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お嬢さまの身代わり⑤
しおりを挟むそして気付いたら、ここアシュテイル伯爵家に引き取られていた。義母から聞いた話だけど、門の前で毛布に包まれて倒れていたそう。普通だったら、そのまま捨て置かれててもおかしくなかった。と言われた時には、自分の容姿のおかげだと直ぐに気付いたけど。
何時間立ちっぱなしでいたんだろう。手首にある腕時計で時間を確認する。……2時間。私はどんだけ空想に耽っていたんだ。もう洗濯物は干されていて、メイドたちはもう居なかった。
そろそろ、お嬢さまが目を覚ます頃。いつ呼ばれても良いようにお部屋の前で待機してなきゃ。お嬢さまの予定は頭にインプットされていて、その通りに動けるように教育もされた。
「お嬢さま、おはようございます」
「サユリ、おはよう。昨夜、お父様から話は伺ったかしら?」
「はい」
「なら、貴女の為に服を用意しなくちゃね」
私はリリアナさまの人形だけど、可愛がっては貰えている。お嬢さまが1度も袖を通して着れなくなったドレスは、自然と私に行き渡る様になってた。だから、義両親に可愛がれて壊れなかった心のおかげで、リリアナさまの身代わりになるのに苦はない。ただ、やっと人形として慣れた日常が壊されて新しくやり直さなきゃいけない事だけが怖いだけ。
ドレスをベットに広げ、んー、これはどうかしら?とメイドに指示を出して私にドレスをあてる。
「貴女が嫁いでしまったら誰が私の遊び相手になるのかしら。貴女ほど、私を分かってくれる人なんていないのにね。それに……この私とそっくりな顔を見れなくなるなんて淋しいわ」
そう。私は、容姿だけはリリアナさまにそっくりだった。髪色だけは違くて、お嬢さまはプラチナブロンドに緩やかな縦ロール。私は明るい茶色で、肩までのストレート。だけど、拾われた1番の理由は、きっとこの、蒼玉の目。お嬢さまとお揃いのこの目と容姿のおかげで、私は生き残れたんだと思う。
少しワガママで、自分本位なリリアナさま。そして、恋多き女性。恋のライバルを蹴散らして飽きたら捨てる。だけど、お嬢さまは自分を魅せる事に長けてて、相手に困らなかった。容姿は似ているのに私とは全然違うお嬢さまは、私の憧れでもあった。だから人形でもやっていけたんだろうなぁ。
「私もお嬢さまの花嫁姿を見れなくて残念に思います」
リリアナさまが嫁ぐのを見送る側だと思ってたから、本当に残念でならない。だけど、私が嫁ぐ事で財政破綻は回避出来るから、きっとお嬢さまは格式ある爵位家に嫁げて幸せな結婚式をする事が出来るんだな。それなら、良かったのかもしれない。
私を救い出して居場所をくれた、お嬢さまが幸せになることが私の一番の願いです。ただ一つだけ心配なことは、リリアナさまがこのまま突き進んでしまったら悪役令嬢になってしまうんじゃないかって心配です。可愛いわがままだったら良いのですが、年々我儘の度合いが上がってきたらしいと義両親から聞いてます。なので、私が結婚したら少し我儘を控えて欲しいです。
「私の結婚式には貴女も招待するわ。絶対来なさいね」
「勿論です」
だけど、きっと変わらないんだろうな。それがリリアナさまの魅力でもあるので、私はただ、お嬢さまに素敵な相手が見つかることをいつまでも祈るだけです。
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