6 / 11
一章
04,紫峰国
しおりを挟む甲板に呼ばれた仲間たちは、紫攸が不機嫌な事に直ぐに気付いた。
「陛下、何でそんなに機嫌が悪いんですか?」
敢えて聞く事を避けようとしていた者たちにとって紅淡は勇者だと思う。
だが、当の本人はただ思っている事を聞いているだけの呑気な男で、怖いもの知らずなだけ。
「紫峰国にいる間諜から情報が届いた」
「私を呼んだ理由と関係があるのですか?」
「……ああ」
紫攸の方も敢えて紅淡の質問に答えず、呼んだ理由を話し出した。
いつもなら隠そうとする紫攸が自分も呼んだ理由に不安そうな表情を浮かべた紅雪が問い掛ける。
その言葉に頷くと、紅雪の女官たちの空気が動揺に変わった。
「紫峰国では密かに白銀髪の女人を捜す者たちが居るらしい。捜している者の正体も捜す理由も分からねえらしいが…紅雪が狙われているのは間違いねえだろな…白銀髪なんて紅雪しか見たことねえし…」
「陛下…なら自国に帰った方が良いのでは?」
紫攸の発言で緊迫した空気を醸し出す仲間たち。
妹を心配した紅淡が進言すると、妻の詩音や女官の旬華と八歌も頷いた。
「紅雪はどうしたい?」
「私は……行きたいです」
狙われているのは紅雪だ。
答えを求めると少し悩んだらしい紅雪は行く事を決意した。
当の本人が行くと決めたのだ。
誰も反対は出来なくなるものの、心配する視線を向けている一同。
「私は自分の秘密を知りたいのです…ご協力お願いします」
「紅雪…。…陛下と一緒に必ず守るから…」
「兄様っ…」
そう言って頭を下げた紅雪の両肩を掴んだ紅淡が優しい笑みを浮かべる。
視線を一同に向けると頑固な紅雪に負けたらしいみんなの顔に笑みが浮かんでいた。
***
蒼鳴国を発って二日の夜間、海は静観を続けて何事も無く紫峰国に到着する。
紫攸たちの大船が紫峰国の海岸に着くと、船軍員が太縄を持って岸に降りて船が動かないように先端と後端を太縄で岸に括り付けた。
「……紅雪、行くぞ」
「これ、大丈夫なんでしょか?」
大船と岸の間に階段が取り付けられると、紫攸がフードを被った紅雪に手を伸ばす。
少し不安そうに言いながら紫攸の手を取って紅雪が一緒に階段を下りて岸に降り立った。
紫攸と紅雪の後ろから、女官の旬華と八歌、紅雪付き護衛官の紅淡と妻の詩音、護衛兵の数人が続く。
文官の寡雲だけは後から合流するらしく、甲板に残っていた。
「今だけの話だからな…」
紫峰国に行くと決めた紅雪だったがやはり不安なのだろう、少し冷たくなった手を紫攸はぎゅっと握り締めた。
0
お気に入りに追加
176
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる