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弱虫くんと騎士さま

騎士さまの憂鬱

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隼人side

生徒会室に向かう途中、先生から呼ばれた優那と別れ、俺は一人で彼の帰りを待っていた。

『隼人がいるからなんとかなってる』って、なんだよ…それ。


「…副会長」
「うわっ!」

突然目の前に現れた彼に驚き、思わず声をあげた。

「そんなに大きな声出さないでくださいよ~」
「急に出てくるからだろ!?」
「まーた会長のこと考えてたんですか?」
「お前には関係ない」
「関係ありますよ。オレも生徒会の一員なんですから」
「どうしてお前は生徒会なんかに…」
「全ては大学の推薦をもらうためです」
「あ、そう…」
「会長のために副会長に立候補した 隼人先輩より、オレのほうがちゃんとした理由でしょ?」

そう言ってニヤニヤと笑う 彼——速水 瞬はやみ しゅんは書記兼会計だ。
俺と優那の1つ下の学年で、超モテる…らしい。
ファンクラブがあるとか、ないとか……

速水の本当の性格を知らないから、女子たちは目をキラキラさせて彼を見ていられるんだと思う。

「それでそれで? 優那先輩と何か進展はあったんですか?」
「進展も何も、優那とは別に…」
「えー、オレ知ってますよ? 部屋でいちゃついてるんですよね??」
「は?」
「図星ですか?」
「…優那とは本当に何もない。ただの幼馴染だから」
「ふーん…つまんないなぁ」

コイツは何を期待しているんだ?
俺にとって優那は大切な存在。
それ以上でもそれ以下でもない…と思う。

「お待たせ」

ガラガラッとドアが開いて、優那が入ってくる。

「会長、おかえりなさい。頼まれていた資料、できました」
「ありがとう! 速水くんは本当に仕事が早いね。毎回助かるよ」
「会長にそう言っていただけて嬉しいです」

速水はわざと俺を見て自慢げに笑う。
そんな彼を優那にバレないように睨んだ。

優那の右手が速水の頭に伸びていく。

気づけば俺は

「優那っ!」

名前を叫んでいた。

「ん? 隼人、どうしたの?」
「な、なんでもない」

優那は誰にでも笑顔を向けるから……

ほら、今も。

「速水くん。買い出しのついでにお菓子買ってきたんだけど、食べる?」
「はい! オレ、紅茶いれますね」

“会長”は嫌いなのに、速水の前では肩の力を抜く優那。
そして、自然な笑顔を向ける。

俺はそれが気にくわない。


「ほら、隼人も早く。速水くんがいれてくれた紅茶、冷めちゃうよ?」
「……うん」

俺は、優那と二人で居たいのに。

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