~ 神話 ~ 皇帝陛下は白銀髪にキスをする

ERICA

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一章

04,紫峰国

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甲板に呼ばれた仲間たちは、紫攸が不機嫌な事に直ぐに気付いた。


「陛下、何でそんなに機嫌が悪いんですか?」


敢えて聞く事を避けようとしていた者たちにとって紅淡は勇者だと思う。
だが、当の本人はただ思っている事を聞いているだけの呑気な男で、怖いもの知らずなだけ。


「紫峰国にいる間諜から情報が届いた」
「私を呼んだ理由と関係があるのですか?」
「……ああ」


紫攸の方も敢えて紅淡の質問に答えず、呼んだ理由を話し出した。
いつもなら隠そうとする紫攸が自分も呼んだ理由に不安そうな表情を浮かべた紅雪が問い掛ける。
その言葉に頷くと、紅雪の女官たちの空気が動揺に変わった。


「紫峰国では密かに白銀髪の女人を捜す者たちが居るらしい。捜している者の正体も捜す理由も分からねえらしいが…紅雪が狙われているのは間違いねえだろな…白銀髪なんて紅雪しか見たことねえし…」
「陛下…なら自国に帰った方が良いのでは?」


紫攸の発言で緊迫した空気を醸し出す仲間たち。
妹を心配した紅淡が進言すると、妻の詩音や女官の旬華と八歌も頷いた。


「紅雪はどうしたい?」
「私は……行きたいです」


狙われているのは紅雪だ。
答えを求めると少し悩んだらしい紅雪は行く事を決意した。
当の本人が行くと決めたのだ。
誰も反対は出来なくなるものの、心配する視線を向けている一同。


「私は自分の秘密を知りたいのです…ご協力お願いします」
「紅雪…。…陛下と一緒に必ず守るから…」
「兄様っ…」


そう言って頭を下げた紅雪の両肩を掴んだ紅淡が優しい笑みを浮かべる。
視線を一同に向けると頑固な紅雪に負けたらしいみんなの顔に笑みが浮かんでいた。



***



蒼鳴国を発って二日の夜間、海は静観を続けて何事も無く紫峰国に到着する。
紫攸たちの大船が紫峰国の海岸に着くと、船軍員が太縄を持って岸に降りて船が動かないように先端と後端を太縄で岸に括り付けた。


「……紅雪、行くぞ」
「これ、大丈夫なんでしょか?」


大船と岸の間に階段が取り付けられると、紫攸がフードを被った紅雪に手を伸ばす。
少し不安そうに言いながら紫攸の手を取って紅雪が一緒に階段を下りて岸に降り立った。
紫攸と紅雪の後ろから、女官の旬華しゅんか八歌はっか、紅雪付き護衛官の紅淡と妻の詩音、護衛兵の数人が続く。
文官の寡雲だけは後から合流するらしく、甲板に残っていた。


「今だけの話だからな…」


紫峰国に行くと決めた紅雪だったがやはり不安なのだろう、少し冷たくなった手を紫攸はぎゅっと握り締めた。
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