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番外編 74
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「奏、これを着てみてくれ」
「うん」
仁人さんの貴重な休日は、最近ほぼ結婚式の打ち合わせで埋まっている。今日も今日とて、式場でドレス選びだ。私よりもこの日を楽しみにしていた仁人さんは、たくさんのドレスを前に唸りながら選んでいる。ちなみに、今はウェディングドレスを選んでいる最中。
担当の方に手伝ってもらいながら、コルセットなどを身に着け、ドレスを身にまとう。選んでもらったドレスはAラインに近いプリンセスライン。肩の部分にはレースなども使われていて、袖のようになっている。
「よくお似合いです!」
サイズもちょうどよく、自分で鏡を見ても似合っているとわかるほどにデザインがあっていて。仁人さんは私を見て無言で写真を撮りまくっている。
「仁人さん……?」
「ごめん、俺の思った通り、よく似合ってる」
「本当によく似合っていらっしゃいます! サイズもちょうどいい感じですね。むしろもう少し細くてもいいくらい……」
担当さんも褒めちぎってくれて、仁人さんと一緒になってあれやこれやと候補を絞っていく。私の希望も取り入れた結果、仁人さんの選んだこのドレスを借りることになった。
「前撮りもされる予定とお伺いしています。そちらの分も選んでいきましょうか」
カラードレスも選び終わり、少しゆっくりしていると、今度は前撮り用のドレスを選ぶことになった。前撮りは仁人さんの強い希望により、桜の咲く春に撮ることになっている。理由は、私と出会った季節だから、だそうだ。
「前撮りのウェディングドレスはこれにしたいかな」
「いいのか、奏」
「うん、これがいい」
お式当日に着るドレスを最後まで迷っていた仁人さん。そんな彼が迷っていたドレスを前撮りに使い、カラードレスは仁人さんのタキシードに合わせたものを選ぶ。
「こちらのカラーもよくお似合いですね! さっきとはまた印象が違うのが素敵です!」
当日のお色直しで着るカラードレスも仁人さんが選んでくれたのだが、そちらはくすみピンクの大人っぽいけど可愛い感じのドレス。
「そういう色もいいな」
私が選んだのは、ネイビーのドレス。星空をイメージしたのか金糸の刺繍もところどころあって、とても目を引いた。自分が着たいと思って選んでも、試着してみると案外似合わない、なんてことは良くある話なので、似合わなかったらどうしようかと思ったが、着ても可笑しくはない。
「こちらのピンクも大人っぽいの中にある可愛さが際立ってよかったんですけど、ネイビーはグッと締まりますね!」
またもや仁人さんはスマホで写真を撮りまくっていて、撮られている側としては少し恥ずかしい。まあ、私も似たようなことはしたのでお相子かもしれないが。
「では次は新郎様のタキシードを選びましょう!」
ニコニコ笑顔の担当さんは、私のドレスが決まるや否や、タキシードを出してきた。仁人さんはどれでもいい、とタキシード選びに関してはドレス選びよりも熱がない。
「これ、着てみて」
パッと目に着いたタキシードを持ってきてもらい、仁人さんに着てもらう。完全なホワイトではなく、ピンクっぽい色味のホワイトは、仁人さんに案外、似合っている。彼は普段着がモノトーン系なので、明るい色を着ているイメージがあまりないけれど、着てみると意外に似合う。
「意外にいけるな、これ」
「よく似合ってるね。あとは、これかな」
ウェディングドレスに合わせたタキシードはそれに決め、お色直し用のタキシードには遊び心を感じられるカジュアルなデザインのものを選んだ。
やはり何を着ても似合う、さすが仁人さん。少し身体を動かしただけでも、色気を感じられるし、何と言っても衣装に着られている感がない。
「うん」
仁人さんの貴重な休日は、最近ほぼ結婚式の打ち合わせで埋まっている。今日も今日とて、式場でドレス選びだ。私よりもこの日を楽しみにしていた仁人さんは、たくさんのドレスを前に唸りながら選んでいる。ちなみに、今はウェディングドレスを選んでいる最中。
担当の方に手伝ってもらいながら、コルセットなどを身に着け、ドレスを身にまとう。選んでもらったドレスはAラインに近いプリンセスライン。肩の部分にはレースなども使われていて、袖のようになっている。
「よくお似合いです!」
サイズもちょうどよく、自分で鏡を見ても似合っているとわかるほどにデザインがあっていて。仁人さんは私を見て無言で写真を撮りまくっている。
「仁人さん……?」
「ごめん、俺の思った通り、よく似合ってる」
「本当によく似合っていらっしゃいます! サイズもちょうどいい感じですね。むしろもう少し細くてもいいくらい……」
担当さんも褒めちぎってくれて、仁人さんと一緒になってあれやこれやと候補を絞っていく。私の希望も取り入れた結果、仁人さんの選んだこのドレスを借りることになった。
「前撮りもされる予定とお伺いしています。そちらの分も選んでいきましょうか」
カラードレスも選び終わり、少しゆっくりしていると、今度は前撮り用のドレスを選ぶことになった。前撮りは仁人さんの強い希望により、桜の咲く春に撮ることになっている。理由は、私と出会った季節だから、だそうだ。
「前撮りのウェディングドレスはこれにしたいかな」
「いいのか、奏」
「うん、これがいい」
お式当日に着るドレスを最後まで迷っていた仁人さん。そんな彼が迷っていたドレスを前撮りに使い、カラードレスは仁人さんのタキシードに合わせたものを選ぶ。
「こちらのカラーもよくお似合いですね! さっきとはまた印象が違うのが素敵です!」
当日のお色直しで着るカラードレスも仁人さんが選んでくれたのだが、そちらはくすみピンクの大人っぽいけど可愛い感じのドレス。
「そういう色もいいな」
私が選んだのは、ネイビーのドレス。星空をイメージしたのか金糸の刺繍もところどころあって、とても目を引いた。自分が着たいと思って選んでも、試着してみると案外似合わない、なんてことは良くある話なので、似合わなかったらどうしようかと思ったが、着ても可笑しくはない。
「こちらのピンクも大人っぽいの中にある可愛さが際立ってよかったんですけど、ネイビーはグッと締まりますね!」
またもや仁人さんはスマホで写真を撮りまくっていて、撮られている側としては少し恥ずかしい。まあ、私も似たようなことはしたのでお相子かもしれないが。
「では次は新郎様のタキシードを選びましょう!」
ニコニコ笑顔の担当さんは、私のドレスが決まるや否や、タキシードを出してきた。仁人さんはどれでもいい、とタキシード選びに関してはドレス選びよりも熱がない。
「これ、着てみて」
パッと目に着いたタキシードを持ってきてもらい、仁人さんに着てもらう。完全なホワイトではなく、ピンクっぽい色味のホワイトは、仁人さんに案外、似合っている。彼は普段着がモノトーン系なので、明るい色を着ているイメージがあまりないけれど、着てみると意外に似合う。
「意外にいけるな、これ」
「よく似合ってるね。あとは、これかな」
ウェディングドレスに合わせたタキシードはそれに決め、お色直し用のタキシードには遊び心を感じられるカジュアルなデザインのものを選んだ。
やはり何を着ても似合う、さすが仁人さん。少し身体を動かしただけでも、色気を感じられるし、何と言っても衣装に着られている感がない。
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