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「ユーニス、大丈夫だ」
「はい」
過密スケジュールの授業をこなし、先生方にもお墨付きをいただいて挑むお披露目。皇女としての顔見せと同時に婚約発表をするので、入場はレイフ様と一緒だ。
「この度は我がアルムテア皇室に新たな皇女が誕生した。名を、ユーニス・アルムテア。先代皇帝の娘、エルシー皇女の娘である。私の従妹でもあったエルシーは知っている者もいるだろうが、隣国リリム王国のエインズワース辺境伯家へ嫁いだ。しかし……」
名を呼ばれて、身に着けた美しい所作で礼をする。紹介されているのは私なので、レイフ様は私の斜め後ろに立ったまま。そのままお父さまは私とレイフ様の出会いまでを、感情をしっかりと込めて伝えて、私の婚約も発表する。
「この場で発表するのもいかがなものかとは私も考えたが、思いあう二人を引き裂くような真似は私にはできない。よって、ここにアルムテア帝国第一皇女、ユーニス・アルムテアとウェイン公爵家当代公爵、レイフ・ウェインとの婚約も発表する」
ついに、レイフ様も紹介されて私との関係性が告げられた。事前に通達で匂わせてはいたが、正式な発表ではなかったので、参加者の中には我こそは、と画策する者もいただろう。でも、こうして正式に宣言が出た以上、簡単に破棄することはできなくなる。
それこそ、皇帝であるお父さまが、言外に他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろ、と釘を刺しているわけだから、表立ってとやかく言う輩はいなくなるはずだ。
今回、リリム王国は招待されなかった。その意味がわからないほど、ここにきている招待客は馬鹿でも愚かでもない。その程度が理解できるのであれば、お父さまも言外に含めた言葉の意味も、正確に理解ができる。
「ユーニス、私と踊っていただけますか」
無事に私が皇女としての顔見せを終え、今はもう舞踏会となっている会場。皇族の一員となった私は、ファーストダンスを婚約者であるレイフ様と踊った。次は誰と踊ることになるか不安に思っていると、シリル兄さまにダンスを申し込まれた。
「喜んで」
微笑むシリル兄さまの手を取り、会場の真中へ歩き出す。さすが皇子として教育を幼い時から施されていただけある。私の付け焼刃程度しかないダンスの技術を、さりげなくカバーして何事もないように見せてくれる。
「ユーニスはダンスが上手ですね」
「私はまだまだです。シリル兄さまのダンスがお上手だから、私もこんなに踊れるだけ」
「はは、ユーニスは本当に謙虚だ」
談笑しながらダンスをするなんて、そんな余裕は私だけならなかった。シリル兄さまのリードがあってこその余裕だ。
「次は、イーデン兄上で、その次はイアン兄上ですよ。始まったばかりですから、楽しんでくださいね」
「はい、シリル兄さま」
シリル兄さまからイーデン兄さまへと私のダンスの相手が変わる。イーデン兄さまも、普段はのんびりとしているがダンスは普通にできるらしい。国内トップクラスの騎士で、満場一致の元帥として選ばれているだけある。運動神経がいいので、こちらもリードが上手だ。私に難しいと思わせるような動きをしない。
「ユーニス、今日も可愛いねぇ」
「イーデン兄さまはカッコいいです。みんな、兄さまたちを見てる」
「あはは、まあそれはみんな目的があるからねぇ」
「その目的に関しては、何とも言えませんね」
「だよねぇ」
余裕を持たせるダンスをしてくれるイーデン兄さまのおかげで、シリル兄さまの時と同じように雑談を交える。たったそれだけの姿でも、私と兄さまたちの仲がいいことは伺えるので、私にも取り入ろうとする視線が多い。
「次はイアン兄さんだよ」
あっという間にイーデン兄さまとも踊り終え、最後に待っているイアン兄さまの場所へ連れていかれる。満を持して、という感じで出てきたイアン兄さまは、私を花開くような笑顔でダンスに誘う。
「さあ、ユーニス。俺とも踊ってくれるかい?」
「はい、イアン兄さま!」
イアン兄さまに今度は相手が変わり、クルクルと先ほどよりもテンポの速い音楽に合わせて踊る。三人とも踊る曲は違ったが、みんなリードが上手なので、どの曲でも踊りやすい。
「今日のドレス、すごく似合っているね。さすが、私たちの妹だ。可愛い」
「ありがとうございます、イアン兄さま」
「さて、このダンスが終われば、ユーニスも大変だな」
「やはり、そういうことですか」
「まあ、これだけ牽制したなら大丈夫だとは思うけどね」
「少し、やりすぎでは?」
「このくらいを飛び越えられなければ、レイフからユーニスを奪うことはできないからね」
「イアン兄さま……」
アップテンポな、ノリやすい曲。会場で踊っている他の組も楽しそうである。私が立て続けに兄さまたちと踊った理由がわかって、なかなか過保護だな、と思う。
「はい」
過密スケジュールの授業をこなし、先生方にもお墨付きをいただいて挑むお披露目。皇女としての顔見せと同時に婚約発表をするので、入場はレイフ様と一緒だ。
「この度は我がアルムテア皇室に新たな皇女が誕生した。名を、ユーニス・アルムテア。先代皇帝の娘、エルシー皇女の娘である。私の従妹でもあったエルシーは知っている者もいるだろうが、隣国リリム王国のエインズワース辺境伯家へ嫁いだ。しかし……」
名を呼ばれて、身に着けた美しい所作で礼をする。紹介されているのは私なので、レイフ様は私の斜め後ろに立ったまま。そのままお父さまは私とレイフ様の出会いまでを、感情をしっかりと込めて伝えて、私の婚約も発表する。
「この場で発表するのもいかがなものかとは私も考えたが、思いあう二人を引き裂くような真似は私にはできない。よって、ここにアルムテア帝国第一皇女、ユーニス・アルムテアとウェイン公爵家当代公爵、レイフ・ウェインとの婚約も発表する」
ついに、レイフ様も紹介されて私との関係性が告げられた。事前に通達で匂わせてはいたが、正式な発表ではなかったので、参加者の中には我こそは、と画策する者もいただろう。でも、こうして正式に宣言が出た以上、簡単に破棄することはできなくなる。
それこそ、皇帝であるお父さまが、言外に他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろ、と釘を刺しているわけだから、表立ってとやかく言う輩はいなくなるはずだ。
今回、リリム王国は招待されなかった。その意味がわからないほど、ここにきている招待客は馬鹿でも愚かでもない。その程度が理解できるのであれば、お父さまも言外に含めた言葉の意味も、正確に理解ができる。
「ユーニス、私と踊っていただけますか」
無事に私が皇女としての顔見せを終え、今はもう舞踏会となっている会場。皇族の一員となった私は、ファーストダンスを婚約者であるレイフ様と踊った。次は誰と踊ることになるか不安に思っていると、シリル兄さまにダンスを申し込まれた。
「喜んで」
微笑むシリル兄さまの手を取り、会場の真中へ歩き出す。さすが皇子として教育を幼い時から施されていただけある。私の付け焼刃程度しかないダンスの技術を、さりげなくカバーして何事もないように見せてくれる。
「ユーニスはダンスが上手ですね」
「私はまだまだです。シリル兄さまのダンスがお上手だから、私もこんなに踊れるだけ」
「はは、ユーニスは本当に謙虚だ」
談笑しながらダンスをするなんて、そんな余裕は私だけならなかった。シリル兄さまのリードがあってこその余裕だ。
「次は、イーデン兄上で、その次はイアン兄上ですよ。始まったばかりですから、楽しんでくださいね」
「はい、シリル兄さま」
シリル兄さまからイーデン兄さまへと私のダンスの相手が変わる。イーデン兄さまも、普段はのんびりとしているがダンスは普通にできるらしい。国内トップクラスの騎士で、満場一致の元帥として選ばれているだけある。運動神経がいいので、こちらもリードが上手だ。私に難しいと思わせるような動きをしない。
「ユーニス、今日も可愛いねぇ」
「イーデン兄さまはカッコいいです。みんな、兄さまたちを見てる」
「あはは、まあそれはみんな目的があるからねぇ」
「その目的に関しては、何とも言えませんね」
「だよねぇ」
余裕を持たせるダンスをしてくれるイーデン兄さまのおかげで、シリル兄さまの時と同じように雑談を交える。たったそれだけの姿でも、私と兄さまたちの仲がいいことは伺えるので、私にも取り入ろうとする視線が多い。
「次はイアン兄さんだよ」
あっという間にイーデン兄さまとも踊り終え、最後に待っているイアン兄さまの場所へ連れていかれる。満を持して、という感じで出てきたイアン兄さまは、私を花開くような笑顔でダンスに誘う。
「さあ、ユーニス。俺とも踊ってくれるかい?」
「はい、イアン兄さま!」
イアン兄さまに今度は相手が変わり、クルクルと先ほどよりもテンポの速い音楽に合わせて踊る。三人とも踊る曲は違ったが、みんなリードが上手なので、どの曲でも踊りやすい。
「今日のドレス、すごく似合っているね。さすが、私たちの妹だ。可愛い」
「ありがとうございます、イアン兄さま」
「さて、このダンスが終われば、ユーニスも大変だな」
「やはり、そういうことですか」
「まあ、これだけ牽制したなら大丈夫だとは思うけどね」
「少し、やりすぎでは?」
「このくらいを飛び越えられなければ、レイフからユーニスを奪うことはできないからね」
「イアン兄さま……」
アップテンポな、ノリやすい曲。会場で踊っている他の組も楽しそうである。私が立て続けに兄さまたちと踊った理由がわかって、なかなか過保護だな、と思う。
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