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6、たいへんソンな役回り。
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第二騎士団室でオルトたちはじっと立たされたままだった。
目の前にはウロウロと考え込んだまま右へ左へと歩き回る団長、シスルを目で追う事しか出来る事がない。
こんなことをしている場合ではないと気持ちが焦るが、命令がない状態だと動きようがないのだ。
しかもシスルの様子もなんだかおかしい。
例えるなら恋人を殺された猛獣のようで、誰も声がかけられないのだ。
ここは一つオルトさん頼みますと言わんばかりの、背中に刺さる他の団員の視線も痛い。
何故、僕なのか。
僕も君らと同じヒラ団員だバカやろう。
触れたら弾けてしまいそうな獰猛な猛獣に、オルトは勇敢にも指先で『ツンツン』と触ることになってしまった。
「……団長、指示を。」
ギギギと。
錆びたロボットのような動きで猛獣がこちらを見る。
人でも殺しそうな眼力に、オルトを含む団員全員がピョンと心臓と一緒に飛び跳ねる。
だがハヴィが心配なのは、あんただけじゃない。
僕だって従弟が心配なのだ。
猛獣が何を思い獣化しているのか知らんが、僕は僕で動きたいので、怖いけど声を発しようと勇気を出す。
「許可をいただきたいのですが。」
「……なんのだ。」
喋れるんじゃーんなんて思いつつ、えへらえへらと愛想笑い。
「ハヴィは僕の従弟です。そしてアンセルも一応、幼馴染で同級生でして……。」
「いいから要点を早く言え。」
猛獣に睨まれ『はぃ……』と小さく怯えて涙目になるオルト。
怖いってマジで、ねえもうやだこの人。
なんで僕、騎士団に入っちゃったんだろう。
そう思いながら震える体を落ち着かせるように、制服のシャツの下の方をギュッと掴んだ。
*
ハヴィの家、クロア伯爵家は家族経営の商売をしている。
小さいが商会を運用し、両親共々センスがいいのか、輸入してくるものが全て大ヒットしている。
ハヴィに似た綺麗な姉が二人おり、その二人ともお尻にピッタリと隙間なく敷いた婿養子をとっているため、ハヴィは長男であるが自由に過ごしてきた。
元々運動神経が飛び抜けてよく、剣術武術に興味を持ったが最後、メキメキムキムキと上達していった。
顔が可愛く幼いので揶揄われたりすることも多かったのだが、全て拳一つで解決してきた経歴を持っていた。
筋肉がつきにくい体型は一緒なのに、なぜあんなに俊敏で腕っぷしが強いのか全く理解できない。
羨ましいけど仕方ない、これが本家と分家の違いなのかもしれない。
オルトの家はそんなクロアの分家にあたるのだ。
小さい頃からクロアの家業を手伝う両親と共に、ハヴィの家に通っていた。
なので従兄弟というかもう、双子のような感覚でずっと育ってきた。
子どもの頃は顔も体格も似ていたので、本当に双子だと勘違いする同級生もいた。
腕に自信があるハヴィとは裏腹に、オルトは体も弱く腕っ節もへなちょこ。
小さい頃からハヴィと一緒に剣術を習っていたからか、かろうじて動けるようにはなったけど、秀でる才能は全くもって見当たらなかった。
他にできる事がないから誘わられるがまま、金魚の糞のようにハヴィについて騎士団へと入ったが……。
「だから、要点を早く。」
低く唸るような声に現実に意識が戻る。
危ない、まるで走馬灯のように昔を思い出していたようだ。
ゴモゴモと口ごもる声を咳で正し、息を吸う。
「クロア家へ情報収集に行かせてください!」
あ、僕ってば思ったより大きな声が出た、なんて呑気にビックリ。
自分の声にも驚いたが、普段おっとりとしたオルトが出した声に、同じくらいシスル団長も目を丸くしていた。
あ、人間に戻った?
いや今思うのはそんな事じゃない。
オルトの言葉に、じっと考え込んだシスル団長の返事を待つ。
待つ間、また思い出が蘇ってくる。
何これ死ぬ前じゃないんだから、走馬灯よ今降りてくんなし。
ゆらゆらと体幹の悪い姿勢で立っていると、シスル団長と目があった。
「……そうか、君たちは従兄弟だったな。
よしオルト、すぐに向かってほしい。」
何かを考え込むような仕草をした後に、okが出た。
何を思っているのかわからないが、とりあえず今は気にせず小さく敬礼をする。
今は気にしていられない、一刻も早くハヴィと連絡を取らなきゃ。
急いで自分の上着を腕にかけ、部屋から出ようとする。
「あ、」
団長が何かを言いかけた気がして、出掛けていた扉から部屋を覗き込むと、微笑んだ団長がオルトを見て微笑んでいた。
え、何何で笑ってんの。
獣化の笑顔にドン引いていると、その猛獣は微笑みながらこう言ったのだ。
「私も行こう。」
「え」
何で一緒に?と思ったことが顔に出ていたのかもしれない。
何ならえっと口にも出ていた。
疑問が浮かぶオルトの顔に答えるように、猛獣は人間の顔で微笑見ながら続けた。
「ハヴィは私の婚約者だからな。」
「……え!?」
言っている言葉が理解できない。というか耳から確かに入っているが、頭で処理出来ない状態にその場に立ち尽くす。
呆気に取られ、ポカンと口が開いているのが自分でもわかった。
状況が理解できず、え何にナニどういうこと!?とあたりを見渡すと、狼狽えているのはオルトばかりで、他の団員はウンウンと頷いている。
え、ハヴィから何も聞いてないけど団長と婚約してたの!?まさかそんな?
呆然と驚きすぎて、上着が腕から滑り落ちたのも気がつかないほど、オルトはその場に動けずにいた。
目の前にはウロウロと考え込んだまま右へ左へと歩き回る団長、シスルを目で追う事しか出来る事がない。
こんなことをしている場合ではないと気持ちが焦るが、命令がない状態だと動きようがないのだ。
しかもシスルの様子もなんだかおかしい。
例えるなら恋人を殺された猛獣のようで、誰も声がかけられないのだ。
ここは一つオルトさん頼みますと言わんばかりの、背中に刺さる他の団員の視線も痛い。
何故、僕なのか。
僕も君らと同じヒラ団員だバカやろう。
触れたら弾けてしまいそうな獰猛な猛獣に、オルトは勇敢にも指先で『ツンツン』と触ることになってしまった。
「……団長、指示を。」
ギギギと。
錆びたロボットのような動きで猛獣がこちらを見る。
人でも殺しそうな眼力に、オルトを含む団員全員がピョンと心臓と一緒に飛び跳ねる。
だがハヴィが心配なのは、あんただけじゃない。
僕だって従弟が心配なのだ。
猛獣が何を思い獣化しているのか知らんが、僕は僕で動きたいので、怖いけど声を発しようと勇気を出す。
「許可をいただきたいのですが。」
「……なんのだ。」
喋れるんじゃーんなんて思いつつ、えへらえへらと愛想笑い。
「ハヴィは僕の従弟です。そしてアンセルも一応、幼馴染で同級生でして……。」
「いいから要点を早く言え。」
猛獣に睨まれ『はぃ……』と小さく怯えて涙目になるオルト。
怖いってマジで、ねえもうやだこの人。
なんで僕、騎士団に入っちゃったんだろう。
そう思いながら震える体を落ち着かせるように、制服のシャツの下の方をギュッと掴んだ。
*
ハヴィの家、クロア伯爵家は家族経営の商売をしている。
小さいが商会を運用し、両親共々センスがいいのか、輸入してくるものが全て大ヒットしている。
ハヴィに似た綺麗な姉が二人おり、その二人ともお尻にピッタリと隙間なく敷いた婿養子をとっているため、ハヴィは長男であるが自由に過ごしてきた。
元々運動神経が飛び抜けてよく、剣術武術に興味を持ったが最後、メキメキムキムキと上達していった。
顔が可愛く幼いので揶揄われたりすることも多かったのだが、全て拳一つで解決してきた経歴を持っていた。
筋肉がつきにくい体型は一緒なのに、なぜあんなに俊敏で腕っぷしが強いのか全く理解できない。
羨ましいけど仕方ない、これが本家と分家の違いなのかもしれない。
オルトの家はそんなクロアの分家にあたるのだ。
小さい頃からクロアの家業を手伝う両親と共に、ハヴィの家に通っていた。
なので従兄弟というかもう、双子のような感覚でずっと育ってきた。
子どもの頃は顔も体格も似ていたので、本当に双子だと勘違いする同級生もいた。
腕に自信があるハヴィとは裏腹に、オルトは体も弱く腕っ節もへなちょこ。
小さい頃からハヴィと一緒に剣術を習っていたからか、かろうじて動けるようにはなったけど、秀でる才能は全くもって見当たらなかった。
他にできる事がないから誘わられるがまま、金魚の糞のようにハヴィについて騎士団へと入ったが……。
「だから、要点を早く。」
低く唸るような声に現実に意識が戻る。
危ない、まるで走馬灯のように昔を思い出していたようだ。
ゴモゴモと口ごもる声を咳で正し、息を吸う。
「クロア家へ情報収集に行かせてください!」
あ、僕ってば思ったより大きな声が出た、なんて呑気にビックリ。
自分の声にも驚いたが、普段おっとりとしたオルトが出した声に、同じくらいシスル団長も目を丸くしていた。
あ、人間に戻った?
いや今思うのはそんな事じゃない。
オルトの言葉に、じっと考え込んだシスル団長の返事を待つ。
待つ間、また思い出が蘇ってくる。
何これ死ぬ前じゃないんだから、走馬灯よ今降りてくんなし。
ゆらゆらと体幹の悪い姿勢で立っていると、シスル団長と目があった。
「……そうか、君たちは従兄弟だったな。
よしオルト、すぐに向かってほしい。」
何かを考え込むような仕草をした後に、okが出た。
何を思っているのかわからないが、とりあえず今は気にせず小さく敬礼をする。
今は気にしていられない、一刻も早くハヴィと連絡を取らなきゃ。
急いで自分の上着を腕にかけ、部屋から出ようとする。
「あ、」
団長が何かを言いかけた気がして、出掛けていた扉から部屋を覗き込むと、微笑んだ団長がオルトを見て微笑んでいた。
え、何何で笑ってんの。
獣化の笑顔にドン引いていると、その猛獣は微笑みながらこう言ったのだ。
「私も行こう。」
「え」
何で一緒に?と思ったことが顔に出ていたのかもしれない。
何ならえっと口にも出ていた。
疑問が浮かぶオルトの顔に答えるように、猛獣は人間の顔で微笑見ながら続けた。
「ハヴィは私の婚約者だからな。」
「……え!?」
言っている言葉が理解できない。というか耳から確かに入っているが、頭で処理出来ない状態にその場に立ち尽くす。
呆気に取られ、ポカンと口が開いているのが自分でもわかった。
状況が理解できず、え何にナニどういうこと!?とあたりを見渡すと、狼狽えているのはオルトばかりで、他の団員はウンウンと頷いている。
え、ハヴィから何も聞いてないけど団長と婚約してたの!?まさかそんな?
呆然と驚きすぎて、上着が腕から滑り落ちたのも気がつかないほど、オルトはその場に動けずにいた。
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アルファポリス初投稿です。
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