《R18》皇帝陛下は白銀髪の王女を寵愛する

ERICA

文字の大きさ
上 下
6 / 53
一章

05,蒼鳴国の皇帝《2018.06.24改稿》

しおりを挟む


 そして、冒頭に戻ってくる。


(齢六十過ぎのお爺さん皇帝が待ち構えていると思っていた…)
「お前が朱津から献上された王女か…?」
「――左様で御座います」

 目の前の壇上で宝飾された椅子に座る青年男性。
 予期していなかった事態に驚きを隠す事が出来ずに立ち尽くしてしまう。
 紫珠の瞳と目が合った瞬間、慌てて膝を付いて最高礼を行った。
 侮蔑の様な視線が後頭部に突き刺さっている。

「朱津六女、楊紅雪。皇帝陛下に拝謁致します」

 それでも、躾けられた台詞を口にして、床に額が付きそうな状態のまま彼の返答を待っていると、鷹揚の無い「立て」の返事が頭上から聞こえた。先程の行動の𠮟咤が無い事にホッとしながら、緩慢な動作で立ち上がり真正面から青年を見つめる。

「朱津の王族は皆、お前のように血色をしているのか?父上は何故、こんな異質な髪色の女を娶ろうと思ったのか…わからんな…」

 私の染めた髪色を眺めていたらしい彼の眉間には皺が増えていて、嫌悪感を隠そうともしていない。
 先帝を父上と呼んだ青年は、私の予想通り先帝の息子で現皇帝陛下だと窺える。
 そして、何故かわからないけれど、赤色・・血色を嫌悪しているように感じられた。
今のままの髪色で過ごす必要が無くなりそうな期待を一瞬宿してしまうけれど、直ぐにその期待は失われてしまった。

「今、私の後宮には母である皇太后しかおらん。献上されてもお前は好みでも無いし、今の所は妃嬪を増やすつもりも無いしな」

 わざとらしく「困った、困った」と言葉を連発しているけれど、要は蒼鳴国から出て行けって言っていた。ここで追い出されてしまったら私の帰れる場所など何処にも無い。

「私は故郷を捨てた身です。帰る所等、陛下の傍しかありません。心苦しいのですが、お傍において頂けませんか?置いて頂けるなら、今後現れます皇后様や寵妃様のお目を汚す様な真似は一切せず宮の片隅で静かに一生を終える事をお約束致します」

 両膝を床に付き、一抹の希望に縋り付く様に必死に懇願をする。
 生き恥を晒すようなものだけれど、朱津国に戻れば殿下に任務の失敗を理由に有無を言わせず私はきっと殺害されてしまう。殺害されるのなら、侮蔑を滲ませ、嫌悪感を露にしていて、私に近付く事もしないだろう陛下の方が何百倍も良い。
 殺害される恐怖に身体が震え、泣きたくもないのに涙が滲んできた。

「ならば、白蘭はくらん宮をお前にやる・・・宦官に案内させる、下がれ」
「・・・感謝致します」

 陛下の言葉が頭上から聞こえると、所作など忘れて勢い良く身体を起こした。
 私の切実な訴えが彼に伝わったのかどうかは分からない。それでも、陛下が認めてくれた事で皇居に来て初めて表情が和らいでいた。
 目許に溜まっていた涙を指で拭いて、感謝を表すようにお辞儀を数回繰り返すと、もう一度彼に感謝の視線を向ける。
 目が合ったと思ったら陛下は即座に視線を逸らしてしまい、結局出て行く最後まで目が合うことは無かった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】円満婚約解消

里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。 まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」 「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。 両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」 第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。 コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。

処理中です...