《R18》皇帝陛下は白銀髪の王女を寵愛する

ERICA

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三章

36,忘れ去られた皇女

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街では、紅雪の懐妊の祝言が街の至る所から溢れ出していると寡雲たちが言っていた。
本人は好きな物以外食べれない偏食になって残念そうにしている。
未だに悪阻は紅雪を襲うのだが好きな物を食べている間は落ち着くようになったのだった。


「このままだと太ってしまいます…」
「お前がどんな姿でも可愛いぞ?」
「そんな事言っても、紅雪様がふっくらしたら近付きもしなくなるかもよ?」
「いや、紅雪はどんな姿でも可愛いと思う」
「そうですよ!紅雪様はずっと可愛いですわっ」


そう不安そうに呟きつつも、紅雪の手はお菓子を持っている。
紅雪の言葉を否定する紫攸に寡雲が不安を煽るような事を言った。
情緒不安定な紅雪は、直ぐに涙が出てしまい、手に持ったお菓子を落としてしまう。
焦る紫攸の隣から、紅淡と詩音が力みながら力いっぱい紅雪の言葉を否定した。


「…寡雲、お前出てけ…」
「ちょっ…冗談じゃん。爺様からも紅雪様の様子見てくるよう頼まれてるんだよー」


紫攸が泣く紅雪を頭を撫でて宥めながら、寡雲を冷たく突き放す。
紅淡と詩音も味方になるつもりは無いらしい。
寡雲は必死に居座る言い訳を述べて、紅雪に助けを求める視線を送る。
食べ過ぎるのはいけないと寡雲が言ったのは間違いなのだが、三人が紅雪に甘いせいで彼だけが悪者になっていた。


「率直な意見も大事ですよね…。太り過ぎると出産時母子が危険になると言われていますし…お菓子は薬湯の飲むときだけ食べる事に致します」
「そうなのか!?ならば、甘くない菓子を作って貰わねえといけねえな…」


落ち着いた紅雪が寡雲のフォローを入れると、紫攸が一つ勉強したみたいに紅雪の体調を気にする。


「…紫攸様、皆さん…すみませんが、眠いので…解散して貰っても宜しいですか?」


眠気が来た今のタイミングで皆に帰るように声を掛ける。
紅雪の仮眠時と睡眠時の深夜以外、紫攸は殆んどを白蘭宮で過ごすようになってた。
紫攸がきちんと政務をこなしているのか心配になっていた紅雪はどうにか蒼聖殿に戻るようにしたい。
寡雲なら意図を悟ってくれるかもしれないと視線を向けた。


「そうだね~…紫攸も紅雪様の邪魔になる前に政務を終わらせようよ」
「おいっ!離せよっ!」
「紅雪、何かあれば呼んでくれ」
「紅雪様、くれぐれも御無理をなさらずに過ごされて下さいねっ」


やはり紅雪の意図に気付いてくれた寡雲が、頑なに動こうとしない紫攸を動かそうとする。
寡雲は官史のせいか全くもって紫攸を動かせない様子を見ていた紅淡が、紫攸の腕を掴むと引っ張ると衝動に耐えられなかったらしくて無理矢理立たせられた。
紫攸の文句を武官の紅淡はスルーしながら紅雪に向き直り微笑むと、隣にいた詩音も笑顔を向ける。
紅淡に引っ張られたまま、四人は談話室から出て行った。


「……」


誰もいなくなった室内で、紅雪が不安げな表情でお腹を見つめる。
紅雪は小さなお腹を撫でながら、客賓として居座っている忘れられた皇女を思い出していた。
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