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番外編 76
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綿密な打ち合わせと前撮りを終え、無事に結婚式を迎えた今日。挙式は親族と親しい友人のみの招待のため、披露宴よりは規模が小さくなる。
「とてもお綺麗です!」
打ち合わせ時からお世話になっている担当さんが控室でも一緒にいてくれて、緊張しないようにと声をかけてくれた。メイクもドレスアップも準備ができ、今はちょっとだけ全身チェック後のお直し中。これが終われば、挙式が始まる。
私はチャペルの入場を仁人さんとともにするため、父親とバージンロードを歩かないし、ベールもしていないので、母親によるベールダウンとかのイベントがあるわけでもない。そういう細かな演出やイベント事も、しないという選択肢があるこの式場は、かなり自由だと思う。
「綺麗だ……奏」
控室を出ると、先に外で待っていてくれた仁人さん。衣装合わせの時とは違って、今回は挙式当日とあって、しっかりと髪型もセットされている。先日行った前撮りでもセットされた姿は見ていたが、やはり、挙式日に見る姿はまた違う。
「仁人さんも、すごく素敵」
二人でチャペルまでの道を歩き、扉の前で深呼吸する。この先には来てくれた人たちがいる、なんだか泣きそうになった。特に招待している人は親しい間柄の人のみだから、感傷的になるのも仕方がないのかもしれない。
「行こうか」
「はい」
挙式をサポートしてくれるスタッフさんによって合図が出され、それに合わせて扉が開き、私たちは入場を開始する。荘厳な雰囲気と曲の中、ゆっくりとバージンロードを歩いていく。一歩ずつ、仁人さんと呼吸を合わせながら。
私たちに集中する視線。式が進むにつれて、たまにすすり泣くような声も聞こえて。前を向いた時に見渡せば、仁人さんのお母さんとマネージャーの鹿島さんが涙を見せている。ちなみにうちの父親は静かに、悟りでも開いたかのような穏やかな顔で大量の涙を流していた。
そんな父親の隣で母親も涙ぐんでいて、たまに父親にハンカチを押し付けていたので、隣の状況はわかっているらしい。でもね、そのハンカチだと流している涙の方が多いから追いつかないと思うの。
チャペルの外にある階段では、みんなにフラワーシャワーもしてもらい、式はお開きとなった。しかしこの後は披露宴があるので、まだまだ忙しい。ドレスはこのままだけど、乱れた部分を直さなければならない。
それに、挙式の規模よりも倍は大きい披露宴。先ほどよりももっと緊張してしまう。父親はあまり堅苦しい場が得意ではないから、フランクな披露宴になるようにセッティングはしているけれど。それでも彼の招待客の中には芸能界にいる人もいるので、余計に緊張である。
「お支度が整いました」
「それでは、行きましょうか」
私の緊張が伝わっているのか、それらを解してくれようとスタッフさんたちが明るい声音で、話をしてくれる。もうすでに披露宴会場には招待客がいる、ついさっき挙式が終わった感覚だけど、実際にはお直しだけで一時間はかかっているので、驚きだ。
「奏、大丈夫」
「うん、大丈夫」
挙式もそうだが、披露宴も取材のカメラなどは一切入っていない。仁人さんの断固拒否で、申し込みのあった取材は全て、断られたそうだ。仁人さん自身が人気の俳優というだけでなく、招待客の中には同じように人気の俳優さんや有名なプロデューサーさんなどが招かれている。
そういうこともあって、取材申し込みが殺到したらしい。しかし、仁人さんは私のことが知られたときのことを怒っているし、彼の事務所の社長さんも大変お怒りだったと聞いた。結果的に、私が一般人ということと、先の件でメディア拒否を通達したと、教えてもらった。
「行こうか、みんなが待ってる」
「うん!」
披露宴会場の扉が開かれる。挙式の時とは違って、曲はアップテンポだし拍手で出迎えられる。私と仁人さんは各テーブルを回りながら入場し、指定の席へ座り。乾杯の音頭とともに、披露宴が始まった。
「とてもお綺麗です!」
打ち合わせ時からお世話になっている担当さんが控室でも一緒にいてくれて、緊張しないようにと声をかけてくれた。メイクもドレスアップも準備ができ、今はちょっとだけ全身チェック後のお直し中。これが終われば、挙式が始まる。
私はチャペルの入場を仁人さんとともにするため、父親とバージンロードを歩かないし、ベールもしていないので、母親によるベールダウンとかのイベントがあるわけでもない。そういう細かな演出やイベント事も、しないという選択肢があるこの式場は、かなり自由だと思う。
「綺麗だ……奏」
控室を出ると、先に外で待っていてくれた仁人さん。衣装合わせの時とは違って、今回は挙式当日とあって、しっかりと髪型もセットされている。先日行った前撮りでもセットされた姿は見ていたが、やはり、挙式日に見る姿はまた違う。
「仁人さんも、すごく素敵」
二人でチャペルまでの道を歩き、扉の前で深呼吸する。この先には来てくれた人たちがいる、なんだか泣きそうになった。特に招待している人は親しい間柄の人のみだから、感傷的になるのも仕方がないのかもしれない。
「行こうか」
「はい」
挙式をサポートしてくれるスタッフさんによって合図が出され、それに合わせて扉が開き、私たちは入場を開始する。荘厳な雰囲気と曲の中、ゆっくりとバージンロードを歩いていく。一歩ずつ、仁人さんと呼吸を合わせながら。
私たちに集中する視線。式が進むにつれて、たまにすすり泣くような声も聞こえて。前を向いた時に見渡せば、仁人さんのお母さんとマネージャーの鹿島さんが涙を見せている。ちなみにうちの父親は静かに、悟りでも開いたかのような穏やかな顔で大量の涙を流していた。
そんな父親の隣で母親も涙ぐんでいて、たまに父親にハンカチを押し付けていたので、隣の状況はわかっているらしい。でもね、そのハンカチだと流している涙の方が多いから追いつかないと思うの。
チャペルの外にある階段では、みんなにフラワーシャワーもしてもらい、式はお開きとなった。しかしこの後は披露宴があるので、まだまだ忙しい。ドレスはこのままだけど、乱れた部分を直さなければならない。
それに、挙式の規模よりも倍は大きい披露宴。先ほどよりももっと緊張してしまう。父親はあまり堅苦しい場が得意ではないから、フランクな披露宴になるようにセッティングはしているけれど。それでも彼の招待客の中には芸能界にいる人もいるので、余計に緊張である。
「お支度が整いました」
「それでは、行きましょうか」
私の緊張が伝わっているのか、それらを解してくれようとスタッフさんたちが明るい声音で、話をしてくれる。もうすでに披露宴会場には招待客がいる、ついさっき挙式が終わった感覚だけど、実際にはお直しだけで一時間はかかっているので、驚きだ。
「奏、大丈夫」
「うん、大丈夫」
挙式もそうだが、披露宴も取材のカメラなどは一切入っていない。仁人さんの断固拒否で、申し込みのあった取材は全て、断られたそうだ。仁人さん自身が人気の俳優というだけでなく、招待客の中には同じように人気の俳優さんや有名なプロデューサーさんなどが招かれている。
そういうこともあって、取材申し込みが殺到したらしい。しかし、仁人さんは私のことが知られたときのことを怒っているし、彼の事務所の社長さんも大変お怒りだったと聞いた。結果的に、私が一般人ということと、先の件でメディア拒否を通達したと、教えてもらった。
「行こうか、みんなが待ってる」
「うん!」
披露宴会場の扉が開かれる。挙式の時とは違って、曲はアップテンポだし拍手で出迎えられる。私と仁人さんは各テーブルを回りながら入場し、指定の席へ座り。乾杯の音頭とともに、披露宴が始まった。
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