ニセモノ彼女、始めました

高福あさひ

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自分なりに仁人さんが周囲を気にしなくてもいいように考えた結果だった。言ってから後悔してしまったけどね。
「俺としては嬉しんだけど、いいのか?」
いいのか、その一言にいろいろな言葉が含まれていることは読み取れた。周囲の人間に知られたときが怖いし、仁人さんは男性で芸能人、私は女性で一般人。友人にさえもなりえない、下手をすれば恋人だと間違われて彼の迷惑になるかもしれない。
「その、周りを気にすることがない時間くらい、あってもいいんじゃないかなって思ってしまって…。そのご迷惑をかけることはわかっています…」
「むしろこっちが迷惑をかけることになるよ、俺は常に周囲に目があるから。あのさ、ずっと言おうと思ってたんだけど…」
「…?」
なぜ彼が迷惑をかけるというのかわからなかった。そして口を閉じてしまった彼の言葉を待った。


「嘘でいいから、俺の彼女役、やってほしい」
「彼女役…?」
「本当に付き合うわけじゃないんだ。こうして会うときとか彼女だって言っておけば奏を守ることもできる。奏が不利になるようなことは絶対しないって約束する」
「わ、わたし…、仁人さんに言ってないことがあって…。私、たぶん仁人さんより年上で、その本当は二十五歳なんです…。ごめんなさい、だましているようなことをして!!」
「知ってたよ、年上なことは」
「えっ?」
今まで大学に入ってから誰にも言ったことがない、年齢をまさか仁人さんが知っているとは思わなかった。それに、嘘の彼女って、なに…?
「その、実は俺の学科で可愛い子がいるって噂になってたけど実は元社会人らしいって噂でさ。初めて会ったときにだいぶいろいろ手慣れてるなって思ってから年上なのは想像に容易かったよ。ごめん、初対面から生意気だったと思うし、今もだけど。でも、奏とこれからもずっとこうしていたいんだ。そのためには彼女って立場が守りやすい。だから、この提案をよかったら受け入れてほしい」
 仁人さんの言いたいことはよく理解できた。私たちがこうして出会って、話をするようになったのは運の巡り合わせがよかったから。本当だったら出会って話をすることはなかったような人。言わば、雲の上のような存在。私がそもそも彼を芸能人だと知らなかったのも要因の一つとして挙げられるだろう。彼と一緒にいるリスクも理解はしている。彼が何を懸念しているのかもわかっている。
「私も、それでもこうしてまたお話したいです。どうしても年齢のことがネックになって友達も作れなくて、こうやって話をする間柄の人、教授以外にいなくて…。その、仁人さんは、私にとって初めての先輩なんです!!」
言いたいことがごちゃごちゃになって何一つ伝えられないけれど、熱意だけは伝われ!!って思いなんとか言葉を紡ぎだす。初めてできた先輩、一人だった私に光をくれたのが仁人さん、その思いが少しでも伝わればいいと思った。
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