ゆかりさんとわたし

謎の人

文字の大きさ
上 下
34 / 79
2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて

おかしな謎に喰い付かないでよ……

しおりを挟む
 
 
「―――と、こんな感じ。ここまでどうだった?」


 わたしがそう訊ね、長い話にひとつ区切りを入れます。ゆかりさんは、何やらさらりとスケッチブックに書き加えます。
 あのスケッチブック、もはや何冊使い潰しているのかわかりません。
 その度にプレゼントするのはわたしの役目なので、今度数えておこうかな。

 書き終わった紙面に目を走らせると、


〝みぃちゃんは語りが上手ねえ〟


 なんて、書いてあるものですから。


「いや、ありがとうだけどそうじゃなくて……」


 相変わらず、ゆかりさんの視点というか、物の見方、考え方って良く分かりません。


「どうして今の話を聞いてそういう感想になるの?」


 ゆかりさんはきょとんとするばかり。
〝そう思ったから、そう伝えただけよ?〟とか、屈託なく返してきそうなので、もう追求しません。

 あまり長い話になると混乱するだろうから(わたしが)、ここで一度質問を受け付けることにします。


「さて、ゆかりさん。第一の事件についてあなたはどうお考えですか?」


 芝居がかった口調で訊ねると、ゆかりさんもすぐさまスケッチブックに、


〝そうですねえ……〟


 と書いて見せてくれました。〝……〟まで書き入れるだなんて、すっかり探偵役気分です。
 真っ白な紙面の上を、さらさらと流れるようにペンが走ります。
 さて、名探偵ゆかりさんからの最初の質問は?


〝ひと晩同じ部屋で過ごしたユウトとサヤカ。二人の間には何もなかったのかしら?〟


 わたしはがっくりと頭を垂れます。


「どぉして最初の質問がそれなのー? なかったよ! 何にもなかった!」


 ゆかりさんは真面目な様子でスケッチブックを裏返して、


〝本当? 健全な男女が夜をともにして何もないだなんておかしいわ。謎よね〟


 顎に手を当てる仕草とともにそんなことを伝えて来るものですから、わたしはもう……。


「おかしな謎に喰い付かないでよ……」


 呆れた口調で言ってみましたが、はにかむゆかりさんはとっても楽しそうです。
 このままいつものおしゃべりにしてしまおうかと思ったくらい。話題のきっかけとしては十分でしたし。

 ゆかりさんはひとしきりわたしをからかって満足したのか、話の本筋に関わる質問をスケッチブックに書いてくれました。
 できればからかわないで、すんなり本題に入ってもらいたかったです。
 
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女とあたしとシックス・センス

黒巻雷鳴
キャラ文芸
何も知らない2人の女子高校生たちは、謎多き《超科学研究部》に呼び出される。そこで待っていたのは──。 ※無断転載禁止。

身長48メートルの巨大少女ですけど普通のJKさせてもらっても良いんですか!?

穂鈴 えい
キャラ文芸
身長48mの女子高生春山月乃は、入学式の日に身長43mで身長コンプレックスの美少女白石小鈴と出会った。 みんなから巨女扱いされてきた小鈴は、自分よりも背の高い月乃が小柄扱いしてくれるおかげで次第に心を開いていき、やがて恋に落ちていく。月乃も同じ巨大娘として気楽に仲良くできる小鈴のことが大好きだった。 そんな2人の距離がお互いに近づいていくのだが、月乃に憧れている普通サイズの少女絵美莉に月乃が懐かれてしまい、小鈴にとって気が気ではない日が続いていくことに……。 月乃にとっても、小鈴が憧れているモデルのSAKIことお姫ちゃん先輩(身長51m)という恋のライバル(?)がいて日々不安に苛まれてしまうことに……。 巨大娘専用の校舎は全てのものが大きいから、巨大な月乃や小鈴でもサイズを意識せずに生活できる。 ……はずなのだが、いじめがきっかけで苦手意識を持ってしまった普通サイズの人間が、虫と同等くらいの生物にしか見えなくなった2年生の詩葉先輩(48m)や、巨大化してしまって大好きなピアノが弾けなくなったストレスで街で暴れる身長50mの女子中学生琴音との出会いによって定期的に巨大さを意識させられてしまうことに。 はたして、身長48mの月乃は巨大娘たちに翻弄されずに普通の女子高生として学校生活を送ることができるのか……。 巨大娘要素以外は基本的には日常系百合作品です。(稀に街を壊したりしちゃいますが)

俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~

美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。 母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。 しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。 「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。 果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して-

halsan
キャラ文芸
超限界集落の村役場に一人務める木野虚(キノコ)玄墨(ゲンボク)は、ある夏の日に、宇宙から飛来した地球外生命体を股間に受けてしまった。 その結果、彼は地球外生命体が惑星を支配するための「胞子力エネルギー」を「三つ目のきんたま」として宿してしまう。 その能力は「無から有」。 最初に付喪としてゲンボクの前に現れたのは、彼愛用の大人のお人形さんから生まれた「アリス」 さあ、限界集落から発信だ!

VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern
キャラ文芸
【あらすじ】  VTuber『川崎ばにら』は人気絶頂の配信者。  そんな彼女は金盾配信(登録者数100万人記念)で、まさかの凸待ち事故を起こしてしまう。  15分以上誰もやって来ないお通夜配信。  頼りになる先輩は炎上やらかして謹慎中。  同期は企業案件で駆けつけられない。  後悔と共に配信を閉じようとしていたばにら。  しかし、その時ついにDiscordに着信が入る。  はたして彼女のピンチに駆けつけたのは――。 「こんバニこんバニ~♪ DStars三期生の、『川崎ばにら』バニ~♪」 「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」 「でゅははは! どうも、DStars特待生でばにらちゃんの先輩の『青葉ずんだ』だよ!」  基本コラボNG&VTuber屈指の『圧』の使い手。  事務所で一番怖い先輩VTuber――『青葉ずんだ』だった。  配信事故からの奇跡のコラボが話題を呼び、同接は伸びまくりの、再生数は回りまくりの、スパチャは舞いまくり。  気が付けば大成功のうちに『川崎ばにら』は金盾配信を終えた。  はずだったのだが――。 「青葉ずんだ、川崎ばにら。君たちにはこれからしばらくふたりで活動してもらう。つまり――『百合営業』をして欲しい」  翌日、社長室に呼ばれた二人は急遽百合営業を命じられるのだった。  はたしてちぐはぐな二人の「百合営業」はうまくいくのか? 【登場人物】 川崎ばにら : 主人公。三期生。トップVTuber。ゲーム配信が得意。コミュ障気味。 青葉ずんだ : ヒロイン。特待生。和ロリほんわか娘のガワで中身は「氷の女王」。 網走ゆき  : 零期生。主人公&ヒロイン共通の友人。よく炎上する。 生駒すず  : 一期生。現役JKの実力派VTuber。 羽曳野あひる: 二期生。行動力の化身。ツッコミが得意。 秋田ぽめら : 特待生。グループのママ。既婚者。 津軽りんご : 特待生。ヒロインの親友。現在長期休業中。 八丈島うみ : 三期生。コミュ力お化けなセンシティブお姉たん。 出雲うさぎ : 三期生。現役女子大生の妹系キャラ。 石清水しのぎ: 三期生。あまあまふわふわお姉さん。どんとこい太郎。 五十鈴えるふ: 三期生。真面目で三期生の調整役。癒し枠。

処理中です...