ニセモノ彼女、始めました

高福あさひ

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 お風呂に入ってすぐ髪の毛も乾かして眠る支度も整え、眠ったのだけど目が覚めたのは明け方ですらない午前三時。起き上がって何か騒がしくすると周りの部屋の人に迷惑がかかるから、下手に動けない。そろりと起き上がって静かに電気をつけてベッドに腰かける。もうすっかりと目が覚めてしまったせいで二度寝しようにも眠れない。最近使っていなかったパソコンを開いて、珍しくネットサーフィンをするが特に調べることもないままにネットの海を潜るとただ疲れるだけで。会社で嫌というほどパソコンを開いていたのでタイピングだけは早いのだが、そのタイピングを生かすような長文を打つわけでもないから意味はない。
「音楽、聴いてみようかな」
最近の流行りの音楽は何だろうと思っても、聞く気になれなかった。音楽動画サイトで最近アップされたばかりのものを聞いてみてもさっぱりわからなくて。結局、小さいときに母が聞いていたクラシックを聴くことにした。クラシック音楽は睡眠にもいいとどこかで聞いたことがあるから、眠れるかな、なんて電気の明るさを落としてみたが、まったく眠れなかった。
「誰とも連絡も取り合わないし、なんだか寂しい」
大学に入って連絡先を交換した人はいないので、夜中まで騒いで一緒に盛り上がるような友人もいない。だから本当に誰とも話もしないから寂しい。唯一、藤木さんとは会えば話はするけど連絡先だって知らない。知っているのは彼が文学科四年ってことだけ。私は彼のこと何も知らない。
 例えば、私が藤木さんの連絡先を知っていたとして、何かするのだろうか、という疑問が突如として沸いた。不思議と、そんなこと考えたことがなかったからどうしても答えが出ない。藤木さんと夜遅くまでメッセージアプリでやりとりをする?それとも電話をする?それとも、いまどきにしては珍しいメール?何をするんだろうか、そもそも彼はそういうことをする人なのだろうか。私には藤木さんのことは何もわからなかった。あれだけ図書館で会って少しだけでも話をするのに、私は彼のこと何も知らない。
「もう四時か…テレビつけよ」
四時を少し過ぎ、テレビをつけてみる。朝の情報番組が始まったくらい、何をするでもなくお茶を飲みながらぼーっとそれを眺めた。でも急に興味が失せて消してしまった。



「いってきまーす」
登校時間になって、今日はお腹空かないなと思い朝ご飯も食べずに登校した。誰もいない部屋に声をかけて。一応今日はお弁当を作って講義に挑んだ。今日もお昼前の講義はないから図書館でお勉強してから食べたければどこかで食べればいい、と思って作ってきた。あと、もしかしたら藤木さんがいるかもしれない、という淡い期待もあった。
「来週、期末レポートを出してもらいます。詳細はこの資料にありますので各自期日までに提出するように、以上」
一限、ぼやっとする頭をなんとか切り替えてレポート課題の内容をしっかりと叩き込む。終わってすぐに図書館に向かって参考資料を借りて机に座る。今日の参考資料は手の届くところにあったから、よかった。
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