筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!

謎の人

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2話 しぐれの友愛

新たなる魔法少女

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 すっかり蚊帳の外にいたしぐれは、目の前の光景に唖然としつつ、それでも控えめに抗議する。


「い、いいの? あんなことしたら怪我とかして……」
「いいんだよ。私はあれくらいの目に遭わされたもんっ」


 ふんっ、とそっぽを向くまりあの傍ら、せめて様子だけでもと思い、動くしぐれ。

 それに待ったをかけるように、かがみんの声が辺りに響いた。


「まったく。相変わらずひどい奴だな、君は」


 遥か下方、校庭から屋上のフェンスを一足で飛び越えて、飛来する三つの影。

 それらを先導するかのように、かがみんは音もなくまりあとしぐれの眼前に舞い戻った。


「僕はしぐれの願いを叶えたいだけだよ。そう、彼女たちのようにね」
 

 人並み外れた跳躍力で空を駆けた影たちは、まるでかがみんの守護者のように、まりあたちの正面に並び立つ。


「ったく。何やってんのよ、白饅頭」
「ねえ~、急に空から落ちて来るんだもん~。びっくりしたよ~」
「はっ、助けを求めて念波を送るだなんて。情けない奴め。切り刻んでやろうか?」

「勘弁してくれ」


 真ん中の金髪が巻き毛を払いながら鬱陶しげに言えば、右から顔を出した眼鏡が間延びした声で同意し、左に立つショートヘアが豪華に装飾された巨大な鋏を掲げ持ち、ジャキンと音立てた。

 三者三様、贅沢にフリルをあしらった派手な色合いの衣装に身を包み、髪形や雰囲気が華々しい。

 ただ、誰も彼もどこか見覚えがあった。


「もしかして、美羽ちゃん?」
「……ちっ」


 しぐれは唖然としながらも、真ん中の巻き毛を指差し、その正体を看破する。

 返ってきたのは、苛立ち交じりの舌打ち。


「その姿って―――、きゃあっ」


 何か言うより先に、しぐれは美羽に突き飛ばされて尻餅をついた。


「気安くあたしを呼んでんじゃないわよ、このグズ」
「しぐれ!」


 すぐさま駆け寄るまりあ。

 しぐれを助け起こすと、美羽を鋭く睨みつける。

 理不尽な仕打ちに対する抗議には目もくれず、美羽はかがみんに不満をぶつけた。


「ちょっと冗談でしょ、かがみん。新しく魔法少女になれそうな奴がいるっていうから来てみれば……。こいつらが魔法少女になるってわけ?」
「そうだよ。正しく言うと、魔法を授けるのはしぐれだけさ」
「はっ、笑えるわ」


 それこそ冗談じゃない、と小馬鹿にする美羽。

 その顔は一ミリも笑っておらず、持ち前の残忍さを眼差しに込めて、不要にしぐれを怯えさせる。

 再びしぐれの前に出たまりあは、改めて三人の魔法少女の顔を見回した。

 なるほど、言われて見れば面影がある。

 しぐれをいじめていた、美羽、小咲、姫香の残虐三人組だ。

 同時に気が付く。
 九つのはずのかがみんの尻尾が三本減っている。

 まだ生え変わっていないところを見ると、どうやら三人を魔法少女にしたのはごく最近のことらしい。


「こんなにたくさん魔法少女を増やしてどうするの? 魔女って、人間でいうところの女の人なんでしょう? すべて打倒してしまったら、魔法生物そのものが生まれなくなるって、あなた言っていたでしょう?」
「遠い未来ではそういうことになるのかもね。けれど構うことはない。僕は今を生きているんだから」


 不信感のままに訊ねれば、かがみんは退廃思想に毒された若者みたいな発言を返してくる。

 呆れて言葉も出なかった。
 
 
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