転生後も悪役なんてお断りっ!

高福あさひ

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私はエイミー、エイミー・マクミラン。前世では稀代の悪女として死んだけど、今世は波風立てないように生きようと、日々、誰かの顔色を窺っている。今日も、今日とて、人の顔色を見て言葉を決める。

「エイミーと呼んでも?」

「ぜひ、王女殿下」

「ありがとう! エイミーと仲良くなれて嬉しいわ!」

痛む腹を押さえて参加した王宮のお茶会では、見事に王女様にロックオンされた。周囲に合わせて目立たないように、適度に会話へ参加。マクミラン家は下級貴族でもあるので、他の上級貴族にもついでに媚びへつらうのを忘れない。

他にも釣り合う家格のご令嬢はいるのに、ここで王女様は私をロックオンしてしまった。どうしてこうなったし、なんて心でつぶやいたって、誰も助けてくれやしない。それどころか、他のご令嬢方の、なぜお前のような下級貴族が、という視線で身体に穴が開いてしまいそうだ。

王女様は、何か意図でもあるのか、私にばかり話しかけて、他のご令嬢にはほとんど話も振らない。あまりにもあからさますぎる贔屓だった。

「まあ、もうそんな時間? 残念だわ……もっと話をしていたいのだけれど……」

チクチクと感じる視線を耐え、王女様の話し相手という地獄を耐え、ようやくお開きの時間となった。時間いっぱい、私は王女様に捕まっていたのは言うまでもないのだが。

「また、いらしてね、エイミー。ほかの、みんなも」

最後に付けたされた言葉に、ストレスで吐きそうな気持ちになる。マクミラン家は男爵家、貴族の中では一番の下っ端だ。このお茶会に参加していたのは、みな、伯爵家以上のご令嬢だった。すなわち、私はこの中で最低家格の令嬢ということ。

なのに、王女様に目をつけられてしまった。母も父も、きっと喜ぶだろうけど、私にとっては喜ばしくない。王女様と繋がりたい他の家からすると、私は圧倒的な邪魔者。

王宮を辞し、帰りの馬車内で深くため息を吐く。これはまずいことになった、目をつけられないようにしていたはずが、完全に敵を作る状況になってしまった。

「おかえりなさい、エイミー」

「ただいま戻りました、お母さま」

どうだったか、と聞きたそうな母に、疲れたからと押し切って部屋へ籠る。早く対策を打ち出さないと、本当に手遅れになる。

この国は、貴族でも平民でも関係なく、十歳になると学校へ通う義務がある。国立の学校に六年間通い、様々なことを学んでいく。

前世の私、カミラももちろん、学校へ通っていた。カミラは大きな商人の家の生まれで、家庭は裕福だった。そのためか、友人にも困らずそれなりに充実した日々を送っていた。

まあ、卒業式の日に牢獄にぶち込まれて、ささっと処刑コースだったんだけどね。

まず、学校へ通うということは、友人を作る段階で壁に当たることになる。それは貴族社会特有の派閥問題。私はこの派閥のどこに所属するかも決める前に、王女様のお話し相手になってしまったから、どこの派閥からも煙たがられるはずだ。

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