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「では、また晩餐会で」

「はい、イクセル様」

少しの時間、話をしていたがそろそろ私が晩餐会の支度を始めるころになると、イクセル様は部屋を離れていった。彼と話をするのは好きだ、何せ話すこと自体が楽しいと思えるから。

「お嬢様、お支度をしましょう」

「お願いします」

本国からついてきてくれている、ベレスフォード家のメイドさんに磨き上げてもらい、ドレスアップをする。美しいドレスに負けないように、私もこのドレスを着るに相応しい存在でなければ、と気合を入れて晩餐会へ臨む。

「お気をつけていってらっしゃいませ、お嬢様」

「はい、行ってまいります」

今日もエスコート無しの入場に、視線を集めたがいつもの事なので凛と背筋を伸ばして歩く。

「フェリシア・ベレスフォード公爵令嬢、来てくれて嬉しいよ」

「お招きいただき、大変光栄でございます。皇帝陛下」

「ははっ、そんな堅苦しいのはよしてくれ。気楽にいこう、そんなに固い会じゃないから」

「お気遣い、感謝いたします」

皇帝陛下へと無事に挨拶をすることができ、少し話をする。皇帝陛下にも緊張しているのを気遣われてしまい、恥ずかしさが込みあがってくる。しかし、ここでそれも出してはいけないので、今後は気をつけようと、まずは自分を戒めた。

「お久しぶりです、フェリシア嬢!」

「フェリシア嬢、この情勢についてどう思われますか」

「あなたは、この鉱山をどう扱う?」

いろいろな人に話しかけられて、それを笑顔で一つひとつ、丁寧にさばいていく。やはり直前に情報を整理しておさらいしておいてよかった、話しかけてくる方々はみんな高度な話題ばかりを持ち出してくる。

その話題に少しでも遅れるようなそぶりは見せられないから。

「さすがフェリシア嬢だ」

「ありがとう、フェリシア嬢」

この晩餐会への参加者は外交色が強いことから、圧倒的に男性が多く女性は既婚者としてのパートナーが多い。私のような一人で参加しているご令嬢なんていないに等しいほどだ。

いたとしても、他国の王族だし、私みたいにエスコート無しで入場することなどありえないけれどね。

「フェリシア嬢、大丈夫か?」

「イクセル様、お気遣いいただきありがとうございます」

だいぶ、話も落ち着いてきて、一人でいられる時間ができたので、夜風に当たろうとバルコニーに出る。綺麗な月の光が差し込んでいて、バルコニーから見える庭園はそれはもう、ため息が出るほど美しい。

「今日もすごかったな」

「私のような者にも、意見を聞いていただけるなんて、本当にありがたいことです。とても勉強になります」

同じように話を終えたイクセル様がバルコニーにやってきて、労わってくれる。彼の手にはグラスが二つあり、一つを私に差し出した。ありがたくグラスを受け取って、気を少し休める。

今日もすごい囲まれていた、ということに対して私はいつも思っていることを述べた。私は結婚適齢期の貴族令嬢。一応、婚約者はいるものの、一度も公の場で私をエスコートしたことはない。

それの意味がさすことを、知らない人は貴族社会にはいないからお察しである。だから、余計に私は王国を代表する者として相応しいかどうかを試されている。こんな小娘に政治の話を振ってくるなど、そういうことだ。

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