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かぁっと赤くなる頬を見られなくてよかったと、そう思いながら玄関にへたり込む。仁人さんをお見送りした、まるで恋人か新婚さんのような感じで。そのことが今になって恥ずかしくて。
「やっちゃった……。嫌がられてないと、いいけど……。気持ち悪いとか、思われてないよね……?」
徹夜の影響か、頭があまりはっきりしていなくて、ちょっと眠たい。この年齢になると徹夜するのは正直辛いし、さらに言えばケーキのホール食いは無理。クリームを重く感じて食べられない。
「仁人さんが寝たところで寝るのはなんだか、申し訳ないけど……。ちょっと寝させてもらおう」
仁人さんの匂いのするベッドに横になって、目をつむる。まるで仁人さんに包まれているような感覚になって、安心感を覚えた。その安心感のせいか、気がつけば眠っていて起きたのは二時間後。
「んん、もうこんな時間……。そろそろアルバイトの時間だ」
少しのだるさを覚えたが、そのまま起き上がりスマホのスヌーズを止める。ちょうど今の時間にアラームを毎日設定していたから、これに起こされた。このアラームがなかったから危なかったかもしれない。
「よし、行こう」
軽く軽食を流し込んで、支度を手早く済ませ、家を出る。今日は夕方までの勤務時間でほぼフルタイムのようなものだ。気合を入れて頑張らなければならない。
「行ってきます」
アルバイト先は時間によっては戦場なので、本当に体力がいる。出勤したときはそこまで忙しくなくても、お昼時などは大変。
「奏ちゃん、これよろしく」
「はい!!」
「奏ちゃん、こっちも!!」
「はい、二番さんですね!!」
お昼時、いつもよりも混んでいたため、忙しかった。休憩時間も後に回ってしまい、お昼の賄いを食べられたのは午後の三時。それまではこれでもかというほどに料理を作り、お皿を洗った。
「お疲れ様、奏ちゃん」
「お疲れ様でした」
「今日は一段と忙しかったからねぇ……」
「本当ですね……」
オーナーのおじさんと少し話をしてから、帰る。夕方以降は別のパートさんがまたやってくることになっている。
「それじゃあ、また明後日、よろしくね」
「はい、お先に失礼いたします」
オーナーと別れて、帰路につく。いつもよりは早い時間だし、明日はお休みだから休める。明後日から三日間、出勤したら二週間ほど実家に帰省する予定だ。お盆じゃなくてもいいから帰ってきなさい、と両親に言われている。ちょうどバイト先もお盆期間中はお昼時の営業を辞めて夜だけ営業をするようで、人手は少し減らされる。帰省していいよ、と快諾してくれたオーナーには、頭が上がらない。
「あ、仁人さんにも言っておかないと……。帰省するって」
そう言えば、仁人さんには出身地も言っていないし、帰省する話もしていない。二人で予定をすり合わせて会っている今、そういう予定は早めに伝えるべきだ。
「やっちゃった……。嫌がられてないと、いいけど……。気持ち悪いとか、思われてないよね……?」
徹夜の影響か、頭があまりはっきりしていなくて、ちょっと眠たい。この年齢になると徹夜するのは正直辛いし、さらに言えばケーキのホール食いは無理。クリームを重く感じて食べられない。
「仁人さんが寝たところで寝るのはなんだか、申し訳ないけど……。ちょっと寝させてもらおう」
仁人さんの匂いのするベッドに横になって、目をつむる。まるで仁人さんに包まれているような感覚になって、安心感を覚えた。その安心感のせいか、気がつけば眠っていて起きたのは二時間後。
「んん、もうこんな時間……。そろそろアルバイトの時間だ」
少しのだるさを覚えたが、そのまま起き上がりスマホのスヌーズを止める。ちょうど今の時間にアラームを毎日設定していたから、これに起こされた。このアラームがなかったから危なかったかもしれない。
「よし、行こう」
軽く軽食を流し込んで、支度を手早く済ませ、家を出る。今日は夕方までの勤務時間でほぼフルタイムのようなものだ。気合を入れて頑張らなければならない。
「行ってきます」
アルバイト先は時間によっては戦場なので、本当に体力がいる。出勤したときはそこまで忙しくなくても、お昼時などは大変。
「奏ちゃん、これよろしく」
「はい!!」
「奏ちゃん、こっちも!!」
「はい、二番さんですね!!」
お昼時、いつもよりも混んでいたため、忙しかった。休憩時間も後に回ってしまい、お昼の賄いを食べられたのは午後の三時。それまではこれでもかというほどに料理を作り、お皿を洗った。
「お疲れ様、奏ちゃん」
「お疲れ様でした」
「今日は一段と忙しかったからねぇ……」
「本当ですね……」
オーナーのおじさんと少し話をしてから、帰る。夕方以降は別のパートさんがまたやってくることになっている。
「それじゃあ、また明後日、よろしくね」
「はい、お先に失礼いたします」
オーナーと別れて、帰路につく。いつもよりは早い時間だし、明日はお休みだから休める。明後日から三日間、出勤したら二週間ほど実家に帰省する予定だ。お盆じゃなくてもいいから帰ってきなさい、と両親に言われている。ちょうどバイト先もお盆期間中はお昼時の営業を辞めて夜だけ営業をするようで、人手は少し減らされる。帰省していいよ、と快諾してくれたオーナーには、頭が上がらない。
「あ、仁人さんにも言っておかないと……。帰省するって」
そう言えば、仁人さんには出身地も言っていないし、帰省する話もしていない。二人で予定をすり合わせて会っている今、そういう予定は早めに伝えるべきだ。
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