愛づ人の忘れ形見

anly

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漆ー暗雲の兆しー

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宮女C「姫君様、こちらにおいでなさいませ」

宮女D「こちらでございますよ」

椿「あぁーうぁー」

宮「椿ももう一歳か、早いものだな」

宮女C「宮様も母になられ、お優しさがより深くなられました」

宮「フッ...母になる前のわたくしは優しくない言い振りだな」

宮女C「申し訳ございません。ですがそのようなつもりで申し上げたのではありません」

宮「苦しゅうない」

宮女D「昔の宮様はお優しいのはもちろんのことですが、どこか儚げな節がございました」

宮「母になりわたくしも強くなったのだな」

柳「宮、椿」

宮「柳様、おいでですか」

柳「あぁ、我が娘椿の顔が見たくてな」

宮「椿、お父上が来られた。こちらへ来なさい」

宮女C「なんと仲睦まじいことでしょう」

宮女D「絵になるような美しさ」


葵が急に姿を現さなくなったのは半年ほど前ー。

女御様に聞いても、知らぬ存ぜぬの一点張り。

どこへ行ったのだ...葵...。


宮「今宵はどうされますか?」

柳「少し疲れたゆえ、今宵は屋敷へ帰る」

宮「わかりました。では仕いの者に見送らせましょう」

柳「いや、良いのだ。今宵はなぜか歩いて帰りたいのだ...」

宮「...わかりました。お気をつけてお帰り遊ばせ」


今宵も疲れた...そんな日に限り月夜の光が眩しい...


柳「あおい...」


気づけば口から葵の名をこぼしていたー。

ササッ


柳「!?何者だ」

男「...!?」


男は見覚えのある物を持っていたー。


柳「その...香袋は葵...の...」

男「はっ...」

柳「そなた、一体何者なのだ」

男「いえ...わたくしは何も...」

柳「言え。その香袋は葵の物だ。なにか知っているのか?」

男「...」


鋭い眼差しが男の沈黙を終わらせるー。


男「わたくしは葵様のお父上に仕えておりました者です」

柳「葵のお父上に?」

男「はい。葵様のお父上が亡くなられ葵様は1人京へお戻りになられたのですが、葵様のご体調が優れず暇をいただいたと聞いております」

柳「葵の体調が...?なにか病気なのか?」

男「...咳がどうも止まらぬようで...」

柳「...まさか...」

男「...」

柳「葵の元へ連れてはくれぬか?」

男「なりませぬ。貴方様は四の宮様の...」

柳「関係ない」


先ほどよりも鋭い眼差しが男に突き刺さるー。


男「...わかりました。ですが葵様は今寝ておられます。静かにしてくださいませ」

柳「あぁ、恩に着る」
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