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31 知らなかったこと

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あれから、私は藤堂家と先生を交えて今私の身に起こっていることを話し合った。まずはなぜ藤堂家が私の状況を知るに至ったのかを聞くことにした。

「ああ、それならあなたの家に遊びに行ったのよ。その時にあなたが華乃ちゃんを苛めてるって聞いてね。学校でも雅人が後輩に聞いたってうちで話題になったの」

他人様の家の話題になるなんて、なんてことを家族はバラしてんだ。とりあえず、顔が歪みそうになるのをこらえて話を聞けば。華乃の悲劇のヒロイン思考っぷりにおかしいと気付いた藤堂夫妻に、もとから学校で瑠香と繋がっていた雅人さんもあまりの噂などのおかしさに私の家族が仕出かしたことを問い詰めた結果、仕送りカットなどの暴挙が発覚。

「思わず手を出しそうになったわよ。一人の話を鵜呑みにして、薫乃ちゃんの話を聞きもしないで生活するのに大切な仕送りをカットするなんて」

藤堂家はまず、噂などが立った時にその信ぴょう性を確かめるのだという。今回、華乃は私をターゲットにして噂を流したせいで藤堂家を敵に回した。それもそうだろう、流した噂は嘘で塗り固められた噂なのだから。

「それに、僕たちはね薫乃ちゃんが何よりも努力してきたことを知っている。だから同じ血を分けた姉妹だとしても、あんな嘘を流す君の妹やそれに騙されて真実を見もしない三宮夫婦に腹を立てているんだよ」

藤堂の小父様まで私に優しく微笑みながら怒りを露わにする。先生も気づけなかったことを悔いていて。





「薫乃ちゃん、私たちにお金の援助を頼むのは大変だったでしょう?あなたがお金の援助を頼んできたことがおかしいと思った一番の要因よ」

やっぱり、というか当たり前というか、援助を頼んだことは異変を知らせているようなものだったらしい。

「ごめんなさい、私のせいでこんなことになってしまって」

「それは違うわ。異変に気がつかなければあなたの身に何かが起こっていた。それを防ぐことができて私たちは本当によかったと持っているの」

さっき泣いたばかりなのに、こんなにも大切に想われていてまた涙が溢れてくる。隣に座っている雅人さんは手を握ってくれている。

「さて、それでね本題があるんだけどね。薫乃ちゃんは家族をどうしたい?あなたのことをどこぞの富豪に売り飛ばそうとした家族を」

藤堂夫人は一体、どこまで知っているのだろうか。私ですらも知り得なかった話をされて、私は泣きながら混乱した。没落しなくたって私が売られる未来は変えられなかったことにも悲しくなった。







「あの、私どこに売り飛ばされるんですか」

「大丈夫だ、どこにも行かせはしない」

ギュッと拳を握って話を聞くと、すかさず雅人さんが手をさらに握ってくる。

「どうしてそんなことになってたんですか」

「お前の噂を調べていくうちに、お前の家でそんな馬鹿馬鹿しい話が出ていたのを知った」

雅人さんが代わりに話をしてくれた。噂の信ぴょう性を確かめるために三宮家に遊びに来るという名の情報収集に来た際に、華乃がかんしゃくを起こしているところに遭遇。そこで「いつになったら薫乃を売るのよ!!」と怒鳴り散らす華乃の声を聞いた。それで心配して急遽、今回の来訪を決定したのだという。





『薫乃、あなたは一度日本に戻ってこれからのためにも家族とけじめをつけてきなさい』

「先生…」

私を売ろうとしている華乃のいる家には、もう二度と帰ることできないだろう。たとえ誤解が解けたとしても、華乃がいる限り帰れない。それは変わりない事実だ。

「私たちも協力するわ」

藤堂夫人がそう言って微笑んでくれた。私はその言葉を胸に、帰国することを決めた。

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