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三章
41, 傀儡人形
しおりを挟む捕らわれてから今日で何日目だろう。
「…ふっ、はぁ…ぐっ…うう」
傀儡人形のように性処理の道具として彼女の身体は使われていた。
何度も汚い汚物を吐き出され過ぎて紅雪の下半身はもう感覚がない。
ビクビク腰を動かす男が、二回戦をしようとした所で別の見張りの男に呼ばれて渋々出て行く。
「……ごめんね……ごめんね」
一人になった部屋で紅雪は必死にしがみ付いて耐えているだろうお腹の子に何度も謝った。
太股や腕の怪我は医者に診てもらったお陰で痛みは和らいだ。
しかし歩く事はまだ出来ないし、傷も塞ぎきっていない。
動けない紅雪は、ぼうっとしたり、男の相手をしたりを繰り返して一日が終わるのだ。
「…紅雪さま…ご飯が届きました…」
「舎伊…そっちはきちんとご飯食べてる?殴られたりしていない?大丈夫?」
「紅雪さまのお陰で私たちは怪我一つしていません。ご飯もきちんと頂けています」
13歳の八歌の弟が握り飯と沢庵を持って来てくれた。
近付いて来た舎伊に触れながら心配していた事を聞くと泣きながら舎伊が何度も頷く。
心の声も同じ答えを伝えていたので紅雪はホッと安堵した。
「…八歌は無事かしら」
「姉さんは紅雪さまを裏切ったのです…なのに!!」
「いいえ、八歌はあなた達を守る為に闘ったのよ」
そして、きっと負けたのだと思う。そう心の中で答えると、舎伊は握り飯を差し出してくる。
身体中がだるくて動けない紅雪は毎回舎伊に食べさせて貰った。
舎伊が来るのは見張りが必要無いから、家族を人質に捕られている舎伊に逃げるという選択肢は無い。
だからこそ、紅雪に守られて何も出来ない舎伊は悔しかった。
「…舎伊、あなたは八歌が来るまで必ず家族を守りなさい。あなたはたった一人の男よ。私たちを守れるのは舎伊だけ…だから力を付けなさい」
舎伊の心の声が聞こえた紅雪は励ますように言葉を投げ掛ける。
そして、食べていた握り飯を持つ舎伊の腕を掴んで彼が食べるように口元に寄せた。
投げ掛けた言葉に同意したのか舎伊は泣きながら紅雪の分の握り飯を頬張る。
舎伊の頭を撫でながら、ふとお腹に感じた違和感に気付いた。
「紅雪さま…血が流れています…っ」
「…っあ…あ…私のやや子が…流れちゃうっ…ううっ…」
違和感は、直ぐに目に見えるようになる。
舎伊が動揺した声を漏らすと、紅雪は必死にお腹を守ろうとした。
必死に行かないでと叫びながらも、紅雪は我が子を失ったのだと感覚で分かる。
<紫攸さま…我が子を失わせて…ごめん、なさいっ…>
今迄耐えていられた一筋の光を失った紅雪は止めることの出来ない程の涙が溢れる。
心の中で我が子と紅雪を捜し続けている紫攸に彼女は謝りながら眠るように意識を手放したのだった。
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