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「ようこそ、フェリシア・ベレスフォード公爵令嬢」

「お招きいただき、大変光栄です」

数時間の旅の道中、情報のおさらいをしていればあっという間に時間は過ぎ去り、気が付けばランドリア帝国のお城へ到着していた。帝国の皇太子殿下自らが出迎えてくれるのを見ると、本当に婚約者である王太子のクズっぷりが浮き彫りになってため息が出る。

「フェリシア嬢、お部屋へとご案内します」

「ありがとうございます、皇太子殿下」

一番、自分が綺麗に見える鉄壁の笑みを浮かべて、皇太子に着いて行く。何度か、ランドリア帝国には外交で訪問したことがあるが、いつ見てもお城がすごいのだ。

「それでは、晩餐会まで、ゆったりとお過ごしください」

「お気遣い、感謝いたします」

完璧と名高い淑女の礼を取って皇太子を見送り、部屋で少し休憩を取る。もう、婚約者として選ばれてから二年が経った。ということは、逆算すればあと四年しかないのだ、私たちが生き残るか、死ぬかまでに。

「お嬢様、ブロムストランド公爵子息イクセル様がご挨拶にいらっしゃっています。どうなさいますか?」

「応接間へお通ししてください」

与えてもらった部屋はとても広く、こうして来客などがあることから、応接間もついている部屋を貸してもらえるなど、破格の待遇を受けている。

「ようこそ、ランドリア帝国へ、フェリシア嬢。到着早々で申し訳ないが、挨拶をと思ってな」

「こちらこそ、ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません、イクセル様。このような大きな外交に呼んでいただけて、とても光栄に思っております。緊張は、してしまいますが……」

わざわざご挨拶に来てくれたのは、ランドリア帝国のブロムストランド公爵子息、イクセル・ブロムストランド様。彼とはまだ外交に参加し始めたばかりの、王太子の婚約者に選ばれて数か月の頃に出会った。

外国の夜会などに参加すると高確率で出会う、ランドリア帝国皇位継承権第二位の高貴なお方。初めてお会いした時に、話が合い意気投合、恐れ多くもお手紙のやり取りをさせていただいている、友人の仲だ。

「大丈夫だ、フェリシア嬢。今日はそこまで堅苦しいものではないからな……ところで、王太子殿はどうした?」

仲がいいだけに、ずばりと切り込まれた王太子の話題。答えにくいが、嘘も言えないのでどうしたものかと頭を悩ませる。

「それが……数日前から体調を崩されたようで、療養中なのです」

そういえば、本人から体調が悪いから一人で参加しろと言われたことを思い出し、それを伝えた。私はそれが嘘だと分かっているけれど、聞いた言葉をそのまま伝えたのだから、嘘ではない。

「あ、ああ、なるほどね」

「大変失礼を、申し訳ございません」

それだけで、気づく人は気づく。王太子はめったに外交へは参加しないから、聡い人なら仮病だってわかってしまうのだ。

「いいや、フェリシア嬢のせいではないよ」

苦笑いを浮かべるイクセル様に、内心、王太子は相変わらずだな、とあきれる。興味もないけれどね。

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