筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!

謎の人

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2話 しぐれの友愛

プロテインこそ、力の源

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「いけるかい、美羽!」
「言われなくったって!」


 呼び声で我に返った美羽は勢いよく飛び込んできて、猛然とまりあに襲い掛かった。


「安部まりあ、お前は絶対許さない! ぐちゃぐちゃにしてやる!」
「くっ、こんの!」


 まりあも負けじと拳を振り上げ、果敢に応戦する。


「すご~い、いいぞ、美羽! いけいけ~」
「……いや、簡単にはいかないぞ」
「えっ? なんで~?」
「あいつ、生身で美羽と張り合ってる」


 仲間の背中へ声援を送る姫香と対照的に、小咲は警戒の色を深めた。

 戦況はまりあの防戦一方だ。

 美羽から繰り出されるステッキの乱打を捌くので精一杯。

 先程から幾度となく体を叩かれ、かろうじて致命傷を避けている。

 生身のままのまりあが、魔法少女の美羽に対して、だ。

 圧倒的な劣勢に立たされながらも、まりあは決して負けていなかった。


「……過剰な魔力摂取の影響だね」

 
 その理由を、かがみんは冷静に分析する。

〝魔女の卵〟は魔力の塊だ。
 まりあはそんなものを常に供給し続けていた。

 度重なるプロテインの摂取。
 そして筋力増強のための肉体改造。

 まりあは今、人としての限界すらを打ち破り、身体の構造そのものを根本的に作り変えてしまった。

 ひとたび魔力を開放させれば、変身していなくとも、その筋力は人外並みに増強される。


「今のまりあの筋力は人間のそれじゃない。くそ……っ」


 まりあのことを侮り過ぎていた。
 
 どうせ魔女に喰われるだろうと、楽観視してしまった。

 魔獣から魔力を供給できなければ、無力な少女と何も変わらないはずだったのだ。

 今やまりあは、未知の領域に到達した魔法少女だ。

 彼女が秘めたる可能性に対して、あまりに無頓着が過ぎた。

 これ以上の勝手は許さない。
 かがみんは気勢を上げる。 


「いくら素の筋力がすごくても、魔法少女に変身されなければ力負けすることはないよ、美羽!」
「うらあ!」
「うっ、ぐ……っ」


 ステッキに気を取られ、捌き切れなかった鋭い手刀が、まりあの肩を痛打する。

 先の不意打ちはもう利かない。
 勝敗は純粋な力の差で決まる。

 埋め合わせることのできない開きが、着実にまりあの身体を痛めつけていく。

 このままではいけないと焦るまりあだが、腹の底で煮え滾る真っ赤な情熱が、喉元まで湧き上がって来てくれない。

 魔力が足りないのだ。
 プロテインを摂取しなくては!


「まりあちゃん!」


 痛みに呻くまりあの耳に、しぐれの悲鳴が届く。

 ひとり蚊帳の外に置かれながらも、まりあの身を案じて声を上げるしぐれ。

 その足元に、スクイズボトルを見つけた。


「しぐれ、プロテインをっ」
「させるか! 美羽!」
「はあっ」
「きゃあっ!」


 かがみんの助言に従い、美羽は確実にまりあを潰しに来た。

 隙を見せた瞬間を狙ってまりあを突き倒し、瞬く間に地面に組み伏せる。


「うう……っ」
「そんなっ、まりあちゃん、待ってて!」


 まりあの窮状を目の当たりにし、しぐれは思わず駆け出そうとした。


「そこで止まりなさい、しぐれ」


 鋭い牽制の声とともに、美羽が振るったステッキから一条の紫紺の光が走り、しぐれの足元を焼き焦がした。
 魔力を凝縮して放つ魔砲弾だ。
 

「う……、あ……っ」


 突然の閃光に戦き、しぐれは体をつんのめらせて急停止。

 心臓に楔を打たれたかのように硬直する。
 
 
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