ニセモノ彼女、始めました

高福あさひ

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作者が普段使用している方言がこの話以降にたくさん出てきます。
意味が分からない等の声が多くありましたら、標準語にしたものを方言が出る話の最後に掲載します。

作者の周囲の人が実際に使用している方言なので、同じ方言を使う人でもこの言葉は使わない、などあると思います。この意味が知りたいなどはいつでもお答えします。

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仁人さんとお昼ご飯を空き教室で一緒に食べたのは、あの日だけだった。あの日以降、連絡は取り合うものの、忙しいようで学校には来ていない。そしてすぐに期末試験の期間に入ってしまって、余計に会えなくなってしまった。お互いに試験がある身。さらに言えば仁人さんは4回生と、科目自体が少ないはずだ。そもそも試験はないかもしれないレベル。
「もしもし、お母さん?」
『ああ、奏。電話もメールもないき、心配しちゅうで。はようにお父さんにも連絡しちゃり』
「うん……。ごめん、最近は試験があって忙しかったが。今も勉強しゆうがやき」
『そうやったがかね。ほんならあんまり長いことせられんね』
「ううん、でも、お母さんの声を聞いたき、ちょっと元気になった」
夏休みは帰ってくるか、という母の連絡だった。私は四国の高知県出身、普段は気を付けているけれど、少し気を抜けばすぐに方言が出る。つい、母との連絡では方言も出てしまう。夏休みは、バイトを入れようと思っていたから、長いこと帰るつもりはなかった。

「ん、電話……?」
また着信を告げるスマホに、前のような失態はしないように誰がかけてきたのかを確認して出た。
「はい、もしもし」
『あ、奏。俺、仁人だけど……』
「お疲れ様です、仁人さん」
『ありがとう、奏も試験だろ?お疲れさん」
「いえいえ、試験自体は受けている科目の半分くらいなので、手が回しやすいです。ただ……、レポートが意外と多くてそれが、しんどいがですよね……、あっ」
『奏、今の……方言、か……?」
「あ、その、えっと、す、すみません!!気が抜けていたようで!!」
仁人さんや周りの人たちはみんな標準語だったから、合わせていたのに、気が抜けていたのか方言を出してしまった。方言は恥ずかしいことじゃないのはわかっているのに、気を抜いていると思われるのは恥ずかしい。
『いいよいいよ、謝らなくて。むしろ方言でしゃべってほしいくらいだ』
「その……、たぶん……わかりづらいこと多いと思います……」
『俺の前でくらい、奏にも息抜きをしてほしい』
「わ、わかりました……」
方言を出してもいい、と言われてしばらく話をしていたら方言を出すのにも慣れて、しゃべるのに抵抗はなくなった。
「そういえば、仁人さんは休憩時間とかながですか?」
『いや、もう終わって家に帰ったところ。またしばらく忙しくなるから、学校には行かないって連絡をしようと思ってな』
「それは、だいぶ忙しいがですね。私、夏休みは帰省する予定はあるがですけど、あんまり長いこと帰省はせんので、会えるといいがですけど……。借りていた小説もお返ししたいですし」
借りていた小説もあるので、長い間借りるのは申し訳ない。
『オフの日、遊びに行ってもいいか?住所教えてもらえたら、行ける』
「え、オフの日って、せっかくのお休みやないですか……?」
『俺が、会いたいんだ』
「わ、わかりました……」
仁人さんのやけに真剣な声に押され、後日住所を教えることになった。お休みの日でも、仁人さんに会えるのは、正直嬉しい。
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