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番外編 77
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「お疲れ、奏」
「仁人さんも、お疲れ様」
今日という晴れやかな日を無事に乗り越え、疲労を強く訴える身体で二人して帰宅した。挙式よりも規模が大きかった披露宴では、たくさんの人たちがお祝いの言葉をくれて、温かく祝福してくれた。仁人さんの事務所の社長さんもいて、前回会ったのは結婚する時だったから、久しぶりの再会だった。
「本当に、今日は綺麗だった。写真が届くのが楽しみだ」
「仁人さんも、かっこよくて一番キラキラしてたよ。たしか、データでも納品されるから、たくさん写真を追加しないとね」
付き合い始めた当初は、交際に反対していたらしいが、仁人さんの調子が上がっているのを見て、むやみやたらと反対するのはよくないと気が付いたそう。そして私との交際を応援してくれて、結果的にいい方向へ進んでいるのもあり、自分は間違っていた、と社長さんが謝罪をしてくださったのが始まりだ。
「奏……」
「なに、ひろ、とっ」
社長さんには、ずっとお世話になっているし、交際報道があった時も私のことを守るように動いてくれていたから、すごくいい人だと私は知っている。それと同時に、仁人さんの周りにいる人たちがいい人ばかりなのも、今日の披露宴でよく知った。
「んっ」
今後も、仁人さんを影ながら支えていけるように頑張らないと、って私も思ったんだよね。私にしかできないことがあると、私が信じないといけないし、ね。
「最近、全然できなかったから」
「ひゃっ!?」
今日のことをぼんやりと思い返しながら、髪の毛をタオルで拭いているといつの間にか、お風呂から上がっていた仁人さんが後ろに立っていて。さっき話していた時はドアの付近にいたと思っていたけれど、本当にいつの間に来たんだ。
「う……それ、は……」
「もう、いいか?」
「あっ!」
ぐい、とより一層に近寄ってきた仁人さんのことを直視できなくて、恥ずかしさのあまり顔を背ければ。それが彼にとっては嫌だったらしい、ソファの背もたれを利用して私の動きを封じた。
「逃がさない」
「っ!」
彼の言う通り、結婚式の準備でずっとここ最近は忙しかった。最終確認の打ち合わせもギリギリまでしていたし、披露宴で行うイベントだったり、返ってきたハガキを確認して席次表を決めたりと、細かい部分は最後まで苦労したのは言うまでもない。
特に、引出物などの持って帰ってもらうものに関しては、全員が一律同じは難しい話で、結局はそれぞれに合わせたカード型のカタログギフトなんかを選んだりと、二人で頭を悩ませたのは記憶に新しい。
「あ、明日にひ、響いた、ら……」
「明日は休み」
「うぐっ」
仁人さんは当然、仕事をこなしながら、私と一緒に準備を進めていた。夜遅くまで撮影がかかることもあったし、朝早くから出ていくこともあった。わずかな時間でも必ず、準備のために確保してくれて、撮影の合間にもできることをしていたらしく、帰宅した時にはアイデアを聞かせてくれた。
「それに」
「そ、え、し、しょ」
私を簡単に抑えている彼は、妖艶な笑みを浮かべたと思ったら、耳元で「初夜、だから」と嫌になるほど色気の溢れる声音で伝えてくる。身体の関係はもちろんそれまでもあったけれど、結婚式を終えた後、というのが重要だと。
「で、でも」
「待てない。どれだけお預けされたと思ってんだ」
「あ……」
お互いの生活習慣は、やはり仁人さんの職業上、合わせるのはかなり厳しい。私はまだ二回目の学生なので、社会人時代よりは時間の余裕がある。できる限り彼も私と過ごす時間を作れるようにしてくれていても、限度と言うものもあって。
そこへ打ち合わせやら準備やらが入ってくると、余計にバタバタしてしまって、そういう時間も取れない。何度か熱のこもった視線を向けられたこともあったし、彼自身から落ち着くまで待つ、と言われたこともある。
でも、こんなにもストレートに迫られると、ちょっとというか、だいぶ恥ずかしい。それだけ私を思ってくれているのもわかるから、恥ずかしい気持ちと同時に嬉しさもあるのだけれど。
「これから、愛していいですか? 俺の唯一の奥さん?」
その問いに対して、私が出すのはわかりきった答え。
「もちろんです、私の大切な旦那さま」
少しの恥ずかしさをこらえて、まっすぐに見つめて返事をすれば、クシャっとした笑みを浮かべて彼は私を抱き上げた。
「仁人さんも、お疲れ様」
今日という晴れやかな日を無事に乗り越え、疲労を強く訴える身体で二人して帰宅した。挙式よりも規模が大きかった披露宴では、たくさんの人たちがお祝いの言葉をくれて、温かく祝福してくれた。仁人さんの事務所の社長さんもいて、前回会ったのは結婚する時だったから、久しぶりの再会だった。
「本当に、今日は綺麗だった。写真が届くのが楽しみだ」
「仁人さんも、かっこよくて一番キラキラしてたよ。たしか、データでも納品されるから、たくさん写真を追加しないとね」
付き合い始めた当初は、交際に反対していたらしいが、仁人さんの調子が上がっているのを見て、むやみやたらと反対するのはよくないと気が付いたそう。そして私との交際を応援してくれて、結果的にいい方向へ進んでいるのもあり、自分は間違っていた、と社長さんが謝罪をしてくださったのが始まりだ。
「奏……」
「なに、ひろ、とっ」
社長さんには、ずっとお世話になっているし、交際報道があった時も私のことを守るように動いてくれていたから、すごくいい人だと私は知っている。それと同時に、仁人さんの周りにいる人たちがいい人ばかりなのも、今日の披露宴でよく知った。
「んっ」
今後も、仁人さんを影ながら支えていけるように頑張らないと、って私も思ったんだよね。私にしかできないことがあると、私が信じないといけないし、ね。
「最近、全然できなかったから」
「ひゃっ!?」
今日のことをぼんやりと思い返しながら、髪の毛をタオルで拭いているといつの間にか、お風呂から上がっていた仁人さんが後ろに立っていて。さっき話していた時はドアの付近にいたと思っていたけれど、本当にいつの間に来たんだ。
「う……それ、は……」
「もう、いいか?」
「あっ!」
ぐい、とより一層に近寄ってきた仁人さんのことを直視できなくて、恥ずかしさのあまり顔を背ければ。それが彼にとっては嫌だったらしい、ソファの背もたれを利用して私の動きを封じた。
「逃がさない」
「っ!」
彼の言う通り、結婚式の準備でずっとここ最近は忙しかった。最終確認の打ち合わせもギリギリまでしていたし、披露宴で行うイベントだったり、返ってきたハガキを確認して席次表を決めたりと、細かい部分は最後まで苦労したのは言うまでもない。
特に、引出物などの持って帰ってもらうものに関しては、全員が一律同じは難しい話で、結局はそれぞれに合わせたカード型のカタログギフトなんかを選んだりと、二人で頭を悩ませたのは記憶に新しい。
「あ、明日にひ、響いた、ら……」
「明日は休み」
「うぐっ」
仁人さんは当然、仕事をこなしながら、私と一緒に準備を進めていた。夜遅くまで撮影がかかることもあったし、朝早くから出ていくこともあった。わずかな時間でも必ず、準備のために確保してくれて、撮影の合間にもできることをしていたらしく、帰宅した時にはアイデアを聞かせてくれた。
「それに」
「そ、え、し、しょ」
私を簡単に抑えている彼は、妖艶な笑みを浮かべたと思ったら、耳元で「初夜、だから」と嫌になるほど色気の溢れる声音で伝えてくる。身体の関係はもちろんそれまでもあったけれど、結婚式を終えた後、というのが重要だと。
「で、でも」
「待てない。どれだけお預けされたと思ってんだ」
「あ……」
お互いの生活習慣は、やはり仁人さんの職業上、合わせるのはかなり厳しい。私はまだ二回目の学生なので、社会人時代よりは時間の余裕がある。できる限り彼も私と過ごす時間を作れるようにしてくれていても、限度と言うものもあって。
そこへ打ち合わせやら準備やらが入ってくると、余計にバタバタしてしまって、そういう時間も取れない。何度か熱のこもった視線を向けられたこともあったし、彼自身から落ち着くまで待つ、と言われたこともある。
でも、こんなにもストレートに迫られると、ちょっとというか、だいぶ恥ずかしい。それだけ私を思ってくれているのもわかるから、恥ずかしい気持ちと同時に嬉しさもあるのだけれど。
「これから、愛していいですか? 俺の唯一の奥さん?」
その問いに対して、私が出すのはわかりきった答え。
「もちろんです、私の大切な旦那さま」
少しの恥ずかしさをこらえて、まっすぐに見つめて返事をすれば、クシャっとした笑みを浮かべて彼は私を抱き上げた。
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