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「面倒なことになったなぁ……」

カミラも最初は友達に囲まれて、楽しく学校生活を送っていた。しかし、ある日を境にカミラは孤立し、最終的には死んだ。

「前世と同じようなことに、したくないのに……」

カミラは、都合のいい生贄みたいなものだったのだ。見せしめに殺すのに、ちょうどよかった。ただ、それだけ。それだけで、私は、死ななければならなかった。

「もう、あんな思いは……」

誰も、カミラに味方なんてしない。だって味方をすれば自分の立場も危うくなるから。そして友人だったはずのみんなは、口をそろえて言った。

『傍若無人ぶりに困っていた』

そんなことをした覚えは、もちろんなかった。でも、誰もそれを正す人間などいない。そして、私は……カミラは、貴族でもないのに貴族のように振舞い、さらには王子に恋慕して婚約者である公爵令嬢を殺そうとしたとして、処刑された。

今の国王と王妃は、その時の人物だ。

「憎まないほうが、無理だよ……」

私は、その公爵令嬢と話をしたこともなかった。きちんと調べればそんなことはわかるはず。けれど、そうしなかったのには理由がある。

理由は、カミラの家であるファーバー家が大きくなりすぎたから。だから、牽制するのにカミラを殺した。本来であれば、一族全員を殺せばいいけれど、そうするには国に打撃が大きい。一切の痛みなく、ファーバー家の勢力を削ぐなら、見せしめに一人、無惨に殺すのがよかった。

そんな権力のいざこざに巻き込まれた結果だった。そしてファーバー家もカミラ一人の犠牲で自分たちが救われるなら、と喜んでカミラを差し出した。別にカミラは一人娘で跡取り、というわけでもなかった、殺されても特に周囲には不都合もない。

「何の因果なのか……貴族に生まれるなんてね」

今も、ファーバー家はある。この国一番の商会で、たくさんの品物を扱う大きなお店をいくつも持っている。そう、カミラという人間がいたことを、葬り去って。

生まれ直した私に家庭教師が付けられてしばらく経った頃。視察という名目で城下へ行ったことがあった。家庭教師の先生は、もういないがとても良い先生で、歴史などもきっちりと教えてくれる人だった。

そんな先生に習ったカミラの死んだ後の話に、私はファーバー家がカミラの存在を消し去ったことを知ってしまった。普通に考えて、わかりたくはないけど、存在を消すということを理解できないわけじゃない。

「でもね……一生懸命に生きたはずの……私は……二度、殺されたんだよ……」

もう、カミラという人間がいたことなど、誰も話しはしない。カミラのお墓さえもないから、誰も死を悼むこともなければ、思い出すこともないのだ。

死んで、誰かの記憶から自身が消えてしまえば、それはまた死ぬのと同じ。私は、意図的に二度、殺された。

「ただの、普通の……女の子だったのに」

全てを背負わされたことを思い出し、悲しさに胸が張り裂けそうだ。けれど、涙は一筋も出て来ることはなかった。

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