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2話 しぐれの友愛
水面下の攻防
しおりを挟むキーンコーン。
昼休み前、授業終了の予鈴が鳴ったと同時にまりあは席を立ち、一番後ろの窓際の席へ向かった。
「しぐれちゃん、お昼一緒しよう?」
弁当入れの袋を掲げて、にこやかに誘う。
突然のことに面喰い、しぐれは目をぱちくりと瞬かせた。
「え、まりあちゃん? あっ、えっと。でも……」
「いいから、いいから。よし、行こう」
「え、わ、あ、あのっ?」
まりあは、おろおろと動揺しっぱなしのしぐれの手を引き、容赦なく教室から連れ出した。
廊下へ出ていく二人を見送ったクラス中の女子たちは皆、どういうことかと眉をしかめてひそひそと互いに耳打ちし、そして一様に美羽のご機嫌を盗み見た。
「……ちっ」
密かな注目を受ける中、二人の背中を睨んでいた美羽は、忌々しそうに舌打ちをした。
追手がないことを確認しつつ階段を上がり、まりあは屋上へとしぐれを連れてきた。
真っ直ぐに向き合うと、困惑している彼女の顔の前で両手を合わせた。
「いきなりでごめんね。びっくりさせちゃったかな。様子見しようかとも思ったんだけど、思わず」
「う、ううん。確かに驚いたけれど。でも大丈夫だよ? 今日は何ともなかったし」
「うん、どうなんだろうね……」
慌てて両手を振り、不思議そうに笑みを作ったしぐれに対し、まりあは言葉端を濁す。
それで何となく分かった。
きっと、クラスを取り巻く不穏な空気に気が付いたのだろう。
事情を知っていれば、その中心にいるのが美羽であることも容易に察せる。
現に彼女は授業中、しぐれの方をちらちらと見やり、仲間内でこそこそと密談を交わしていたらしい。
そこでまりあは、動くなら休憩時間が長い昼休みだろうと当たりをつけて、機先を制してしぐれを連れ出したのだ。
「嬉しいな、心配してくれてたんだ?」
しぐれが礼を述べると、まりあは照れたように「えへへ」とはにかみ、堂々と胸を張る。
「友達として当然だよ!」
「友達……」
しぐれは反芻するように、その言葉を舌の上で転がした。
昨日ほど素直に受け取れない。
まりあは、昨日会ったばかりのしぐれを友達だといって、今もこうして気にかけてくれている。
その優しさを嬉しいと思う反面、どこか心苦しい。
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