1 / 34
序章
落ちました
しおりを挟む大規模な玉突き事故が発生した。その後も、速度を落とす事が出来なかった車は前方の車に突っ込み続ける。そして修学旅行の途中、バス移動をしていた高校生が乗った大型バスが急ブレーキを掛けた―――。
キキキキィィ!!!!バンッ!!!ガンッ!!ガッシャンッ!!!
しかし、急ブレーキは間に合わず、前方の車を何台も引いてから、高校生が乗っていた大型バスは崖下に転落してしまったのだった。
*****
「……っ………は?」
投げ出されたのか、地面に伏している身体を起こした。夜で、あまり周りが見えなかったけど目の前は森林だったと思う。だけど、飛鳥の周りには知り合いが誰一人倒れてない。それに落ちた筈の大型バスまでも存在を消されたように無かった。
「ウウウッ…グルルルッ……」
突然、暗闇から聞こえて来た獣の唸り声。狼が出たのかと思うけれど、狼情報等無い。真っ暗だから分からないけれど、確実に野生動物なのだろう。少しずつ近付いて来る野生動物。
(熊とかだったら速攻死ぬじゃん。ああ…交通事故で死ななかったのに野生動物に殺されるとか…骨だけになったらお父さんもお母さんも気付いてくれるのかな?)
思考回路が可笑しくなってる事なんて分かってる。だけど現れた野性動物を見た瞬間、背筋が凍るように寒くなった。
(え?え?え?え?…何あれ!!?)
人のように二本足で立っているにも関わらず、顔はオオカミそっくりで仮面でも着けているのか思ってしまう。身体中に仮面そっくりの体毛に顔に反して二倍程の大きい体格。動物が好きな飛鳥でも流石に近付きたいと思わない程、目の前の人狼みたいな人は涎よだれを垂らしている。
充血した目が忙しなく周りを見ていて、歩き方も覚束おぼつか無い。言っちゃ悪いけど、毒キノコを食べて毒に侵されている感じにしか見えない。気付かれていない今のうちに逃げてしまおうと思っていたら、足を挫いてたみたいで動けなかった。
「きゃあああああ!!!」
そして、無理矢理動こうとした飛鳥に気付いてしまった人狼。分かってましたが、襲って来ました。つい叫んでしまったけれども、彼女の周りには誰もいないのが分かってたので飛鳥は食べられるのだと思ってしまった。
(お父さん、お母さん、和樹…私のこと忘れないでね…っ)
飛鳥の安否を心配しているだろう両親と弟を頭に浮かべながら食べられるのを覚悟して目を瞑った。
暫くしても噛まれた感触も衝撃も痛みも無くて、人狼が諦めてくれたのだろうと勝手解釈して目を開ける。目の前には、人狼を檻おりに入れている獣耳や尻尾を垂らしている者たち。フサフサの金色の髪で頭上には丸い獣耳と先端がフサフサの尻尾の男性がリーダーなのかもしれない。檻に入った人狼と同色の髪型や獣耳や尻尾、襟付きの騎士服っぽい服を着ている団員に指示を出していた。
「……大丈夫か?」
「……ライオンが服着て喋って…る……?」
同じ騎士服を着ていたけれど、身体から溢れ出る高級感。高貴な存在なのだと良く分からない事を考えていたら、振り返った男性が顔を覗き込んで来た。それが、どんな動物か気付いた飛鳥。百獣の王である獣耳の男性や人狼なんて日本には居ない存在か妄想の存在。日本語を喋る獣人の存在なんて飛鳥の頭をショートさせるには十分だった。
「おいっ!!」
色々な出来事が重なった心労なのだろうか、相手の驚いた表情と声が聞こえた気がしたけれど、飛鳥はそのまま気絶していた。
*****
次に目を覚ましたとき、飛鳥は小屋っぽい内観の何処かの部屋にいた。
「あっれー…何かあった気がしたんだけどな…」
交通事故からの落下、森林そして……思い出そうとしたらズキズキと頭が痛んだ。きっと思い出したくもない事だったのだろうと思い出すのを諦める。
(で…ここはどこ?)
木造の建物。部屋は今寝ているベットと机と本棚ぐらいしか置かれていない。でも、落下した森林で倒れたままだったら野性動物の餌になっていただろう事だけは分かっていたので誰かに助けて貰えた事に素直に感謝する。
「起きたか…」
シャワーを浴びたらしく、上半身裸の男がタオルで身体を拭きながら現れた。ムキムキではないけど腹筋と胸筋にしっかりと、腕筋には程好く筋肉がついてて、女子高の飛鳥には見慣れないモノ。まだ濡れている金髪と琥珀色の目、鼻筋が整ってるので、余計イケメン感を醸し出している。
(私は何でここで寝ているのだろうか…)
「……体調は、大丈夫そうだな…」
イケメンが助けてくれたのだろうとは察しが付くが、美少女とも呼べない(自分で言ってて泣きそう…)飛鳥を助けた事で彼に何かの利益が生まれるなんてことは無い。不安そうな表情を浮かべてしまったのか、タオル片手に近付いてきたイケメンが不意に飛鳥の額に触れた。一瞬心配そうな顔を向けられた気がしたけど、きっと気のせいだと思う。
額に触れていた手が離れると、ベット脇の卓上に置かれた小瓶を掴んだイケメン。何をするのかと思って見てたら飲みました。シャワー浴びると喉が渇くよね…良くわかります。
「……ぇ…っんん…」
何となく彼の行動に相槌をしていたら、イケメンのドアップが目の前に現れた。と思った途端、飛鳥は何故かキスをされてしまっていた。
0
お気に入りに追加
1,102
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
異世界の美醜と私の認識について
佐藤 ちな
恋愛
ある日気づくと、美玲は異世界に落ちた。
そこまでならラノベなら良くある話だが、更にその世界は女性が少ない上に、美醜感覚が美玲とは激しく異なるという不思議な世界だった。
そんな世界で稀人として特別扱いされる醜女(この世界では超美人)の美玲と、咎人として忌み嫌われる醜男(美玲がいた世界では超美青年)のルークが出会う。
不遇の扱いを受けるルークを、幸せにしてあげたい!そして出来ることなら、私も幸せに!
美醜逆転・一妻多夫の異世界で、美玲の迷走が始まる。
* 話の展開に伴い、あらすじを変更させて頂きました。
【本編完結】ヒロインですが落としたいのは悪役令嬢(アナタ)です!
美兎
恋愛
どちらかと言えば陰キャな大学生、倉井美和はトラックに轢かれそうになった黒猫を助けた事から世界は一変した。
「我の守護する国に転生せぬか?」
黒猫は喋るし、闇の精霊王の加護とか言われてもよく分からないけど、転生したこの世界は私がよく知るゲームの世界では!?
攻略対象が沢山いるその中で私が恋に落ちた相手は…?
無事3/28に本編完結致しました!
今後は小話を書いていく予定なので、それが終わり次第完全完結とさせて頂きます。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる