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軽く大きな動きにならないように気をつけながら身体のコリをほぐした。今日は五限しかあとは講義がないからゆっくり図書館で勉強ができる。レポート課題、仕上げられるなら仕上げてほかの課題にも時間を使いたい、なんて考えて次の科目を出そうと荷物をあさっていると、いつかのようにトントンと肩を叩かれた。
「こんにちは」
「ああ」
振り返ると、少し疲れた表情をした藤木さんがいた。階下で騒ぐ声が聞こえて、図書館の職員さんが注意する声がする。藤木さんはそれを聞いて、また昨日のようにグループ室に連れてきてくれた。
「悪い、急に」
「いえ、なんだかお疲れのようですね。どうかなさいましたか?」
「いや、大丈夫だ。それで、さ。俺の家にある本も勧めたいからさ、連絡先教えてくれないか?」
今朝、藤木さんのことを考えていたばかりだったからびっくりした。まさか本当に連絡先がもらえるなんて思ってもみなかったから。
「私のでよければ、えっとメッセージアプリのですか?それとも電話番号とメールアドレス、ですか?」
「全部、教えてほしい」
一応、選択肢を出してみれば全部と言われて余計に驚いた。今の人たちはメッセージアプリだけで繋がるから電話番号さえもいらない。
「わかりました、えーと書きますね」
一枚、大きめの付箋にフルネームと電話番号、メールアドレス、メッセージアプリIDと名前も書いておく。ついでにメールアドレスはスマホのものとフリーアドレス両方を記載しておいた。
「どうぞ、これ万が一メールが届かなかった時用でフリーアドレスの方です。アプリはQRコードで交換しますか?」
「ああ、ありがとう」
お互いにスマホを出し合って連絡先を交換し、アプリも登録された。藤木さんもスマホをつついて自分の電話帳ページを開いてくれたのでそれをありがたく見させてもらって、私も登録した。
「もう気付いてるかもしれないけど、俺は俳優兼モデルやってる一応は、芸能人なんだ。だからこの連絡先は誰にも言わないでほしい」
「そう、だったんですか…。わかりました、秘密にしておきますね」
「悪い、ホント。その、自分勝手で」
「いえ、お仕事の関係上なら仕方ありませんし、むやみやたらと誰かの連絡先を広めるのはどんな人でも、たとえ友人間であったとしてもマナー違反ですから。大丈夫ですよ、お気になさらず」
ぎゅっとスマホを両手で握って笑顔で気にしないでください、と伝える。そりゃ芸能人だったらみんな喉から手が出るほど欲しいに決まってる。
「ありがとう、奏」
「えっ、あ、なま、え…」
「もう知り合って大分経つんだ、名前呼びくらい、いいだろう?だから奏も名前で呼べ」
「ふじ、じゃなくて、ひ、ひろ、とさん?」
「なんで疑問形なんだ」
小さく笑われて少し頬を膨らませて不機嫌さを表せば、彼は笑いながら謝ってくれた。でもその顔は笑ったままだ。さっきは疲れているように見えたから、今度はそんな風に見えなくてよかった。
「それから、これ俺の時間割。仕事でいない時間も多いけど一応、渡しとく」
「あ、ありがとう、ございます。それなら私も、これがそうです」
時間割の交換もして、少しに時間だけ勉強したけど藤木さん、じゃなかった仁人さんにお仕事の連絡が入ってしまったのでお開きとなった。
「こんにちは」
「ああ」
振り返ると、少し疲れた表情をした藤木さんがいた。階下で騒ぐ声が聞こえて、図書館の職員さんが注意する声がする。藤木さんはそれを聞いて、また昨日のようにグループ室に連れてきてくれた。
「悪い、急に」
「いえ、なんだかお疲れのようですね。どうかなさいましたか?」
「いや、大丈夫だ。それで、さ。俺の家にある本も勧めたいからさ、連絡先教えてくれないか?」
今朝、藤木さんのことを考えていたばかりだったからびっくりした。まさか本当に連絡先がもらえるなんて思ってもみなかったから。
「私のでよければ、えっとメッセージアプリのですか?それとも電話番号とメールアドレス、ですか?」
「全部、教えてほしい」
一応、選択肢を出してみれば全部と言われて余計に驚いた。今の人たちはメッセージアプリだけで繋がるから電話番号さえもいらない。
「わかりました、えーと書きますね」
一枚、大きめの付箋にフルネームと電話番号、メールアドレス、メッセージアプリIDと名前も書いておく。ついでにメールアドレスはスマホのものとフリーアドレス両方を記載しておいた。
「どうぞ、これ万が一メールが届かなかった時用でフリーアドレスの方です。アプリはQRコードで交換しますか?」
「ああ、ありがとう」
お互いにスマホを出し合って連絡先を交換し、アプリも登録された。藤木さんもスマホをつついて自分の電話帳ページを開いてくれたのでそれをありがたく見させてもらって、私も登録した。
「もう気付いてるかもしれないけど、俺は俳優兼モデルやってる一応は、芸能人なんだ。だからこの連絡先は誰にも言わないでほしい」
「そう、だったんですか…。わかりました、秘密にしておきますね」
「悪い、ホント。その、自分勝手で」
「いえ、お仕事の関係上なら仕方ありませんし、むやみやたらと誰かの連絡先を広めるのはどんな人でも、たとえ友人間であったとしてもマナー違反ですから。大丈夫ですよ、お気になさらず」
ぎゅっとスマホを両手で握って笑顔で気にしないでください、と伝える。そりゃ芸能人だったらみんな喉から手が出るほど欲しいに決まってる。
「ありがとう、奏」
「えっ、あ、なま、え…」
「もう知り合って大分経つんだ、名前呼びくらい、いいだろう?だから奏も名前で呼べ」
「ふじ、じゃなくて、ひ、ひろ、とさん?」
「なんで疑問形なんだ」
小さく笑われて少し頬を膨らませて不機嫌さを表せば、彼は笑いながら謝ってくれた。でもその顔は笑ったままだ。さっきは疲れているように見えたから、今度はそんな風に見えなくてよかった。
「それから、これ俺の時間割。仕事でいない時間も多いけど一応、渡しとく」
「あ、ありがとう、ございます。それなら私も、これがそうです」
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