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序章 ~ 初恋 ~
02,国王陛下の亡き最愛の女性《2018.06.23改稿》
しおりを挟む私の最愛の女性でもあった楊 紅銘は隣接の紫峰国の宰相、楊家の二女でとても美しい女性だった。紫峰で紅銘を垣間見た私は、直ぐに彼女を口説き落として寵妃にした。
そして紅銘は、三男を産んだ一年後に皇女を産んだ。
だがーーー。
私の娘は、私や紅銘に似ても似つかない白銀の髪をしていた。我が王族は代々、寵妃の髪色が何であれ、王族の主張とも言える赤髪が産まれる。
他の子供たちは全員、赤を主張とした髪色をしていた。だから、白銀の髪の娘が産まれる筈が無いのだ…。
戸惑う私に、王妃や他の妃嬪たちが囁く。紅銘は私を裏切り他の男の子を身籠って産んだのだと…。そう言われ続けると、王妃たちの言葉が正しいのかと思ってくる。
その内、必死に否定していた紅銘の傍に私は寄り付かなくなった。そして彼女は身体を壊し寝込むようになり、引き離された息子に会う事も出来ずに失意のまま亡くなってしまった。
私は紅銘を愛していた。だから、裏切られて憎らしく思った。だが、死んで欲しいと思った訳ではなかった。
だから最愛の女性、そして息子の母を殺した白銀の子に憎しみを覚えた。
お前が白銀髪で産まれて来なければ紅銘は生きていた。そう思うとやるせない。自分の血が入っていない子など殺してしまっても良かったのだ。
だが、最愛の女性が命がけで産んだ子を殺す事を躊躇った。だから、紅銘の侍女に赤子を預けて、後宮の片隅でひっそりと幼少期を過ごさせることにした。
白銀髪の子が話せるようになると悪魔の子だと後宮に広まり始め、私がその噂を耳にして後宮に顔を出した時には、王妃が手を打った後だった。そして私が知らぬ内に、幼子は後宮から他の場所に移されていて生死の情報など一切入って来なくなったのだ。
そう、たった今、王太子の口から聞かされるまでは…。
******
「陛下・・・・やはり反対なのでしょうか」
「構わぬ。今回の件、太子に一任する。宰相と共に当たってくれ」
王太子に呼ばれた事で、過去へと飛んでいた意識が戻る。私に、視線を向ける王太子の双眸には私に対しての疑心感が滲んでいた。王妃である母が寵愛を得られなかった原因の娘の追い出しを反対すれば、紅銘の息子が危険にあってしまうだろう。
寵妃が残した宝を守る為ならば、私は悪魔の子であろうと構わなかった。王太子の視線を真正面から受け止めながら答えると、視線を自分の隣に立っている宰相へと向ける。
宰相は「御意」と答え頭を垂れた。
王太子の訴えるような視線が突き刺さるが、蒼鳴国が告げた期限は明日に迫っている。視線から避けるように太子の退室を促すと、それ以上何も言えなくなり渋々頭を下げると王太子は執務室を出て行った。
「紅雪が生きてたか…」
未だ室内には宰相が残っているのだが、私は居る事が分かっていて呟いた。
「申し訳ありません」
「よい。どうせ王妃に口止めされていたのだろ」
そう問い掛ければ、宰相は無言になる。それこそが答えだった。
「……紅銘」
宰相も下がらせた後、私は一人、もう触れる事も出来ない愛しい紅銘を懐かしむように窓から夜空を見上げた。
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