ニセモノ彼女、始めました

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仁人さんと会わなくなって二か月、もうクリスマスシーズンに世間は入ろうとしている。もしも、仁人さんと簡単に会える状況だったなら、私も彼と一緒にクリスマスを過ごせたのだろうか……、なんて考えてしまう。いや、クリスマスなんて、お仕事か……、と勝手に落胆して解決する。
「耐えられるよ、私なら」
毎日、大学のある日は通学し、最低限の行動を心がけて。そうしていれば自然と記者に追いかけられることは減った。だけど、その分だけ私は外に出るのが怖くなっていた。毎日鏡を見て、私は大丈夫と言い聞かせて外へ出る。みっともない恰好はできないから、お化粧と服装だけには気を遣っていつも通りを頑張った。
『藤木仁人、実は甘い物と可愛い物が好き!?』
SNSのセンセーショナルな見出し、その文章にハッとした。仁人さんは隠していた好きなものを出さざるを得ないほど追い込まれたのか、と。
「私の、せいだ……。あれほど気を付けて隠しよったのに……。それを出さんといかんくらい……、大変ながや……」
サァーっと真っ白になる頭。私に気遣いの連絡を鹿島さんも仁人さんもしてくれた。それなのにこんなに大変なことになっていたなんて知らなかった。知らなかったでは済まされないほど、大変なことをしてしまった。仁人さんが積み上げてきたものを、私は崩してしまった。
「どう、しよう……。どうしたら……」
誰かに相談したくても、相談できる内容なんかじゃない。それに私は心の勉強をしている身だ。これくらい自分で対処できなくてどうする。
「と、とりあえず……。いつも通りを作らなきゃ。気づかれないように、いつも通りを……」
私にできることは、大丈夫だと言うだけだ。



『変わりない?体調とか大丈夫?』
『最近連絡ないから心配だ』
『奏、今忙しい?』


『奏ちゃん、仁人に会わせてあげられなくてごめんね』
『仕事がもう少し落ち着いたら、二人で会えるようになるから』
『奏ちゃん、大丈夫?』


ポコポコと音を立てるメッセージアプリ。それらに返すのが怖くて、メッセージが来てから一時間とか経ってからじゃないと返せない。今忙しいのかな、とか送っても大丈夫なのかなとか、いろいろ心配になって。

『バイトで忙しくて……、すみません!!』

そうやって返すのが日常になってどれくらい経っただろうか、とカレンダーを見ても履歴をさかのぼってもそんなに前ではない。まだ、知られるわけにはいかない。私が体調悪いとか知られたら、絶対いらない苦労を掛けてしまうことは目に見えている。これは自分で解決しなくてはいけないことだから、知られたくない。