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彼女になった理由

好奇心に、好奇心に。

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一方王宮にて。


お姉ちゃんを守らないと、あの人は一体何をするつもりなんだろう。
こんなに人を集めるだけ集めて、何もしない。
あの王子様は、バカなのかな。

「お姉ちゃんに何かしたら」

私はどうするだろう。
殺しちゃうかもしれない。
でもそうすると、お姉ちゃんは悲しむかな。
優しいお姉ちゃんだもん、悲しむよね。
じゃ、どうしたらいいかな。
邪魔だな、邪魔だな。
弟も本当は邪魔、だって私のお姉ちゃんを独り占めしようとする。
嫌だけど、もしもお姉ちゃんがそれで少しでも幸せに近づけるならうれしい。
だって今のお姉ちゃんは、私のせいだから。

煌びやかな王宮を歩く。
高級そうな調度品もかすんで見えるくらい、私は急いで足を運ぶ。
みっともない姿は見せられない場所だけれど、お姉ちゃんが危ないからしかたない。
あの王子は何をするかわからない、そんな顔をしていた。
外に出ようと戸に手をついて目の前に衛兵が立ちふさがる。
開けさせないと言わんばかりに、左右の兵は槍をクロスさせた。

「お戻りください」

無機質に、淡々とそう述べる。

「嫌よ、要件は終わったのでしょう、帰るの」

衛兵は何も言わない。
ああ、苛つく一体なんだというのだ。

「責めないであげてください、それも彼らの仕事ですから」

背後から声がして振り返れば、そこには見覚えのある人がいた。
先日お姉ちゃんといった夜会の主。
トリス・エンディミオン子爵。

「どうして彼を止めてくれなかったの」

愚痴をこぼしてしまう。
彼は私の婚約者だ。
といっても口約束程度、今ではあるのかすら危ういもの。
わたしにとってはあってもなくても変わらない。

「王子と私では発言できるわけないでしょう、それに」

それに、なによ。
と聞きたくて顔色をよく見ればそこには嫌いな顔がある。
口角を上げて笑いをこらえるかのような、いやらしい顔。

「貴方のお姉さまがここに引きずり出されると思うと、
愉快で愉快でうれしいのですよ」

だって、そうでしょう。
禍罪子がこの世界に立ち入れば、何を言われ、
何をされるかなんてわかりきっている。
誹謗中傷、侮蔑と好奇のまなざし。
知らないうちに攫われて、裏の夜会に連れていかれる可能性だってある。

「そうよ、だから王子を止めないと、ここから出してよ」

衛兵は何も言わない。
代弁するかのように、子爵はあまり開かない口を開いた。

「そういえばお姉さまに会ったのは、この前の夜会が初めてなのですが」

唐突に何を言い出すのだろう彼は。
顎に手を当て、考えるようなそぶりを出す。
そして、やはり口元は笑っていた。

「――とても美しい方なのですね」

私はこの人の性癖を知っている。
だからこそ、わたしは全力で頭を殴った。

「お姉ちゃんに何かしたら許さないからね!!」





どこもかしこも馬鹿ばかり、やっぱりお姉ちゃんが一番だ。
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