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朝、目が覚めて呼び鈴を鳴らすのもめんどくさかった私は食事もせずに追加された公務を始めた。やはり食事をしない習慣がなかったので、途中からお腹がすいて仕方がなかった。しかし、それを気にしているほど余裕もなかったのでそのまま公務を続けた。
「失礼いたします、報告書をお持ちいたしました」
「どうぞ」
宰相が持ってきた事後報告書類の第一陣が届いたようで、入室を促してさっそくそれを受け取った。ぱらりとめくって大まかに目を通し、次の書類も受け取る。すべてを受け取って、また再度取りに来てほしいと伝えた。
「うん、調査書類に不備なし。私が受けた報告もちゃんと裏が取れたようね。これなら証拠として問題はないでしょう」
一つひとつ、確認をして署名を入れる。何十枚にも及ぶそれらにサインをするのは結構、大変だけど必要な仕事だ。
「処分は降格が妥当、か。まあ、そうでしょうね」
メイベル侯爵は白を切ったようだが、その側近がこのことを把握していながら王に伝えなかったことを吐いたようだ。それに王妃付きの侍女も同じ。その責任を選んだ侯爵がとらされるのも当然のこと。
「王妃は……、そう……、ご実家に戻されるのね」
本件に関わったすべての人間が何らかの処罰を受ける形となっている。それも報告書を見る限りでは処分も妥当と言える。でもここからは私の仕事はない。決めるのは父だ。
「あの子たちの後見は当たり前ながらお父さまね。うん、異議なし」
書類のすべてに同意したため、サインを再びする。そして午前中に終わらせるべき内容はすべて終了したので、宰相に渡して少しの休憩を入れる。紅茶の一つでもほしいところだったけれど、わざわざ呼びつけて入れさせるのも面倒だ。
備え付けの水差しから水を取り、それを飲み干す。ずいぶんと喉が渇いていたようですぐに半分ほど消費してしまった。
「ああ、そういえばあの子たちに一日のあり方を教えておかなくちゃ」
そんなこんなと、あれもこれもといろいろ手を出しているうちに夜になり、連日のように公務と授業、予習復習などに追われることになった。
当然ながら呼ばないと侍女も来ないので食事も疎かになる。レイラが戻ってくるまでには何とかしたいが、最近鏡を見ると自分がやつれたように思うのは気のせいではないだろう。
「はい、どうぞ」
コンコン、とノック音がして入室を許可する。入ってきたのはあの護衛騎士だった。さすがに夜分遅くにやってくるとは思わなかったため、少しどころかだいぶ驚いてしまった。
「恐れながら、アイリーン王女殿下。このままではお身体を崩しかねません。どうかお休みください」
「あなたの言うとおりね。体調を害する前に休みます、忠告をありがとう」
「いえ、出すぎた真似をいたしました。お許しください」
「よいのです、わかっていますから」
顔を僅かに伏せて自嘲する。私は王女としてはまだまだだと言われているようだ。
「それでは、これで失礼いたします」
「ええ、ありがとう」
護衛騎士も退室し、私はそのまま着替えてベッドにダイブする。はしたない真似だと分かってはいたが、前世でそう言った行動をしていた分、抵抗はない。
「明日も、頑張らなくちゃ。明日は護身術訓練あるし……」
明日こそは朝食をきちんと食べねば、と思って眠った。
「失礼いたします、報告書をお持ちいたしました」
「どうぞ」
宰相が持ってきた事後報告書類の第一陣が届いたようで、入室を促してさっそくそれを受け取った。ぱらりとめくって大まかに目を通し、次の書類も受け取る。すべてを受け取って、また再度取りに来てほしいと伝えた。
「うん、調査書類に不備なし。私が受けた報告もちゃんと裏が取れたようね。これなら証拠として問題はないでしょう」
一つひとつ、確認をして署名を入れる。何十枚にも及ぶそれらにサインをするのは結構、大変だけど必要な仕事だ。
「処分は降格が妥当、か。まあ、そうでしょうね」
メイベル侯爵は白を切ったようだが、その側近がこのことを把握していながら王に伝えなかったことを吐いたようだ。それに王妃付きの侍女も同じ。その責任を選んだ侯爵がとらされるのも当然のこと。
「王妃は……、そう……、ご実家に戻されるのね」
本件に関わったすべての人間が何らかの処罰を受ける形となっている。それも報告書を見る限りでは処分も妥当と言える。でもここからは私の仕事はない。決めるのは父だ。
「あの子たちの後見は当たり前ながらお父さまね。うん、異議なし」
書類のすべてに同意したため、サインを再びする。そして午前中に終わらせるべき内容はすべて終了したので、宰相に渡して少しの休憩を入れる。紅茶の一つでもほしいところだったけれど、わざわざ呼びつけて入れさせるのも面倒だ。
備え付けの水差しから水を取り、それを飲み干す。ずいぶんと喉が渇いていたようですぐに半分ほど消費してしまった。
「ああ、そういえばあの子たちに一日のあり方を教えておかなくちゃ」
そんなこんなと、あれもこれもといろいろ手を出しているうちに夜になり、連日のように公務と授業、予習復習などに追われることになった。
当然ながら呼ばないと侍女も来ないので食事も疎かになる。レイラが戻ってくるまでには何とかしたいが、最近鏡を見ると自分がやつれたように思うのは気のせいではないだろう。
「はい、どうぞ」
コンコン、とノック音がして入室を許可する。入ってきたのはあの護衛騎士だった。さすがに夜分遅くにやってくるとは思わなかったため、少しどころかだいぶ驚いてしまった。
「恐れながら、アイリーン王女殿下。このままではお身体を崩しかねません。どうかお休みください」
「あなたの言うとおりね。体調を害する前に休みます、忠告をありがとう」
「いえ、出すぎた真似をいたしました。お許しください」
「よいのです、わかっていますから」
顔を僅かに伏せて自嘲する。私は王女としてはまだまだだと言われているようだ。
「それでは、これで失礼いたします」
「ええ、ありがとう」
護衛騎士も退室し、私はそのまま着替えてベッドにダイブする。はしたない真似だと分かってはいたが、前世でそう言った行動をしていた分、抵抗はない。
「明日も、頑張らなくちゃ。明日は護身術訓練あるし……」
明日こそは朝食をきちんと食べねば、と思って眠った。
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