んでいたが、助かった。
陸上部は丁度、休憩中だった。話を聞くのに練習を中断させるのは申し訳なかったから助かった。
「あれ、篠崎じゃん。どったの」
ここでも篠崎部長は顔見知りだったようだ。意外と我らが部長は顔が広いようだ。そのお陰かスムーズに話を切り出せた。
「あぁ、あの首吊り!びっくりしたよ!女の子が首吊ってたんだもん!」
おや。
「ん?なんで女だってわかったんだ?」
「スカートだったからだよ!多分、女子の制服着てたんじゃないかな、ね、みんな」
と話してくれている女子が陸上部全員に問うと、皆一斉に頷いた。これはこれは。なんともまぁ。
「でもさ、保健室行っても何もなかったし…なんだったんだろうな、あれ」
という言葉で「保健室の首吊り」は締めくくられ、無かった。
「あの、一つだけいいですか」
と、僕が最後に割って入った。
「ん?なに?」
「保健室の中は調べましたか?」
「中は全員見たよ。でも首吊りなんてどこにも無かったよ」
「そうですか、分かりました。ありがとうございました」
まぁ、その言い方だと僕の想像通りかな。
これで正真正銘、「保健室の首吊り」の調査は締めくくられた。知りたいことは知れたし、満足かな。しかしこれは…まぁ…。
「さっきから何だ、沢藤」
いい加減篠崎部長も察して離してくれそうにないし、どうしようか。
「いや、僕なりに色々原因考えてるんですよ。当ては外れてばっかりですけどね」
えへへ、と後ろ髪を右手がクシャッとかき乱す。
「気になることがあるなら言え」
何か嫌に威圧的だな。どうしたのだろうか。少し苛ついているようにも見えるし。
「何も無いですってば」
あっけらかんと笑ってごまかした。篠崎部長は不満そうに前を向いた。
さて、僕がさっきから怖いのは篠崎部長なんかじゃなくて、さっきから全く喋らない近野先輩なんだけどなぁ。何も言わず、ただ篠崎部長と僕についてくるだけっていう感じ。
そして、何より、聞けずにいるんだけど、どうして近野先輩は今日も長袖でタイツを吐いているのだろうか。
そして最後にやってきたのが音楽室だ。「独りでに鳴るピアノ」だ。これを目撃したのは新任の女教師だった。いつも前髪をピンで留めているのが特徴的な狐顔の女性だ。篠崎部長が予め話を通しておいたようで、先にその女教師、茂西教員が音楽室に居た。
「では既に鳴っていた、と」
「そう。残業していて、帰ろうと思った時に音楽室からピアノが聞こえてきたから変だなって思ったの」
狐顔だけあって、結構な釣り目の茂西先生はキツイ性格をしているのではないかと思ったが反面、気の弱そうな話し方と声だった。
「で、見に行ったら、誰もいないのにピアノが鳴ってたの。すぐに気を失ってしまったから、それ以上の事は何も…」
怖い目にあったとはいえ、気を失う人なんているのか。創造物の中だけだと思っていた。
「ありがとうございました」
適度に篠崎部長が質疑応答を繰り返し、三十分ほどで話を終えた。これで僕達が回る分は終了だ。部室に一旦戻ろう。と、その前に。
「茂西先生。ピアノは曲を演奏していましたか?」
また最後に割って入った。
「え?ええと…ごめんなさい、音楽に関してはあまり深くなくて…でも、ちゃんとした曲になっていたと思うわ」
「そうですか、ありがとうございます。大変参考になりました」
相変わらず篠崎部長が僕を睨んでいる。こっちは理由は分かるのだけど、なぜ近野先輩まで僕を睨んでいるのだろうか。
部室に戻ると先に及川先輩と桐生先輩が戻っていた。まぁ、及川先輩と桐生先輩に任せたのは目撃現場があちこちにあるし、最初に見た人はみんな文科系の部活かそもそも部活に参加していないような人だ。話を聞こうにも、まず学校に来ていないような人たちだった。これでは碌な調査もできなかっただろうに。初めて及川先輩に同情した。
「篠崎お前、わざとだろ、この配分」
「まぁ、許せって。人に話聞くの苦手だったりするだろ、お前」
チッ、と舌打ちしたが、それ以上何も反論してこないところを見ると、図星だったようだ。
案の定、及川先輩達は現場の写真を撮ってきた程度で撤収したらしい。僕達も碌に話を聞けたのは「保健室の首吊り」ぐらいだ。つまるところ、あまり進んでいないということだ。これには全員が頭を抱えた。
僕も実際、分かっているのは今日直接聞いた三つだけだ。残りの及川先輩達が担当した分に関しては何も分かっていない。しかも分かっているというのはあくまでタネだけだ。これは完全に人為的なものであって、決して怪奇現象ではない。ならば人為的に起こしている犯人の意図が分からないでいる現状、僕だって何も分かっていないに等しい。
それにこれはこの学校の生徒全員が可能な事だ。そこからたった一人の犯人を割り出そうというのは些か無理な話ではないだろうか。一体犯人は何のために…。
「よし、直接俺たちで怪奇現象を見るか!」
いきなりだった。篠崎部長が腕を組んだままそう言った。
「え、何、夜に学校に忍び込むの?」
桐生先輩が楽しそうに聞く。
「ああ、そうだ」
「肝試しみたいで楽しそうじゃん」
及川先輩もノリノリだ。これはもう決まったも同然のようだ。反対したとしても意味はないだろうから諦めよう。近野先輩も同じのようで、はぁ、と溜息一つ溢すだけで他には特に何もアクションを起こさなかった。
そして八月入っての二回目の部活の時に。
「六個目と七個目がようやくわかりました」
近野先輩が凛とした声でそう言った。聞けば、クラスメイト全員に聞いたそうで、その中の一人が知っていたとの事だった。
六個目は「壁一面に現れる呪の字」だそうだ。一晩にして壁一面に結構大きい「呪」という字が現れたそうだ。場所は視聴覚室。
七個目は僕が言っていた通り、「全て知ると不幸が訪れる」というやつだった。これはまぁ、七不思議に用意されたオチのようなものなので合って無いようなものといっても差し支えないだろう。
「ふむ…これで全部か…」
篠崎部長がホワイトボードと睨めっこしている。この後の篠崎部長の言うことは大体皆が察していた。
「原因を突き止めよう!」
…ですよね。
ということで残りの部活は七不思議の原因究明にあたることになった。篠崎部長と近野先輩と僕で一組。及川先輩と桐生先輩で一組に分かれて各自七不思議が起きた現場に向かって現場検証にあたってみることになった。
僕達が訪れたのは美術室。泣く石膏を見に来たのだ。中では珍しく美術部が活動していた。
「どうしたんですか、篠崎君」
どうやら美術部の部長は篠崎部長と顔見知りのようだった。
「あぁ、今七不思議を調査していてな。悪いが、件の泣く石膏を見せてもらえないか」
「あ、なるほど…。ごめんね、その石膏、部員が不気味だからって準備室に片しちゃった」
まぁ、無理もないと思う。
「見ることはできないか?」
「準備室には美術部しか入っちゃいけないの。…時間が掛かってもいいなら出すけど」
「悪いが頼めるか」
美術部部長さんは気の良いことに、「ちょっと待っててね」と言って準備室に消えて行った。本来であればそこまでする必要がないのに、わざわざそこまで協力してくれるとは。
時間が掛かると言っていた割には数分で持ってきてくれた。見た感じはいかにも普通の西洋人の顔を象った肩までしかない石膏だった。特に違和感などはない。
「これだけが泣いていたのか」
「らしいわ。近くには四体ほど石膏があったんだけど、これだけが涙を流していたらしいわ」
「誰がそれを?」
「一年の木川さんよ」
「呼んでもらえないか」
しかしこんなに協力的だった部長さんが初めて渋った。
「ごめんなさい。彼女、その日を境に美術部を辞めてしまったの」
いきなりこういった怖い目にあったら美術室に来辛いよな、確かに。
「そうか、なら仕方ないな」
篠崎部長もそれ以上の無理強いはしなかった。それからはできる限り知っていることを話してもらい、石膏の写真と元にあった場所の写真を幾つか撮って、「泣く石膏」は一旦切り上げとなった。
次は「保健室の首吊り」だ。保健室に現れた首を吊っているかのような影が現れたという七不思議。目撃者は陸上部の部員殆どだ。中には猿山教員も交じっているようだが、話を聞く限り、影を直接見たわけではなさそうなので、優先度は低いことになった。
保健室には保健医の先生がいた。夏休みでも部活中に怪我人が出ることが多いそうなので出勤しなくてはいけないそうだ。何とも大変な事だ。
保健室も見る限り変わった様子はない。清潔に整えられたベッドが三台並び、床も証明の明かりが反射するぐらいに綺麗に清掃されている。備品も丁寧に棚の中で並べられており、見るからに普段から整頓されていることが分かる。とてもではないが首を吊るのにここを選ぶのは変な気がする。
保健医は七不思議については何も知らないらしく、有益な話は聞けなかった。そこで僕達は保健室の写真だけ撮って、陸上部に話を聞きに行くことにした。
保健室を出ようとしたところで。
「あ、先生。最後にちょっとだけいいですか」
僕が聞きたいことがあるのを忘れていた。
「何かしら」
「いつもお仕事は遅いのでしょうか?」
「ん~、他の先生に比べたら遥かに早いと思うわ。十八時ぐらいには部活も終わりに差し掛かっているから怪我人も出ないだろうし、上がっているわ」
「そうですか、ありがとうございます」
それだけを確認し、僕達は保健室を後にした。
「沢藤、何であんな事聞いたんだ?」
篠崎部長が目を丸くしながら聞いてくる。
「いえ、遅くまでいたのなら何か変わった点が無かったか聞きたかったんです」
そうか、とだけ呟いた。これ以上掘り下げられたらちょっとどうしようかと悩んでいたが、助かった。
陸上部は丁度、休憩中だった。話を聞くのに練習を中断させるのは申し訳なかったから助かった。
「あれ、篠崎じゃん。どったの」
ここでも篠崎部長は顔見知りだったようだ。意外と我らが部長は顔が広いようだ。そのお陰かスムーズに話を切り出せた。
「あぁ、あの首吊り!びっくりしたよ!女の子が首吊ってたんだもん!」
おや。
「ん?なんで女だってわかったんだ?」
「スカートだったからだよ!多分、女子の制服着てたんじゃないかな、ね、みんな」
と話してくれている女子が陸上部全員に問うと、皆一斉に頷いた。これはこれは。なんともまぁ。
「でもさ、保健室行っても何もなかったし…なんだったんだろうな、あれ」
という言葉で「保健室の首吊り」は締めくくられ、無かった。
「あの、一つだけいいですか」
と、僕が最後に割って入った。
「ん?なに?」
「保健室の中は調べましたか?」
「中は全員見たよ。でも首吊りなんてどこにも無かったよ」
「そうですか、分かりました。ありがとうございました」
まぁ、その言い方だと僕の想像通りかな。
これで正真正銘、「保健室の首吊り」の調査は締めくくられた。知りたいことは知れたし、満足かな。しかしこれは…まぁ…。
「さっきから何だ、沢藤」
いい加減篠崎部長も察して離してくれそうにないし、どうしようか。
「いや、僕なりに色々原因考えてるんですよ。当ては外れてばっかりですけどね」
えへへ、と後ろ髪を右手がクシャッとかき乱す。
「気になることがあるなら言え」
何か嫌に威圧的だな。どうしたのだろうか。少し苛ついているようにも見えるし。
「何も無いですってば」
あっけらかんと笑ってごまかした。篠崎部長は不満そうに前を向いた。
さて、僕がさっきから怖いのは篠崎部長なんかじゃなくて、さっきから全く喋らない近野先輩なんだけどなぁ。何も言わず、ただ篠崎部長と僕についてくるだけっていう感じ。
そして、何より、聞けずにいるんだけど、どうして近野先輩は今日も長袖でタイツを吐いているのだろうか。
そして最後にやってきたのが音楽室だ。「独りでに鳴るピアノ」だ。これを目撃したのは新任の女教師だった。いつも前髪をピンで留めているのが特徴的な狐顔の女性だ。篠崎部長が予め話を通しておいたようで、先にその女教師、茂西教員が音楽室に居た。
「では既に鳴っていた、と」
「そう。残業していて、帰ろうと思った時に音楽室からピアノが聞こえてきたから変だなって思ったの」
狐顔だけあって、結構な釣り目の茂西先生はキツイ性格をしているのではないかと思ったが反面、気の弱そうな話し方と声だった。
「で、見に行ったら、誰もいないのにピアノが鳴ってたの。すぐに気を失ってしまったから、それ以上の事は何も…」
怖い目にあったとはいえ、気を失う人なんているのか。創造物の中だけだと思っていた。
「ありがとうございました」
適度に篠崎部長が質疑応答を繰り返し、三十分ほどで話を終えた。これで僕達が回る分は終了だ。部室に一旦戻ろう。と、その前に。
「茂西先生。ピアノは曲を演奏していましたか?」
また最後に割って入った。
「え?ええと…ごめんなさい、音楽に関してはあまり深くなくて…でも、ちゃんとした曲になっていたと思うわ」
「そうですか、ありがとうございます。大変参考になりました」
相変わらず篠崎部長が僕を睨んでいる。こっちは理由は分かるのだけど、なぜ近野先輩まで僕を睨んでいるのだろうか。
部室に戻ると先に及川先輩と桐生先輩が戻っていた。まぁ、及川先輩と桐生先輩に任せたのは目撃現場があちこちにあるし、最初に見た人はみんな文科系の部活かそもそも部活に参加していないような人だ。話を聞こうにも、まず学校に来ていないような人たちだった。これでは碌な調査もできなかっただろうに。初めて及川先輩に同情した。
「篠崎お前、わざとだろ、この配分」
「まぁ、許せって。人に話聞くの苦手だったりするだろ、お前」
チッ、と舌打ちしたが、それ以上何も反論してこないところを見ると、図星だったようだ。
案の定、及川先輩達は現場の写真を撮ってきた程度で撤収したらしい。僕達も碌に話を聞けたのは「保健室の首吊り」ぐらいだ。つまるところ、あまり進んでいないということだ。これには全員が頭を抱えた。
僕も実際、分かっているのは今日直接聞いた三つだけだ。残りの及川先輩達が担当した分に関しては何も分かっていない。しかも分かっているというのはあくまでタネだけだ。これは完全に人為的なものであって、決して怪奇現象ではない。ならば人為的に起こしている犯人の意図が分からないでいる現状、僕だって何も分かっていないに等しい。
それにこれはこの学校の生徒全員が可能な事だ。そこからたった一人の犯人を割り出そうというのは些か無理な話ではないだろうか。一体犯人は何のために…。
「よし、直接俺たちで怪奇現象を見るか!」
いきなりだった。篠崎部長が腕を組んだままそう言った。
「え、何、夜に学校に忍び込むの?」
桐生先輩が楽しそうに聞く。
「ああ、そうだ」
「肝試しみたいで楽しそうじゃん」
及川先輩もノリノリだ。これはもう決まったも同然のようだ。反対したとしても意味はないだろうから諦めよう。近野先輩も同じのようで、はぁ、と溜息一つ溢すだけで他には特に何もアクションを起こさなかった。
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