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スウっと息を吸って、冷静になる。私たちを連れていってる最中だったようで、敵の数は多くない。
「その程度で、私に勝てると思うな」
母も父も、私を愛してはくれなかった。だけど、従者としての教育はどれだけ厳しくとも完璧に行われた。その中には当たり前のように主人を守る武術だって組み込まれている。自分を盾にして主人を生かす、主人を庇いながら戦う方法、なんでもやってきた。これを失敗すれば死ぬって思うような訓練だっていくつもやってきた。主様自身、武術を嗜んでおられるし、誘拐されるようなこともなかったから私の出番はなかったけど、もしも女性の侍女として付いていたのであれば、私はその訓練で学んだことを発揮した可能性はある。
「ノア!!」
「イザベル!!」
後ろから主様たちの声がする。幻聴などではないことを確認して、イザベル様を後ろへ突き飛ばす。
「ノア!!」
「行ってください!!イザベル様!!」
イザベル様を捕えようとする追っ手を蹴りで沈め、前の敵に向き直る。憲兵が来るまでは持ちこたえなければ、そう思った。
「お嬢様、もう大丈夫です」
その言葉と共に、ぐいっと後ろに手がひかれ身体を引き寄せられそうになる。でも信じられるほど頭はお花畑ではないので、それを警戒して振り払うようにいつでも戦えるようにと後ろを振り向けば来ているはずがないと思っていた憲兵だった。
「大丈夫です、お嬢様」
私の名前を知らないからか、お嬢様と言ってくる憲兵は私を庇って主様のもとへ連れていってくれた。その人以外にも来ていた憲兵たちによってあっけなく捕り物が終わっていく。
「ノア!!無事か!?」
「はい、主様」
「よかった……。すまない、遅くなってしまって」
肩を震わせる主様に抱きしめられて、ようやく張り詰めた糸が切れるように安心する。ああ、私はこんなにも弱かっただろうか。
「いいえ、助けに来ていただけてよかった……」
「当たり前だろう。お前は大事な俺の妻なんだから」
「あ、主様……」
急に気恥ずかしくなって、俯いてしまう。そんなにもまっすぐに見つめられて、言葉を向けられるなんてことは、ほとんどなかったから。
「だいたいのことは把握している。ノア、イザベルを守ってくれてありがとう」
「もったいなきお言葉にございます、ランドルフ様」
「でも、どうしてあのタイミングで外へ出たの?」
イザベル様がランドルフ王子のそばまでやってきた。そして私に聞いてきた。たしかに、イザベル様からすれば、私がどうしてあの瞬間に外へ出たのかはわからないだろう。
「実は、外の景色が一瞬だけ見えまして……。そこから今いる場所を予想して、周囲に逃げられる場所もありそうだと判断したので」
「さすが、だな」
捕り物が完了し周囲の安全も確保され、各家の迎えの馬車が来たことによって家に帰ることとなった。私とイザベル様は先に馬車へ乗せられて、ランドルフ王子と主様は憲兵と話をしている。それが終わってから、私たちはそれぞれの帰路へついた。
「その程度で、私に勝てると思うな」
母も父も、私を愛してはくれなかった。だけど、従者としての教育はどれだけ厳しくとも完璧に行われた。その中には当たり前のように主人を守る武術だって組み込まれている。自分を盾にして主人を生かす、主人を庇いながら戦う方法、なんでもやってきた。これを失敗すれば死ぬって思うような訓練だっていくつもやってきた。主様自身、武術を嗜んでおられるし、誘拐されるようなこともなかったから私の出番はなかったけど、もしも女性の侍女として付いていたのであれば、私はその訓練で学んだことを発揮した可能性はある。
「ノア!!」
「イザベル!!」
後ろから主様たちの声がする。幻聴などではないことを確認して、イザベル様を後ろへ突き飛ばす。
「ノア!!」
「行ってください!!イザベル様!!」
イザベル様を捕えようとする追っ手を蹴りで沈め、前の敵に向き直る。憲兵が来るまでは持ちこたえなければ、そう思った。
「お嬢様、もう大丈夫です」
その言葉と共に、ぐいっと後ろに手がひかれ身体を引き寄せられそうになる。でも信じられるほど頭はお花畑ではないので、それを警戒して振り払うようにいつでも戦えるようにと後ろを振り向けば来ているはずがないと思っていた憲兵だった。
「大丈夫です、お嬢様」
私の名前を知らないからか、お嬢様と言ってくる憲兵は私を庇って主様のもとへ連れていってくれた。その人以外にも来ていた憲兵たちによってあっけなく捕り物が終わっていく。
「ノア!!無事か!?」
「はい、主様」
「よかった……。すまない、遅くなってしまって」
肩を震わせる主様に抱きしめられて、ようやく張り詰めた糸が切れるように安心する。ああ、私はこんなにも弱かっただろうか。
「いいえ、助けに来ていただけてよかった……」
「当たり前だろう。お前は大事な俺の妻なんだから」
「あ、主様……」
急に気恥ずかしくなって、俯いてしまう。そんなにもまっすぐに見つめられて、言葉を向けられるなんてことは、ほとんどなかったから。
「だいたいのことは把握している。ノア、イザベルを守ってくれてありがとう」
「もったいなきお言葉にございます、ランドルフ様」
「でも、どうしてあのタイミングで外へ出たの?」
イザベル様がランドルフ王子のそばまでやってきた。そして私に聞いてきた。たしかに、イザベル様からすれば、私がどうしてあの瞬間に外へ出たのかはわからないだろう。
「実は、外の景色が一瞬だけ見えまして……。そこから今いる場所を予想して、周囲に逃げられる場所もありそうだと判断したので」
「さすが、だな」
捕り物が完了し周囲の安全も確保され、各家の迎えの馬車が来たことによって家に帰ることとなった。私とイザベル様は先に馬車へ乗せられて、ランドルフ王子と主様は憲兵と話をしている。それが終わってから、私たちはそれぞれの帰路へついた。
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