上 下
17 / 17

見知らぬ人

しおりを挟む
『お前は誰だ』

『お前は誰だ』
厚い壁の向こう側から聞こえた声に一瞬たじろぐ。中年ほどの男性だろうか。姿は見えないけれど、まるでお互いににらみ合っているような感覚に襲われる。私は今、感じたことのない殺気に心臓が深く脈を打っている。
逃げ場のない道に追い込まれた気がする。窓から逃げ出すことだってできる。でもここで逃げ出したら、、。
「私のこと?」
声色を変えて、向こう側にいる男らしい人物に返事を返す。手を握りしめる。
ここで間違った返答をしたら、怒らせるに決まってる。それだけでは済まない可能性だってある。ここの企業は表向きのことでもわからないことがありすぎる。
「そうだ。きっと、俺らの情報が欲しかっただろうけど」
「その通りよ」
意外な返しにあやめは罠かと思った。この余裕、どっから来ているのだろう。隠さなければいけない秘密を知られてしまったという最悪な場面で
「知らないほうがいい秘密だってこの世界にはあるんだ」
「そうでしょうね、これは知られたくない情報だから表の世界には隠している。」
私は何もないうちにここから逃げようと音を立てずに窓に近づく。
「逃げるのか」
ここでやっと再認識した。この人普通の人じゃない。この組織にいるだけで一般人とは違うが、気配が読むのがうまい腕利きだ。ここに来るまで明かりをつけずに、足音も気配も消してここまで来た。明かりをつけたのも部屋の扉を閉めた後。カメラだってここはないと確認済み。
「わかるのね。あなたが普通の人ではないとも私は理解した」
「君も只者ではないな」
さらに緊張が高まった。糸が張り詰めてもう解けていきそうだ。私より断然上の人勝てるわけがない。早く逃げないと。
「そうだ、そんな君に渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」
「爆弾とかじゃないから」
私が想像したものをあてられた。なんなの、この人。
扉の下から出てきたのは女の子と、お母さんらしい人が笑顔で映っている微笑ましい写真だった。
「なにこれ、これはあなたから?」
「いや、、、詳しくは言えないんだが。この子を探してるとかなんかでうちの組織に捜索が入ってるんだ。俺らの組織に興味ある君なら何か調べて手がかりを知ってるんじゃないかって」
頭がクラッとする。こんな空気でそんな軽い口調で話せる?精神が疲れてきたのかも。
「ごめんなさい。私この子知らないわ」
「そうだよな」
もう外に出ようと思い、足をかけた。
「今回のこと、まぐれだと思うか?」
「え?」
「全部お見通しだったよ、あんたが来るのは。天野さん」

刹那、風が吹き私は背中を地面に向けたままバランスを崩し落ちていった。最後まで聞き取れなかったけど、組織の人にも会っちゃったけど、今はそんなこと気にしない。

太陽が聳え立つ創造物から強い光を纏い現れた。
夜明けだ。早くしおんと合流しないと
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...