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「早く殺してしまえ!」
「やっと稀代の悪女が死ぬのね!」
叫ぶ群衆、私はその中心部である処刑台の上にいた。稀代の悪女なんて叫ばれて、みんなにその死を喜ばれて。一体私が何をしたというのだろうか。
もしも、もしも……本当に神様がいるのなら、次は幸せな人生を送りたい。聖女を殺そうとしたと、罪をでっちあげられて、違うと否定しても誰も聞きやしない。私はあっという間に罪人になり、高潔なる聖女の殺害を企てたとして、処刑される。
「最期に言い残すことはあるか」
「……信じて、ほしかった」
言い残したいことは、たくさんある。でも、何を言えばいいのか、直前になってわからなくなって、最期に言えたのは、愚かにも信じてほしかった、それだけだった。
**********************************
「っは! また……あの、夢……」
自分が死ぬ夢を、見た。正確には、前世の自分が死ぬ夢だけど。
「もう、私はカミラじゃない……今の私は、エイミー……エイミー・マクミラン」
前世ではカミラという女性だった私は、悪女として処刑された。聖女を殺そうとした罪によって、火刑に処されたはずだった。今はエイミーとして、前世の記憶を持ったまま生まれて、もう十年になる。
もう十年も、経つのだ、己が前世で死んでから。それなのに、未だに身を焼かれる熱さと痛みを思い出せる。石を投げつけられる痛みも、誰にも信じてもらえなかった心の痛みさえも、まだ残っている。
きっと、これから先も私はこの記憶も痛みも忘れることなどできないのだろう。
「前みたいに、私は死にたくない……だから、平穏無事に生きるためにも……頑張らなくちゃ。波風立てないように……」
前世では家族に恵まれなかったが、今世の家族はどうかわからない。前世と同じように、簡単に裏切られるかもしれない。そう思うと、信じたくても信じられなかった。ゆえに、どうかわからない、ということなのだ。
今は、ひたすら顔色を窺い、誰かの機嫌を損ねるようなことはしないように、と常に気を張って生活をしている。今世の家族が悪い人たちではないことは、なんとなくわかっているけれど、人は変わるから。
「エイミー、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
朝、あまり顔色が良くないことを、今世の母に不安そうにされるが、それを私はいつも浮かべる笑顔で対処した。大丈夫、少しでも隙を見せてはいけない、そう言い聞かせて。
「今日は王宮主催のお茶会があるわ。王女殿下ともお会いできるチャンスよ、頑張りなさい」
「はい、お母さま」
転生した私が生きているのは、何の因果なのか、死んだ国だ。そんな、自分を殺した国の王女と仲良くなんて、果たしてできるのかと言われると、明らかに無理である。心の中で、無理だと即答しながら母に笑顔で、返事をした。
「早く殺してしまえ!」
「やっと稀代の悪女が死ぬのね!」
叫ぶ群衆、私はその中心部である処刑台の上にいた。稀代の悪女なんて叫ばれて、みんなにその死を喜ばれて。一体私が何をしたというのだろうか。
もしも、もしも……本当に神様がいるのなら、次は幸せな人生を送りたい。聖女を殺そうとしたと、罪をでっちあげられて、違うと否定しても誰も聞きやしない。私はあっという間に罪人になり、高潔なる聖女の殺害を企てたとして、処刑される。
「最期に言い残すことはあるか」
「……信じて、ほしかった」
言い残したいことは、たくさんある。でも、何を言えばいいのか、直前になってわからなくなって、最期に言えたのは、愚かにも信じてほしかった、それだけだった。
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「っは! また……あの、夢……」
自分が死ぬ夢を、見た。正確には、前世の自分が死ぬ夢だけど。
「もう、私はカミラじゃない……今の私は、エイミー……エイミー・マクミラン」
前世ではカミラという女性だった私は、悪女として処刑された。聖女を殺そうとした罪によって、火刑に処されたはずだった。今はエイミーとして、前世の記憶を持ったまま生まれて、もう十年になる。
もう十年も、経つのだ、己が前世で死んでから。それなのに、未だに身を焼かれる熱さと痛みを思い出せる。石を投げつけられる痛みも、誰にも信じてもらえなかった心の痛みさえも、まだ残っている。
きっと、これから先も私はこの記憶も痛みも忘れることなどできないのだろう。
「前みたいに、私は死にたくない……だから、平穏無事に生きるためにも……頑張らなくちゃ。波風立てないように……」
前世では家族に恵まれなかったが、今世の家族はどうかわからない。前世と同じように、簡単に裏切られるかもしれない。そう思うと、信じたくても信じられなかった。ゆえに、どうかわからない、ということなのだ。
今は、ひたすら顔色を窺い、誰かの機嫌を損ねるようなことはしないように、と常に気を張って生活をしている。今世の家族が悪い人たちではないことは、なんとなくわかっているけれど、人は変わるから。
「エイミー、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
朝、あまり顔色が良くないことを、今世の母に不安そうにされるが、それを私はいつも浮かべる笑顔で対処した。大丈夫、少しでも隙を見せてはいけない、そう言い聞かせて。
「今日は王宮主催のお茶会があるわ。王女殿下ともお会いできるチャンスよ、頑張りなさい」
「はい、お母さま」
転生した私が生きているのは、何の因果なのか、死んだ国だ。そんな、自分を殺した国の王女と仲良くなんて、果たしてできるのかと言われると、明らかに無理である。心の中で、無理だと即答しながら母に笑顔で、返事をした。
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