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12 彼の母親は大ファン -藤堂雅人-

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今回は藤堂雅人視点になります。





 「ね、雅人。薫乃ちゃん、すごかったわね。あの年であれだけできるのって天才よね!!」

 「そうだな」

 さっきから何度目だと言いたくなる会話がまた始まった。三宮の双子のご令嬢で姉の三宮薫乃のピアノの才能に惚れ込んだらしく、さっきからすごかったしか言わない母親。

「あれほどの腕前ならすぐにでも演奏家としてデビューできるでしょうに…なんだかもったいないわね」

たしかに、小学生にして指の届かない範囲までカバーしつつ完璧になおかつ人を引き込むような演奏ができるのに海外留学すらしないのはもったいない。



「だけど、彼女はまだ小学校低学年だから海外はまだ」

まだ早すぎるとさえ思う。あれほどの腕前で、幼いながらも整った容姿を持っている三宮薫乃。児童会にも入れるほどには優秀な頭脳を持っている。学校でも噂になるほどには天才ならば海外の大学だって行けるかもしれない。



「そうねぇ、まだ小学校低学年だものね。親元を離れるのは寂しい年頃よね」

一人喋る母親にうんうんと頷きながら、薫乃のことについて考える。児童会でも目立った姿はなく優秀な人材としてクラスをまとめていると先生から聞いている。児童会会長として先生と話をすることも多いが、三宮家の双子の話はよく聞く。出来のいい姉と、普通の妹の話は学校では有名だ。言い方は悪いが片方が突出した才能を持っていると、そうでない方は悪目立ちをする。







 「母さん、また聞かせてもらえたらいいね」

 どうせ家ぐるみの付き合いになる、それならきっと彼女の演奏を聴く機会はあるはずだ。彼女は優しそうに見えたからおそらく聞かせてくれ、と言われたら聞かせてくれるだろう。

特に初めて聞かせてもらった時なんて、三宮のご当主が俺たちを連れて行くことで断られないようにしていたし。

「そうね、楽しみにしてるわ」

俺は珍しくこの先の楽しみになりそうだと思っていた。



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