ニセモノ彼女、始めました

高福あさひ

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最初は、悲しくて辛くて、むなしくて。テレビって娯楽のはずなのに、どうしてこんな思いしか生まないのだろうと思った。私の好きは仁人さんに繋いではいけない、好きを隠さなきゃいけないことがしんどくて。好き、その感情を持つことは悪いことではないはずなのに、それさえも許されないのだと思うと、心が苦しい。
「こんなにも、好き、なのに、なぁ」
これから先、この好きを仁人さんに伝えてはいけない。たとえ伝わったとしても、返事を求めてはいけない。この私の思いは、仁人さんには邪魔になるから。
「ばっかみたい……」
一人で舞い上がって、なんで気づかなかったんだろう。初めからこの恋がうまくいくわけがなかったんだ。
『奏、伊吹さんにさっき忙しいって聞いた。実家にも帰るって……。また会える時あるなら、すぐ教えてくれ。会いたい』
ストレートなメッセージが送られてきて、見るだけで涙があふれてしまう。
「会いたい、私だって、あいたいよ……」
でも、会えない。会ったら、弱音とかたくさん吐きたくなるし、甘えたくなる。私にそれは許されていない。
『ごめん、奏。嘘ついた』
「う、そ……?」
私が仁人さんのメッセージを読んでいることは伝わっている、だから嘘の意味が分からなかった。もしかして今まで私と付き合っていてことさえも嘘といいたいのだろうか。
『俺、今、奏の部屋の前にいる。だから、会いたい、顔が見たい』
「っ!!」
そこに、いるの……?そう不安になってそっとドアスコープから覗けば俯きながら立っている仁人さんがいて。外は寒いのに、薄手のカーディガン一つで寒そうだ。
「ひろと、さん……」
風邪をひかせてはいけない、と自分に言い聞かせ、意を決して玄関を開けた。
「奏……、入ってもいいか?」
「どうぞ、そのままでは風邪をひいてしまいます」
「ありがとう」
部屋へ招き入れたとたん、ぎゅっと抱きしめられた。それに驚いてびくっと身体を揺らしてしまう。そのまま首筋にグリグリと頭をこすりつけられて、くすぐったさに身をよじる。
「会いたかった、奏」
「……っ」
私は、会いたくなかったです、仁人さん。その言葉が出ていかないようにするので精いっぱいで。会いたいのに、会いたくない、このめちゃくちゃになってしまった感情を知られたくなくて、唇を噛みしめる。
「奏、どうして……」
「っわ」
何を言っていいのかもわからなくて、どうしても言葉が紡げない。
「どうして、こんなになるまで……、何も言ってくれなかったんだ……?」
「え?」
こんなになるまで?別に私は普通だ。ちょっと痩せたかもしれないけど、それくらいで変わりはない。
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